みかん小説
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"消えた路地の矢印" 第5話

役所の線

俊は、杉に言われたとおり、迂回の全を確かめるための資料を作り始めた。

朝は事のを歩き、昼は荷ろしのを調べ、夕方には診療所の患者がどちらから来るかを野寺に聞いた。ノートには距だけでなく、段差のさ、歩の幅、横断歩の位置、が折するときに見えにくい角までき込んだ。

だが、いくら細かく調べても、俊のノートには決定にりないものがあった。そこに描かれたを、誰が正式に通れると認めるのか。事柵をかす権限も、私のをけてもらう権限も、標識の見習いにはなかった。

直子に頼んで、2は区役所の事担当窓を訪ねた。窓の男は、積みなった類のから、公式の迂回図を取りした。

「歩者は、こちらの通りを渡ってください。診療所の名も、案内板に入れる予定です」

図の線は、俊が調べたものとほとんど同じだった。違うのは、途にあるさな障害が描かれていないことだった。

「この角は、朝に荷物が積まれます。ここは事両が入りします。それに、郵便局の裏の通は、3に閉鎖されると聞きました」

「事のみ方によって、通経は変わります。現の責任者と調してください」

「現の責任者は、役所が決めると言っています」

男は、しだけ顔をげた。

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責められたとったのか、あるいは同じやり取りに慣れているのか、声をくした。

「こちらは全体を管理しています。個々のの都にわせて、図面を変えることはできません」

直子がを挟んだ。

「の都だけではありません。診療所へ通う患者さんも、学へく子供もいます」

「承しています。だから迂回を設けるんです」

話はそこで止まった。男は親切なではなかった。事の図面を見て、期限を守り、事故が起きないようにするのが彼の仕事だった。ただ、彼の机に届く資料はの幅や両の流れをに作られていて、患者の歩幅や荷の置き所までは届いていなかった。

帰り、直子は区役所ののでち止まった。

「父は、役所が何も考えていないと言います。でも、たぶん、考えるための材料が違うんです」

「材料を渡せば、変わるとう?」

「変わるかどうかはわかりません。でも、渡さなければ、最初から何も起きません」

俊は、ノートをいた。数字と矢印の横に、初めての名をきした。野寺護婦。青果の本。郵便局の配達員。学へ通う子供たち。誰がどのを使い、どこで困るのかを、ただの「歩者」という言葉にまとめないためだった。

自分の歩く速さだけでを測ったことも、違いだった。俊なら18分かかる迂回を、急げば15分で歩ける。

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だが、杖をつくは途で休み、買い物籠を持つは段差ので持ち替え、子供を連れたはのきが止まるまで待つ。のさは、図の距だけで決まらない。どこでち止まる必があるかによって、同じがくもくもなる。

直子はノートを覗き込み、歩くの名の横に、さな印を付け始めた。杖、荷物、子供連れ。を分類するためではなく、どんな助けが必かを忘れないためだった。俊は、その印を見て、自分の案内板に何を載せ、何を現のに任せるべきかを考え直した。

自分の歩く速さだけでを測ったことも、違いだった。俊なら18分かかる迂回を、急げば15分で歩ける。だが、杖をつくは途で休み、買い物籠を持つは段差ので持ち替え、子供を連れたはのきが止まるまで待つ。のさは、図の距だけで決まらない。どこでち止まる必があるかによって、同じがくもくもなる。

直子はノートを覗き込み、歩くの名の横に、さな印を付け始めた。杖、荷物、子供連れ。を分類するためではなく、どんな助けが必かを忘れないためだった。俊は、その印を見て、自分の案内板に何を載せ、何を現のに任せるべきかを考え直した。

その午、事現から連絡が入った。郵便局裏の通は、予定より1く閉じられるという。

資材の搬入が遅れ、別の所から運び込む必がたためだった。

俊は現へった。柵の向こうでは、作業員が鉄板を並べていた。の半分がすでに塞がれている。

「ここを通れるようにしておいてください。診療所へくが」

「無理だよ。の朝には全部塞ぐ。図面どおりだ」

「では、代わりのは」

「通りを回ってくれ」

俊は、迂回の先を見た。横断歩の向こうに、荷物を積んだトラックがまっている。向こう側の歩には、事用の砂袋が並んでいた。

図のでは、はつながっていた。

現では、その線のにがてる所がなかった。

俊は翌朝、通勤にわせて、公式の迂回をもう度歩いた。横断歩ので4分待ち、渡った先では荷物をろすトラックのろを回った。歩の端に置かれた箱を避けると、側へ半歩ることになる。反対から来た自転がベルを鳴らし、俊は慌てて壁際へ寄った。

その様子を見ていた青果の本が、先から声をかけた。

「そこを空けておけと言われても、荷物を置く所がないんだ。のに全部入れたら、品物を選ぶ客が入れなくなる。朝の1だけでも、どこかにを止められなければ商売にならない」

本の言い分も、現の言い分も、どちらも暮らしの部だった。俊は、歩を空けるように頼むだけでは何も解決しないと気づいた。

荷ろしのを記録し、そのだけ別の歩ルートへ誘導する。通を固定するのではなく、通れるをらせる必がある。

ノートの端に、俊はきくいた。「が悪いのではない。予定がなっている」。

標識に文字を詰め込みすぎることもできなかった。歩きながら読むに、い説は届かない。矢印をきくし、目はくし、や注は別の板に分ける。俊は作業で試しきをして、数歩れた位置から読めるかを確かめた。職の仲は「そんな細かいことまで気にしていたら、期限ににわない」と笑ったが、俊は笑い返さなかった。読みづらい案内板は、置いていないのと変わらない。

標識に文字を詰め込みすぎることもできなかった。歩きながら読むに、い説は届かない。矢印をきくし、目はくし、や注は別の板に分ける。俊は作業で試しきをして、数歩れた位置から読めるかを確かめた。職の仲は「そんな細かいことまで気にしていたら、期限ににわない」と笑ったが、俊は笑い返さなかった。読みづらい案内板は、置いていないのと変わらない。

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