"義妹が奪った父のベンツ――事故の電話で義母が絶句" 第11話
崩れ始めた族
病院へ向かおうとする子を、私は止めませんでした。
ただ玄関で靴を履く義母に、つだけ伝えました。
「帰ってきたら、戸先とお話してください」
「何の話よ」
「全部です」
子は振り返りました。
「脅してるの?」
「いいえ」
私は静かに答えました。
「もう隠せないと言っているだけです」
義母がていったあと、私は自分の部へ戻りました。
必な荷物を持ち、暮らしたを見回しました。
このは健の実です。
結婚当初から義母と同居し、私はここを自分のだとおうとしてきました。壁を選び直し、台所を使いやすくし、庭にを植えました。
けれど今見ると、どこにも私の居所がありません。
午、戸先の事務所へくと、すでにしい報が入っていました。
美穂が事故、病院で事を聞かれた際、を自分の物として処分しようとしていたことを認めたそうです。
さらに「兄と母に相談した」と話していました。
「ここから先は、財産の無断処分だけでは済まない能性があります」
戸先が言いました。
私は昨夜の録音を再しました。
『由美がいなくなれば、全部丸く収まるとっただけだ』
健の声。
先の表が変わりました。
「この発言だけで何かが決まるわけではありません。ただ、保険の受取変更の件や、美穂さんの話とわせれば慎に調べる必があります」
広告
「警察に相談しますか?」
「はい。なくとも全面については相談した方がいいでしょう」
私は頷きました。
そのの夕方、健から話がありました。
「お、どこにいる?」
「用事です」
「お袋が弁護士がどうとか騒いでるぞ。何をしたんだ」
「私は何もしていません」
「族を警察汰にする気じゃないだろうな」
族。
またその言葉です。
「健さん」
私が結婚ほとんど使わなかった呼び方をすると、夫は黙りました。
「私が病院へ運ばれたとった、お義母さんは『治療しなくていい』と言いました」
話の向こうから返事はありません。
「驚かないんですね」
「何の話か分からない」
「美穂さんは、あなたもの件をっていたと言っています」
「妹が勝に言ってるだけだ」
「保険の変更も?」
沈黙。
その沈黙が答えでした。
「帰ってこい」
健がい声で言いました。
「で話せばいい」
「帰りません」
「由美」
「今から娘のところに泊まります」
「勝なことするな!」
夫が鳴りました。
、その声を聞くたびに私は反射に謝っていました。
でも今は違います。
「私のを勝に売ろうとしたのも、私の保険を勝に変えようとしたのも、私ではありません」
私は静かに言いました。
「勝なことをしたのは、あなたたちです」
話を切りました。
は震えていませんでした。
その夜、娘ののさな客で眠ろうとしていると、奈緒が温かいお茶を持ってきてくれました。
「お母さん、本当に婚するの?」
「するつもり」
奈緒はし寂しそうに笑いました。
「もっとくしてもよかったとう」
私は娘を見ました。
「ってたの?」
「お母さんがしてることくらい、子どもの頃から分かってたよ」
胸が詰まりました。
私が族を守るためだとって耐えてきたことを、娘はずっと見ていた。
私は初めて、自分のが必ずしも誰かを幸せにしていたわけではないことに気づきました。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 138 -
完結第15話
110億円を相続した妻を捨てた夫――30億円の誤算
亡き叔父から110億円もの遺産を相続した美桜は、経営難に苦しむ夫・達也を救おうと、書類を抱えて帰宅する。ところが家の中から聞こえてきたのは、姑と夫が自分を追い出し、裕福な社長令嬢との再婚を企む会話だった。持参金5000万円に目がくらんだ夫は、慰謝料も財産分与も払わず離婚を迫る。美桜は静かに離婚届へ署名し、家を後にする。しかし、夫の会社を長年支えてきた30億円の信用枠には、本人さえ知らない重大な秘密があった嫁姑|夫婦|相続|金銭問題2.4万字5 76 -
完結第20話
5000万円の新居に義両親が無断で引っ越し――夫の嘘
実家の両親から五千万円の援助を受け、念願の新居を購入した。夫の健太とは親との同居をしないと約束し、二人だけの新生活を始めるはずだった。ところが引っ越し当日、義両親のベッドやタンスを積んだトラックが突然到着する。「今日から俺の親も住む。親孝行は当然だろ」と言い放つ夫。彩佳の同意もなく進められていた同居計画には、夫が隠してきた嘘があった。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|金銭問題|修羅場2.3万字5 37 -
完結第10話
四年分の介護記録
四年間のシンガポール赴任を終え、出世を手に帰国した52歳の高橋健一。胸には、妻・由美に突きつけるための離婚届があった。 しかし帰宅した彼を待っていたのは、真っ白な髪と痩せ細った体に変わり果てた妻、そして半年前に亡くなった母の仏壇だった。 重度の認知症を患った義母を、たった一人で介護し続けた由美。夫が毎月送った30万円では到底足りず、彼女はすべてを犠牲にしていた。 そして由美が差し出した四年分の介護記録と、亡き母が残した最後の遺言が、健一の人生を大きく揺るがしていく。嫁姑|夫婦|親子関係|介護1.7万字5 653 -
完結第20話
葬儀3日後、姑に追放された私に亡き夫からの連絡
物流センターの事故で夫・直人を突然失った41歳の美和。しかし義母の数枝は、妻である美和に夫の顔を見ることすら許さず、葬儀を強引に取り仕切る。さらに葬儀の三日後、香典三百万円以上を独占し、13歳の娘・咲と美和を雨の夜に家から追い出してしまう。 絶望の中、親友に助けを求めた美和のスマートフォンに、午前四時、信じられないメッセージが届く。 「生きてる。母には言うな」 送信者は、火葬されたはずの夫だった。 閉ざされた棺の中にいたのは誰なのか。義母が隠そうとしたものとは――。夫の事故をめぐる疑惑と家族の裏切りを描く、衝撃の逆転サスペンス。因果応報|嫁姑|夫婦|親子関係|金銭問題2.3万字5 463 -
完結第16話
母の初盆を禁じた義父が、土地の名義を知った日
亡き母の初盆へ帰ろうとした由美は、義父から「籍を抜いて出ていけ」と言い渡される。結婚二十五年の夫・浩司も味方にはならず、由美は静かに家を出ることを決意した。 しかし、義父一家が暮らす家の土地は、十五年前に母が購入した由美名義のものだった。さらに夫が、その土地を無断で借金の担保にしようとしていたことが発覚する。 母の残した古い鍵と書類を手に、弁護士を訪ねた由美。やがて明らかになる夫の裏切りと、義父母が隠していた計画。二十五年間耐え続けた妻の、静かな人生逆転の物語。怒り|嫁姑|夫婦|修羅場2.3万字5 3278 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 593 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 1513