"貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算" 第12話
誰のための数字か
継者候補の面談で、俺は「利益率をでどれだけげられるか」と聞かれた。数字の目標を答えるに、今の受注構成と現の員配置を確認したいと伝えた。面接官のは物りなさそうな顔をしたが、俺には分からないことを分かったふりするほうが怖かった。
レオンのもとで学び始めて半、会社の課題はしずつ見えてきた。利益率のい規模事を断れば、期な数字は改善する。だが域の修繕仕事を全部放せば、の取引先との信頼がれ、若い職が経験を積む会も減る。数字には、帳簿に載らないがある。
俺は現と営業の担当者を集め、受注判断の基準を作った。事ごとの利益だけでなく、必な技術、社員の負担、将来の取引につながる能性も記録する。最初は『面倒な類が増えた』と評だった。そこで項目を減らし、現で本当に使うものだけ残した。
そんな折、古くからの取引先が急な事を頼んできた。予算は厳しく、納期もい。健なら迷わず受けたかもしれないが、俺は野寺と設計担当に相談し、条件を変えなければ全な施が難しいと判断した。先方に正直に伝えると、最初は満を示された。
「社ならもっとくできると言っていますよ」と担当者は言った。
「その条件で引き受ける会社もあるといます。
広告
ただ、私たちが責任を持てる程はここまでです。代わりに、利用を止める期をくする方法を提案させてください」
結果として、期は週延びたが契約はまとまった。担当者は「無理だと言うだけじゃなく、別のを考えてくれた」と話した。営業担当の若は帰りので、「断ったら終わりだとっていました」と笑った。俺も同じことをっていたので、その言葉が胸に残った。
事の交渉を終えた、若い営業担当が自分のメモを見せてくれた。相が本当に困っていたのは、期そのものより、施設を閉める数だったという。そこを先に聞けていれば、最初から別の提案ができたはずだ。俺は彼と緒に営業の聞き取り項目を見直し、『いつまでに』だけでなく『何を守りたいか』を尋ねる欄を加えた。
その変更を会議で説すると、ベテラン営業から「今さらそんなことを教えられるとはな」と笑われた。嫌ではなかった。く働くほど、分かっているつもりで聞き忘れることがある。俺も同じだった。会社の数字を読むに、相の言葉を聞く習慣を、部署を越えて残したかった。
その夜、公園のベンチで守と缶コーヒーをんだ。すももは俺の膝で丸くなり、レオンはくで子どもたちとキャッチボールをしている。守が「涼くん、最ちょっと社っぽくなった」
広告
と言うので、俺は首を振った。まだ分からないことだらけで、毎誰かに教わっている。
「それがいいんだよ」と守は答えた。「兄ちゃんが見込んだのは、偉そうにできるじゃない。らないことをらないと言えるだから」
俺は美に『将来性がない』と言われたのことをいした。あのの俺は、料を増やせば彼女が戻ってくるかもしれないと、瞬だけ考えた。今は違う。自分が何を切にして働くのか、それを自分の言葉で説できるようになりたかった。
レオンは俺の面談結果を聞いても、格か格かを教えてくれなかった。「評価はのたちと同じ続きで決める」と言う。公園で親しくなったからといって、特別扱いされるわけではない。その公平さがありがたかった。選ばれるなら、仕事を見たたちに納得してもらいたい。
翌、会社の受注審査でつの型案件が持ちがった。売だけ見れば魅力だったが、契約条件には自然な箇所があった。相の窓として名が挙がっていたのは、以から健と親しくしていた部の営業会社だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 6 -
完結第15話
三十八年目の帰る場所
六十二歳の美津子は、三十八年間、夫と娘を支え、義母の介護も一人で担ってきた。ところが海辺の実家へ二泊すると告げた朝、夫は「戻ってこなくていいぞ」と笑い、娘まで同調する。 その言葉をきっかけに、美津子は本当に帰らないことを決意する。しかし夫は「この家は俺のものだ」と激怒し、離婚まで口にした。 そんな夫の前に、美津子が差し出したのは、亡き父が残した土地の登記と三十八冊の家計簿だった。 誰にも認められなかった三十八年間の人生を取り戻す、一人の女性の静かな決断と再出発の物語。夫婦|ATM扱い|絶縁|金銭問題|熟年離婚2.0万字5 1 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 65 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 34 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 232 -
完結第20話
生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由
72歳の佐野ふみ子は、亡き夫が40年かけて育てた生け垣に囲まれた家で、一人静かに暮らしていた。ところが隣人の美津江は、落ち葉や枝の張り出しに執拗に文句をつけ、ついには「違法な生け垣だ」と市役所へ通報する。 夫の思い出を守りたい気持ちを抑え、ふみ子は生け垣をすべて伐採することを決意。すると、長年隠れていた地中から古い境界杭が発見される。 そして伐採から4日後、あれほど生け垣を嫌っていた隣人が、真っ青な顔で玄関に現れた。 「お願い! 生け垣を元に戻して!」 突然の懇願の裏に、何があったのか――。因果応報|人生逆転|怒り|裡の顔|修羅場2.0万字5 296 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 469