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"車椅子の妻を離島に置き去り――船上の夫が見たもの" 第17話

夫がいた約束

岡企画の代表・岡達也は、枝先の事務所へで来た。歳の男性で、くたびれた鞄を膝に置き、名刺を差しすが落ち着かなかった。私は最初に「私が資を承諾した事実はありません」と伝えた。岡は目を伏せ、「そのことを確認したくて来ました」と答えた。言葉は丁寧だったが、彼もまた私のを計算に入れていただった。

「啓介さんは、奥さんの賠償から千万円をしてもらえると説していました」。岡は鞄から類をした。「私も本のを確認すべきでした。彼が奥さんを支えていると聞いて、夫婦で話がついているとい込んでしまった」。私はその説を聞いても、すぐに許す気にはなれなかった。本へ度話をかければ済んだことを、誰もしなかったのだ。

岡が持参したのは、夫とのメールの写しだった。資の返済が遅れ、事業の継続が難しくなっていることが分かる。啓介は何度も「妻の賠償が入れば払える」と返信していた。私が受け取るの期と額を、夫は事細かに伝えていた。私はそのメールを読むまで、夫がへ自分の治療費の話をしていたことさえらなかった。

通のメールで、私の目が止まった。島へくのものだった。「曜にでかける。

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そこで今のことを決めさせる。曜には承諾を持っていけるとう」。岡からは「本の署名がないと困る」と返事が来ている。夫は「配するな。妻は俺がいなければ何もできない」と答えていた。

私はその文章を度読んだ。啓介は島へ連れていくから、私の拒否を折るつもりだった。の帰りの切符を枚だけ取った理由も、これで分かる。私は夫が助けに戻ってくるまで恐怖ので過ごし、翌朝には通帳を差しすと考えていたのだろう。私がつ姿を見て驚いたのは、い通りにならないことを初めてったからだ。

「このメールを、必な続きに使わせていただけますか」。枝先が尋ねると、岡は頷いた。「警察から問いわせがあれば、私のることは話します」。私は彼の顔を見た。「あなたも、私が承諾しているか確かめませんでした。今、私へ返済を求めないでください」。岡は「もちろんです」と答えたが、私はその返事を文で残すよう求めた。

面談のあと、枝先は私の向に沿って、岡企画へ正式な通を送った。私名義の資承諾は作成しておらず、私の財産を返済原資として扱うことに同していない。会社が啓介へ貸したは、私が個として引き受けた債務ではない。相からは数、私へ請求しない旨の回答が届いた。

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私はその文を読み、ようやくつの鎖がれた気がした。

けれど、夫は諦めていなかった。啓介は私の叔母へ話し、「千紗は俺を犯罪者に仕てて財産を独り占めしようとしている」と話したという。叔母は私に確認するに、「夫婦なんだから譲りいなさい」と言った。私は胸が痛んだが、に反論しなかった。「私は島に置きりにされ、携帯と財布を持ちられた。警察にも相談している。詳しいことは代理を通して話す」と答えた。

叔母はしばらく黙ったあと、「そんなことになっていたの」と言った。私は彼女を責めなかった。夫の話だけを聞けば、献に介助してきたが裏切られたように聞こえるだろう。けれど事実は、どれだけ巧みに語られても変わらない。私は叔母に無理に方になってもらう必はないと伝え、話を切った。

夜、私は姉のの机で、夫へ伝える言葉をいた。「あなたが介助してくれたことには謝しています。でも、それは私のや財産を奪う権利にはなりません」。何度もき直した末、私は枚のいにした。枝先へ預けるためのものだった。りをすべてき並べるより、私が何を拒み、これから何を望むのかを確にしたかった。

の最には、こういた。「私は、もうあなたの許を待ちません」

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