"貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算" 第13話
契約のさな
型案件の提案には、受注額をきく見せる数字が並んでいた。ところが契約の末尾に、資材価格が変したの負担を島建設が方に引き受ける条項があった。事が引けば、利益が消える能性もある。俺は法務担当に確認し、取締役会へリスクを報告した。
健はその案件をく推していた。「これを取れば会社の売がねがる。慎すぎる奴には経営はできない」と言う。俺は彼の見をから否定しなかった。受注の魅力は認めたうえで、価格変の負担を分ける交渉ができるか、相に確かめるべきだと提案した。
交渉の席で、相の営業担当は骨に嫌になった。「健さんとは話がついているとっていましたが」と言い、俺の資料を閉じた。俺は事に健がどんな約束をしたのからなかった。だからこそ、約束を含めて確認しなければならない。法務担当と相談し、正式な契約条件が決まるまで発注をめない方針にした。
数、相の会社から条件修正の案が届いた。価格変の負担は部緩されたものの、まだリスクがきい。取締役会は最終に受注を見送った。売目標に届かない能性がたが、現の員を無理に増やさずに済むという判断だった。
会議、健が廊で俺を呼び止めた。
広告
「おはいつも綺麗事ばかりだ。きな仕事を取らなきゃ、会社なんて伸びないだろ」
「仕事を取るのは事です。でも、取ったに誰が責任を負うかまで考えたいんです」
「父さんに気に入られたからって、調子に乗るなよ」
健はそれだけ言ってった。俺は言い返さなかったが、胸の奥にさなりが残った。父親に気に入られることが目なら、現でだらけになる必はなかった。何をしても権力争いに見える状況が、もどかしかった。
法務担当のは、契約のさなに気づいた理由を聞かれ、「の現で同じような条件に苦労したから」と答えた。彼女の経験がなければ、俺は売のきさに目を奪われていたかもしれない。俺は会議の議事録に彼女の指摘を残し、次からは型案件を必ず複数部署で確認する仕組みにした。
その過程で、健が取引先に気な数字を約束していたことも分かった。ただし、面に残っていない部分は本の説を待つ必がある。俺は『健が悪いから断る』という説を避け、契約条件そのものを議論した。の好き嫌いで決めれば、次に同じ失敗を繰り返すからだ。
週、受注を見送った案件の元請会社から連絡があった。別の協力会社との契約交渉でも同じ条項が問題になり、条件を見直すことになったという。
広告
島建設には改めて参加の打診があった。俺たちは無理のない程と価格を提示し、今度は双方が納得できる契約を結ぶことができた。
再交渉した契約では、資材価格の変に応じて双方が協議する条項を設けた。法務担当は「完璧な契約はないけれど、困ったに話しえる形にはできる」と言った。俺はその言葉をメモした。経営とは、未来をすべて当てることではなく、予がれたに壊れない仕組みを作ることなのだろう。
正社は「急がない判断にも、勇気がるんだな」と言った。俺は自分の柄にしたくなかった。法務担当が条項を見つけ、現が必な数を示し、営業が交渉を続けたから実現したことだ。誰かの才能ではなく、互いに違いを指摘できる会社になりつつあった。
その夜、レオンから継者選考の結果について連絡があった。最終候補者はに絞られ、俺の名も残っているという。まだ決定ではない。だが、正社は俺につだけ尋ねた。「もし選ばれなかったとしても、ここで働き続けてくれるかね」
「はい」と俺は答えた。しも迷わなかった。その返事を聞いた正社は、初めてからしたように笑った。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 6 -
完結第15話
三十八年目の帰る場所
六十二歳の美津子は、三十八年間、夫と娘を支え、義母の介護も一人で担ってきた。ところが海辺の実家へ二泊すると告げた朝、夫は「戻ってこなくていいぞ」と笑い、娘まで同調する。 その言葉をきっかけに、美津子は本当に帰らないことを決意する。しかし夫は「この家は俺のものだ」と激怒し、離婚まで口にした。 そんな夫の前に、美津子が差し出したのは、亡き父が残した土地の登記と三十八冊の家計簿だった。 誰にも認められなかった三十八年間の人生を取り戻す、一人の女性の静かな決断と再出発の物語。夫婦|ATM扱い|絶縁|金銭問題|熟年離婚2.0万字5 1 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 65 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 34 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 232 -
完結第20話
生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由
72歳の佐野ふみ子は、亡き夫が40年かけて育てた生け垣に囲まれた家で、一人静かに暮らしていた。ところが隣人の美津江は、落ち葉や枝の張り出しに執拗に文句をつけ、ついには「違法な生け垣だ」と市役所へ通報する。 夫の思い出を守りたい気持ちを抑え、ふみ子は生け垣をすべて伐採することを決意。すると、長年隠れていた地中から古い境界杭が発見される。 そして伐採から4日後、あれほど生け垣を嫌っていた隣人が、真っ青な顔で玄関に現れた。 「お願い! 生け垣を元に戻して!」 突然の懇願の裏に、何があったのか――。因果応報|人生逆転|怒り|裡の顔|修羅場2.0万字5 296 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 469