"貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算" 第3話
遊びの続きにあった帳簿
名刺を検索した夜、俺はパソコンのでしばらくけなかった。鵜久森ホールディングスは複数の企業に資し、経営再建や事業承継を支援する会社だった。レオンは代表取締役、守は業務改革を担当する取締役として紹介されている。公園での根を売っていたの写真が、経済誌のサイトに載っていた。
翌週のこどもで再会したレオンは、記事を読んだと告げる俺に「名だけ派でも、段ボールの野菜は売れないからね」と笑った。イベントは予以の盛況で、子どもたちが作った値札のにはさな列ができた。俺の提案で仕入れを回に分けたため、売れ残りはほとんどなかった。売の部は域の図へ寄付され、子どもたちは自分たちで集計表に数字をき込んだ。
片付けの、レオンが真顔になった。「涼くん、うちで働かないか。いきなり転職しろとは言わない。まずは件、から数字を見てほしい会社がある」
俺は即答しなかった。失恋の直に現れた親切なを、何も考えずに信用するほど若くはない。会社の規模、報酬、守秘義務、今の勤務先との兼業規定を確認したいと伝えた。レオンはむしろ嬉しそうに笑い、正式な業務委託契約のひな型をメールで送ると約束した。
正式な契約に署名する、守は報酬の額だけでなく、調査でった報をへ漏らさないことを何度も確認した。
広告
公園では気さくに笑っていたが、仕事の約束には厳しい。その切り替えに俺はかえってした。相を信用することと、約束を曖昧にすることは違うのだ。
数、俺は勤務先の規定に抵触しない範囲で、休だけの調査補助を引き受けた。対象は建設会社の資材配送と発注管理。物流の現にくいた俺なら、数字の癖が分かるだろうという話だった。会社名は守秘義務の続きが終わってからかすと言われた。
受け取った匿名の帳票には、気になる点がいくつもあった。同じに同じ現へ運んだ資材が、別々の運送会社からに請求されている。納品伝票の刻と現の入退記録もわない。単純な入力ミスの能性はあったが、かにわたり似た致が繰り返されていた。
俺はまず、怪しい数字に赤い丸をつけるのをやめた。決めつけてしまえば、見えるはずの別の原因を見落とす。発注、納品、請求、支払予定を列に並べ、取引先ごとに比較した。すると、実際の配送が増えていないのに、あるから注費だけがねがっていた。
俺が使っていた物流会社の管理表には、遅延の原因をで記す欄があった。初めは面倒だとっていたが、同じで渋滞が起きる曜や、搬入が混む帯がそこから見えてきた。
広告
今回の帳票には、そうした現の事がほとんどかれていない。誰かが現を見ていないのか、見たことを記録する所がないのか。つでは対策がまるで違う。
俺は匿名の資料にかれた配送番号を、運送会社ごとの連番と照した。数字の部に抜けがあり、請求を発した会社が違うのに、備考欄の文章だけ同じ案件もある。コピーして作った類かもしれないが、それだけでは正とは言えない。疑わしい点を並べたうえで、確認できた事実には青、未確認のものには黄の印をつけた。
「この会社、現のは相当苦労してますよ」と俺は守に話で伝えた。「発注をまとめればくなるのに、毎回急ぎ便にしている。誰かが悪いというより、判断する仕組みが壊れています」
守はすぐに答えず、しを置いた。「涼くん、その急ぎ便を承認しているの名、見た?」
「承認者の欄は黒塗りでした。そこが問題なんですか」
「うん。来週、原本を見てもらう。先につだけ伝えておくね。今回の調査は、社からの正式な依頼なんだ」
数、レオンの事務所で原本をいた俺は、会社名を見て指を止めた。表には『島建設株式会社 発注管理改善計画』と記されていた。偶然、俺と同じ名字の会社だった。だが本当に驚いたのは、その次のページに載っていた、責任者の名だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 6 -
完結第15話
三十八年目の帰る場所
六十二歳の美津子は、三十八年間、夫と娘を支え、義母の介護も一人で担ってきた。ところが海辺の実家へ二泊すると告げた朝、夫は「戻ってこなくていいぞ」と笑い、娘まで同調する。 その言葉をきっかけに、美津子は本当に帰らないことを決意する。しかし夫は「この家は俺のものだ」と激怒し、離婚まで口にした。 そんな夫の前に、美津子が差し出したのは、亡き父が残した土地の登記と三十八冊の家計簿だった。 誰にも認められなかった三十八年間の人生を取り戻す、一人の女性の静かな決断と再出発の物語。夫婦|ATM扱い|絶縁|金銭問題|熟年離婚2.0万字5 1 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 65 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 34 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 232 -
完結第20話
生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由
72歳の佐野ふみ子は、亡き夫が40年かけて育てた生け垣に囲まれた家で、一人静かに暮らしていた。ところが隣人の美津江は、落ち葉や枝の張り出しに執拗に文句をつけ、ついには「違法な生け垣だ」と市役所へ通報する。 夫の思い出を守りたい気持ちを抑え、ふみ子は生け垣をすべて伐採することを決意。すると、長年隠れていた地中から古い境界杭が発見される。 そして伐採から4日後、あれほど生け垣を嫌っていた隣人が、真っ青な顔で玄関に現れた。 「お願い! 生け垣を元に戻して!」 突然の懇願の裏に、何があったのか――。因果応報|人生逆転|怒り|裡の顔|修羅場2.0万字5 296 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 469