"「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知" 第4話
段ボール箱のメモと狂い始めた距
休みに入ると、代の友関係はそれぞれのに向けて急速に希化していった。
彩佳は都内の名私総学への学が決まり、真しい髪やブランド物のバッグ、歓サークルの報をSNSへ連のように投稿していた。共通のを介して流れてくるその投稿に、俺が「いいね」を押すことは度もなかった。
そんなの旬、自宅の玄関に宅配便のきな段ボール箱がつ届いた。母が受け取り、俺の部へ運んできてくれたその箱の面には、見覚えのある丸文字でかれた片が貼り付けられていた。
『もう使わないから、優馬の浪勉に使っていいよ! 頑張ってね!』
箱のガムテープを引き裂いてを改めると、そこには代、俺が彩佳のために自腹で購入し、取り取り教えるために使った参考や問題集がぎっしりと詰め込まれていた。
ページをめくると、余には俺が彼女のためにき込んだ解説のメモ、解法のポイント、注すべき公式の証がびっしりと残されていた。付箋の端々は擦り切れ、俺が費やした膨なの残骸がそこにあった。
「……もう、必ないんだよ」
俺は自分のきノート数冊だけを引き抜き、残りの参考はすべて段ボール箱ごと、母の指導へ寄付するために縛り直した。
広告
俺がむ所に、レベルの受験問題集を振り返る余などしない。
。桜のとともに、学期が幕をけた。
都科学での活は、初から過酷を極めた。特待として学費全額免除の権利を維持するためには、全科目で位パーセント以内の成績を維持しなければならない。線形代数、変数微積分、散数学、そしてC言語によるレイヤーのプログラミング演習。代とは桁違いの報量と度の速さに、気を抜けば瞬で振り落とされる緊張が漂っていた。
しかし、その忙しさは、俺にとって至福のだった。
分からない数式と向きい、エラーログをずつ解析し、自らの脳を極限まで酷使して真理に到達する。そのは、すべて俺自の血肉となり、俺自の未来を切り拓くための糧となっていた。の嫌を伺う必も、の模試の結果に憂する必もない。
の型連休がけたある夜、研究で夜までアルゴリズムの課題に取り組んでいた俺のスマートフォンが、突如として激しく振した。
ディスプレイに表示された名は『希彩佳』。
ヶ以、言葉を交わしていなかった相だった。俺は眉をひそめながら、通話ボタンをスワイプした。
「……もしもし」
『あ、優馬? やっとた! 今丈夫?』
広告
受話器の向こうから聞こえてきたのは、以と変わらない、当たりのように俺のを求する甘えた声だった。
「課題の途だ。件は何だ?」
『えー、ちょっとたくない? 実はさ、学の教養科目の「報リテラシー統計」って授業の課題が全然分かんなくて! エクセルの回帰分析のレポート、が提締め切りなんだけど、サイト見てもエラーばっかりるの。優馬、昔得だったでしょ? 今からデータ送るから、ちょっと直ししてくれないかなって』
俺はパソコンのディスプレイに表示された、自分自のシミュレーションコードを見つめた。俺自の課題提期限も、の午だった。
「学部の友達に聞けばいいだろ」
『みんな文系だから全然分かんないの! 優馬なら分で終わるでしょ? お願い、単位落としたら留しちゃうよ!』
以の俺なら、反射に「分かった、ファイルを送って」と言っていただろう。自分の眠を削り、自分の課題を回しにしてでも、彼女の窮を救うことが自分の役割だと信じ込んでいたからだ。
だが、今の俺のには、たい違しか湧きがらなかった。
「断る。自分でやれ」
『……え? なんで? しくらい伝ってくれたっていいじゃん!』
「その『しくらい』を、ので何回、何百回俺から奪ってきたとってるんだ。
おの学の課題は、お自が責任を持つべきものだ。俺には切関係ない」
『な、何それ……! 優馬、浪して性格歪んだんじゃないの!?』
「俺は浪してない。……度とこんな用件で話してくるな」
俺はそれ以聞かずに通話終ボタンを押し、即座に彼女の連絡先を通オフへと設定した。
翌、学の端末で提を終えた俺を、黒田教授が招きした。
「瀬君、提されたコードを見たよ。れ値の処理方法に独自の夫が見られる。……どうだね、来からスタートする産学連携の『スマート交通制御プロジェクト』に、学部代表として加わってみないか?」
「ぜひ、やらせてください!」
世界は、猛烈なスピードでへとんでいた。の甘えにをとられている暇など、秒たりとも残されていなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 19 -
完結第16話
母の初盆を禁じた義父が、土地の名義を知った日
亡き母の初盆へ帰ろうとした由美は、義父から「籍を抜いて出ていけ」と言い渡される。結婚二十五年の夫・浩司も味方にはならず、由美は静かに家を出ることを決意した。 しかし、義父一家が暮らす家の土地は、十五年前に母が購入した由美名義のものだった。さらに夫が、その土地を無断で借金の担保にしようとしていたことが発覚する。 母の残した古い鍵と書類を手に、弁護士を訪ねた由美。やがて明らかになる夫の裏切りと、義父母が隠していた計画。二十五年間耐え続けた妻の、静かな人生逆転の物語。怒り|嫁姑|夫婦|修羅場2.3万字5 0 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 135 -
完結第20話
貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算
「月収四十万円で、私と結婚できると思ってたの?」七年間付き合った恋人・美香に、収入を理由に婚約を破棄された中島涼。失意の帰り道、公園で出会った風変わりな兄弟との交流が、彼の人生を大きく変えていく。物流の経験を生かして建設会社の経営改革に携わり、少しずつ信頼を築いていく涼。二年後、居酒屋で偶然再会した美香は「次期社長と結婚する」と勝ち誇っていた。しかし、彼女も婚約者も、会社で進んでいた重大な決定を知らなかった。金と肩書きで人を見下した二人を待つ、思いがけない逆転劇。人生逆転|裡切られた|真実|第二の人生|金銭問題2.9万字5 210 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 320 -
完結第20話
生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由
72歳の佐野ふみ子は、亡き夫が40年かけて育てた生け垣に囲まれた家で、一人静かに暮らしていた。ところが隣人の美津江は、落ち葉や枝の張り出しに執拗に文句をつけ、ついには「違法な生け垣だ」と市役所へ通報する。 夫の思い出を守りたい気持ちを抑え、ふみ子は生け垣をすべて伐採することを決意。すると、長年隠れていた地中から古い境界杭が発見される。 そして伐採から4日後、あれほど生け垣を嫌っていた隣人が、真っ青な顔で玄関に現れた。 「お願い! 生け垣を元に戻して!」 突然の懇願の裏に、何があったのか――。因果応報|人生逆転|怒り|裡の顔|修羅場2.0万字5 409 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 601