"貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算" 第16話
らなかったのは誰か
レオンは俺たちの席を見るなり、いつもの調子でを振った。「涼くん、先にんでた? あ、正さんの息子さんもいるんだ」。守はその横でさく会釈し、空いている子を探している。健はちがりかけた姿勢のまま固まった。
「鵜久森さん……どうしてここに」
「涼くんと約束してたからだよ。今は仕事の話はしないつもりだったんだけど」
健の線が俺とレオンのを何度も往復した。美は状況が分からず、「この方たちもおりいなんですか」と尋ねる。レオンは自分の名を名乗り、守を紹介した。それだけで健は唇を噛み、先ほどまでのきな声を失った。
「このたち、そんなに偉いの?」と美が声で聞く。
健は答えなかった。守がし困ったように笑い、「偉いかどうかは分からないけど、兄は今、島建設の代表を務めています」と説した。美の表が変わる。さっきまで『次期社の婚約者』だと胸を張っていた彼女は、目のの男が現職の社だとって急に背筋を伸ばした。
「それなら健さんのことも、よくごじですよね。私たち、もうすぐ結婚するんです。次期社の奥さんとして、私も会社のお役にてたらとっていて」
レオンは笑顔を崩さなかったが、すぐに祝福の言葉を返すこともしなかった。健を見て「承継計画の説は受けているよね」
広告
と確認した。健はグラスを握ったまま、「父からは何も」と呟く。俺はその声を聞いて、彼が本当に現状を理解していなかったのだと悟った。
「社員向けの通にもいてあったはずだよ。君の業務のについては、ここで話すことじゃない。ただ、次の代表についてはもう決まっている」
「そんなはずない。親父の会社だぞ。俺以に誰がいるんだよ」
健が会社の通を読んでいないとっても、俺は勝った気持ちにはなれなかった。自分に都のいい未来だけを信じて、必な説を避けてしまう怖さをじたからだ。俺も美と結婚する未来を当然だとい込み、彼女の満を正面から聞いていなかった。違うでも、い込みはを鈍くする。
レオンは俺を見た。俺は首を横に振り、居酒で事の話を広げるのはやめようという図を送った。彼はさく頷き、「詳しいことは会社で確認しよう」と言った。だが美は納得できなかったらしい。
「次の社って、健さんじゃないんですか。だったら誰なんです?」
守が鞄から封筒を取りしかけ、俺が止めた。彼は「あ、ごめん。今渡す予定だった資料」と慌ててしまう。公園ではふざけていても、仕事の線引きは切にするだ。俺は美に「今夜は個な集まりだから」と答え、話題を変えようとした。
広告
美は状況を取り戻そうとするように、員へ追加のみ物を注文した。「とにかく乾杯しましょうよ。これから族になるんですから」と笑う。だが健はグラスに触れず、レオンの顔を見つめていた。彼の自信は、会社の実際の決定ではなく、父親の息子というだけに支えられていたのだろう。
俺は美に「結婚の話はで確認したほうがいい」と伝えた。彼女は「何よ、嫉妬してるの」と返したが、その声はしずっていた。と同じ言葉で俺を黙らせようとしているように見えた。俺はもう、説しても届かない相に自分のを証するつもりはなかった。
すると健が突然、俺の胸ぐらにを伸ばした。「お、裏で何かやったんだろ。親父に取り入って、俺を追いしたんだな」
レオンがすぐにに入り、員に迷惑がかからないよう声を落とすよう求めた。俺は健のを振りほどき、はっきりと言った。「俺が決めたことじゃない。会社で正式に選考した結果だ」。健はなおも何か言いかけたが、入からたな声がした。
「健。こんな所で何をしている」
そこには、の奥で別の会を終えた正社がっていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 6 -
完結第15話
三十八年目の帰る場所
六十二歳の美津子は、三十八年間、夫と娘を支え、義母の介護も一人で担ってきた。ところが海辺の実家へ二泊すると告げた朝、夫は「戻ってこなくていいぞ」と笑い、娘まで同調する。 その言葉をきっかけに、美津子は本当に帰らないことを決意する。しかし夫は「この家は俺のものだ」と激怒し、離婚まで口にした。 そんな夫の前に、美津子が差し出したのは、亡き父が残した土地の登記と三十八冊の家計簿だった。 誰にも認められなかった三十八年間の人生を取り戻す、一人の女性の静かな決断と再出発の物語。夫婦|ATM扱い|絶縁|金銭問題|熟年離婚2.0万字5 1 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 65 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 34 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 232 -
完結第20話
生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由
72歳の佐野ふみ子は、亡き夫が40年かけて育てた生け垣に囲まれた家で、一人静かに暮らしていた。ところが隣人の美津江は、落ち葉や枝の張り出しに執拗に文句をつけ、ついには「違法な生け垣だ」と市役所へ通報する。 夫の思い出を守りたい気持ちを抑え、ふみ子は生け垣をすべて伐採することを決意。すると、長年隠れていた地中から古い境界杭が発見される。 そして伐採から4日後、あれほど生け垣を嫌っていた隣人が、真っ青な顔で玄関に現れた。 「お願い! 生け垣を元に戻して!」 突然の懇願の裏に、何があったのか――。因果応報|人生逆転|怒り|裡の顔|修羅場2.0万字5 296 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 469