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"昭和44年、終電後に消えた駅員――28年目に見つかった記録" 第3話

診療所の名簿

話をくれたのは、岩田京子さんという元護婦だった。

昭の、彼女は町診療所の夜勤を担当していた。

当歳だった京子さんは、今は隣町で夫とさな薬を営んでいる。

翌、私は朝番のバスで会いにった。

の奥には古い薬箪笥と油ストーブがあり、まだ昼なのに湯呑みがつ並べられていた。

母も来ていたのだ。

「話のあと、千鶴さんにも声をかけたの」と京子さんが言った。

「で聞かせていい話かどうか、迷ったから」

母はうつむき、湯呑みを両で包んでいた。

の午分ごろ、だらけの男が診療所へ運び込まれた。

作業のに国鉄の羽を着ており、胸元には赤いランプを抱えていた。

運んできたのは製材所のトラックだったという。

「あの晩は脚がくてね。誰が話をかけてきたのか、よく聞き取れなかった。男のはをひどく切っていて、話せる状態ではなかったわ」

京子さんは古い帳をいた。

付と患者数だけを個に控えたものだった。

夜勤の記憶を埋めるため、診療所が閉じたときに残っていた自分の帳を取っておいたという。

『 夜名。傷。佐野さん』

父は杉原修だ。

『佐野』という名はらない。

「そのの顔、覚えていますか」

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「覚えているのはの薬指がかったこと。昔の怪みたいだった。杉原さん、そうでした?」

私は首を振った。

父は私の髪を結ぶのが苦で、本の指を器用にかして何度もやり直した。

薬指はくなかった。

瞬、胸のに灯った希望が消えた。

見つかったのは父ではない。

では、なぜ別の男が父の羽と赤いランプを持っていたのか。

京子さんは続けた。

「そのは翌朝にはもういませんでした。運んできたが、内のいる病院へ移すと言って。診療所は転院先を記録したはずだけど、正式な台帳は町が保管しているでしょうね」

「その男のは、なぜ『佐野』という名を?」

「付き添いのがそう答えたの。本は度も名乗らなかった」

母がをいた。

「修が着ていた羽は、失踪した翌朝、駅の更で見つかったと聞かされました」

京子さんは目を丸くした。

「同じ羽が枚あったのかしら」

帰り、母がぽつりと言った。

「あなたが歳のころ、駅のの名をだけ覚えていたでしょう。佐野栄吉さん。線の保線をしていたよ。の指を械に挟まれたことがあった」

私はち止まった。

いした。

父がになると緒に畑から茄子を持って帰ってくれた、無な男の。

い袋をいつもつけていた。

つまり診療所の患者は佐野さんだった能性がい。

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父の羽とランプをにつけた、別の駅の関係者。

それならに「病院で杉原を見た」という噂が広がった理由も説できる。

だが、父の取りはまだない。

私たちは町役に戻り、古い救急・転院の記録を閲覧した。

事故のあったの夜台帳は傷んでいたが、京子さんが教えてくれた付の欄があった。

患者名は佐野栄吉。

付き添いの欄は空。

そのに細い字で、目がいてあった。

『号詰、砂点検帰』

負傷した所が診療所ではなく、号の側だったと示している。

「このだけはきて帰っている。なら、あの夜に何が起きたかっているはず」

森岡さんに話すると、彼は黙り込んだ。

「佐野さんは、いまもご命ですか」

「たしか、にくなりました」

私は受話器を握り直した。

唯の証とえたが、またいなくなっていた。

ところが森岡さんは、そこからな話をした。

「佐野さんには娘さんがいます。名は子さん。あの、父親がくなるに、ほどのを預かったと言っていました」

佐野子さんは代半ばで、町のれの農協に勤めていた。

仕事帰りに会う約束を取り付け、私たちはの、用沿いのを歩いた。

子さんは、私の名を聞くなり玄関をけた。

「とうとう来たんですね」

彼女は封筒を枚、卓のに置いた。

表には『稲葉駅殿 事故報告』と父の字がある。

しかし消印はない。

「父が、これを見せれば、杉原さんの族はまたつらくなると言っていたんです」

「どうしてですか」

子さんの声は震えていた。

「あなたのお父さんの署名で、号は全だと報告されているからです。あのはその晩、壊れたのに」

封筒の端からのぞくには、父の印鑑が押されていた。

私が握っていた正義の形が、その瞬、音をてて変わり始めた。

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