"貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算" 第10話
引き継がないという選択
正社は、健を継者にしたいという気持ちを隠さなかった。さい頃から事現へ連れていき、いつか自分の仕事を継いでほしいと願ってきたという。だが息子が会社に入ってから、周囲は社の息子に逆らえなくなった。父親である自分も、問題が起きるたびに『次はきっと変わる』と考えてきたらしい。
「息子に継がせないと決めるのは、会社を放すよりつらい」と正社は言った。「だが社員には、私のの事に付きう義務はない」
俺は返事を急がなかった。父親の悔を慰めるために、誰かのを代わりに引き受けることはできない。俺自、経営者になりたいと考えて転職したわけではなかった。現を改善する仕事に、ようやく応えをじ始めたところだった。
レオンは継者の話をめるに、会社の株主構成と資繰りを説した。正社が半の株式を持ち、数株主にはの取引先もいる。経営者を交代するには、取締役会や株主との調が必だ。社の気まぐれで『会社をあげる』などと言える状態ではない。
「もし部の材を育てるなら、俺がほど代表を引き受ける。そのに経営体制をえて、次の候補を正式に選ぶ」とレオンは言った。「涼くんには現改革を続けながら、財務と営業も学んでほしい。
広告
断っても仕事は続けられる」
俺は晩考え、条件付きで引き受けた。現の声を経営判断へ届ける仕組みを残すこと、無理な利益目標で全や品質を犠牲にしないこと、俺自が適任なら慮なくしてもらうこと。レオンはつずつ確認し、正式な育成計画に落とし込んだ。守は「まず社の子の座り方から」とふざけ、俺に笑われた。
俺はまず、自分が社に向いていない理由をにきした。営業経験がりない。建設業の法令をすべて理解しているわけではない。社員ので話すと緊張する。守に見せると彼はつずつ「学べる」「専に聞ける」「練習できる」とき込み、最に『全部でやろうとする』という項目をした。
「ここだけは、社になっても直らないと困るね」と守は言った。俺はわず笑ったが、図だった。美と付きっていた頃も、相の望む活をで用しようとしていた。助けを求めることをさだとっていたのかもしれない。今は、相談できる相がいることを切にしたかった。
研修が始まると、らないことばかりだった。資繰り表の読み方、との面談、労務問題、受注する事の選び方。現の改善だけでは会社は続かない。採算の悪い案件を断ることが、結果として社員を守るもあるとった。
広告
正社は息子に会議の予定を直接伝えたこともあったという。返事は来ても、当になって姿を見せないことが続いた。俺は事をらない以、欠席の理由を決めつけたくなかった。それでもな決定をの都で止めない仕組みは必で、議事録と代理席の規定をえた。
方、健は継者計画が変わり始めたことに気づいていなかった。な会議を欠席し、報告の提も遅れがちだったからだ。父親が注すると、「どうせ俺の会社になる」と笑って取りわないという。俺はその話を聞くたび、のを当然のように自分のものだとう態度に、かつての美をねてしまった。
その頃、美との積の清算はすでに終わっていた。俺が送った細に対して彼女はい返事を寄越し、互いの負担分を振り分けた。連絡はそれきりだった。々、彼女は今頃どんな暮らしをしているのだろうとったが、調べようとはしなかった。
俺が見ているのは、もう別の未来だった。公園で始まったさな遊びは、いつのにか社員百以の暮らしに関わる仕事へと変わっている。そこへ監査担当から、健の経費精算に関する最終報告が届いた。今度は曖昧な数字ではなく、本の説が必な具体な記録が揃っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 6 -
完結第15話
三十八年目の帰る場所
六十二歳の美津子は、三十八年間、夫と娘を支え、義母の介護も一人で担ってきた。ところが海辺の実家へ二泊すると告げた朝、夫は「戻ってこなくていいぞ」と笑い、娘まで同調する。 その言葉をきっかけに、美津子は本当に帰らないことを決意する。しかし夫は「この家は俺のものだ」と激怒し、離婚まで口にした。 そんな夫の前に、美津子が差し出したのは、亡き父が残した土地の登記と三十八冊の家計簿だった。 誰にも認められなかった三十八年間の人生を取り戻す、一人の女性の静かな決断と再出発の物語。夫婦|ATM扱い|絶縁|金銭問題|熟年離婚2.0万字5 1 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 65 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 34 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 232 -
完結第20話
生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由
72歳の佐野ふみ子は、亡き夫が40年かけて育てた生け垣に囲まれた家で、一人静かに暮らしていた。ところが隣人の美津江は、落ち葉や枝の張り出しに執拗に文句をつけ、ついには「違法な生け垣だ」と市役所へ通報する。 夫の思い出を守りたい気持ちを抑え、ふみ子は生け垣をすべて伐採することを決意。すると、長年隠れていた地中から古い境界杭が発見される。 そして伐採から4日後、あれほど生け垣を嫌っていた隣人が、真っ青な顔で玄関に現れた。 「お願い! 生け垣を元に戻して!」 突然の懇願の裏に、何があったのか――。因果応報|人生逆転|怒り|裡の顔|修羅場2.0万字5 296 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 469