"貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算" 第4話
次期社という空席
『営業統括 島健』。その名を見ても、最初は何のも湧かなかった。本に同じ名字のはいるし、健という名も珍しくない。ただ、承認欄に押された印鑑の付が、別の帳票の記録と週もずれているのが気になった。
島建設は創業の企業で、公共施設の改修や規模の建築事をがけていた。現社の島正は代半で、継者問題を抱えている。息子の健は歳、社内では『次期社』と呼ばれていた。だが正式な指名も取締役会の決議も、まだ度もわれていなかった。
「名が同じだから、俺の親戚だとわれたりしませんか」と冗談を言うと、守は苦笑した。「むしろ混同されないようにしよう。涼くんの仕事は、誰が継者にふさわしいかを決めることじゃない。現が困っている原因をらかにすることだよ」
その言葉でし肩の力が抜けた。俺は帳票を机に広げ、発注担当者の聞き取り記録を読み直した。現からは週単位の資材計画ががっているのに、営業統括で承認が止まり、納期直になって額な特急配送を頼むことがいらしい。遅れを取り戻すために現が残業し、その費用まで事原価に乗っていた。
建設会社の仕事は、物流と似ている部分もあれば全く違う部分もあった。
広告
材料が届くだけでは事はまず、資格を持つ員や全確認の順番まで揃わなければならない。俺は専の判断を勝にしないと決め、分からない項目に印をつけて設計担当へ質問した。
正社との最初の面談は、拍子抜けするほど静かなものだった。縁の鏡をかけた社は、俺の報告を最まで読んでから「現の誰かを犯にしたくない」と言った。会社を息子に継がせたい気持ちはあるが、それ以に社員の暮らしを守りたいという。俺はその言葉を聞いて、調査を引き受けた責任のさを初めて実した。
「現はもう限界です。数字だけえても、納期の遅れは止まりません。発注権限を分け、誰がいつ判断したか記録を残す必があります」
「それを息子に説したら、納得するとうかね」
「分かりません。ただ、説をしないまま仕組みだけ変えれば、反発がます。本の言い分も聞くべきです」
正社はさく頷いた。俺は彼が息子を庇っているのか、最の会を与えようとしているのか判断できなかった。どちらにせよ、俺が先回りして断罪するではない。まずは会社が自分で判断できる材料を揃えるしかなかった。
面談の、俺は社の廊での清掃員とすれ違った。彼女は俺の資料を抱えた姿を見て、「今度こそ現のの話を聞いてくださいね」
広告
と言った。詳しい事を尋ねると、息子さんがこの会社の職で、急な予定変更のたびに帰宅が夜になるという。社では経営の数字に見えた問題が、誰かの卓のを奪っていた。
正社の机には、創業当の事現の写真が飾られていた。写っている若い社はだらけの作業着で、社員たちと同じ弁当をべている。息子に会社を継がせたい気持ちは、単なる見栄ではないのだろう。だからこそ、そのいだけで次の社を決めてはいけない。俺は帰りので、写真のの笑顔を何度もいした。
帰り際、レオンが俺を呼び止めた。正社は以から継者を探しており、部の経営材を受け入れる能性も検討しているという。俺は首を振った。昨まで公園で遊んでいたようなに、いきなり建設会社の経営などできるはずがない。
「誰もから社になれとは言ってないよ」とレオンは笑った。「ただ、涼くんが作った表を見て、正さんは久しぶりに現の顔が浮かんだって言ってた」
その夜、調査用の追加資料が届いた。急ぎ便の承認履歴に、俺が見落としていたさな欄がある。『代理承認』とかれたその欄には、営業統括ではなく、すでに退職した社員の番号が繰り返し使われていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 5 -
完結第15話
三十八年目の帰る場所
六十二歳の美津子は、三十八年間、夫と娘を支え、義母の介護も一人で担ってきた。ところが海辺の実家へ二泊すると告げた朝、夫は「戻ってこなくていいぞ」と笑い、娘まで同調する。 その言葉をきっかけに、美津子は本当に帰らないことを決意する。しかし夫は「この家は俺のものだ」と激怒し、離婚まで口にした。 そんな夫の前に、美津子が差し出したのは、亡き父が残した土地の登記と三十八冊の家計簿だった。 誰にも認められなかった三十八年間の人生を取り戻す、一人の女性の静かな決断と再出発の物語。夫婦|ATM扱い|絶縁|金銭問題|熟年離婚2.0万字5 1 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 61 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 20 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 222 -
完結第20話
生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由
72歳の佐野ふみ子は、亡き夫が40年かけて育てた生け垣に囲まれた家で、一人静かに暮らしていた。ところが隣人の美津江は、落ち葉や枝の張り出しに執拗に文句をつけ、ついには「違法な生け垣だ」と市役所へ通報する。 夫の思い出を守りたい気持ちを抑え、ふみ子は生け垣をすべて伐採することを決意。すると、長年隠れていた地中から古い境界杭が発見される。 そして伐採から4日後、あれほど生け垣を嫌っていた隣人が、真っ青な顔で玄関に現れた。 「お願い! 生け垣を元に戻して!」 突然の懇願の裏に、何があったのか――。因果応報|人生逆転|怒り|裡の顔|修羅場2.0万字5 285 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 458