"消えた路地の矢印" 第7話
の通れなかった
杉との現確認は、朝7に始まった。
事主任は、図面と巻尺を持ち、作業員に柵をにけさせた。俊と直子、診療所の野寺も同した。全員が同じを歩くと、図の線が実際にはどこへつながっているのか、しずつ見えてきた。
歩者が通れる所はあった。だが、事両の入りとなる所があり、荷ろしのには通を止めなければならない。別のは段差がないが、夕方になるとから戻る荷が並ぶ。どれか1本を「全な迂回」と呼ぶには、条件がりなかった。
事主任が腕計を見た。
「これ以、確認にをかけられません。の本事が遅れます」
その言葉に、俊は反論できなかった。事が遅れれば、を使うたちにも響がる。広いができることを待っているもいるのだ。
現をれようとしたとき、の向こうから配の男が歩いてきた。元消防署員の桑原だった。退職もこの所にみ、町内会の防災訓練を伝っている。彼は事主任に挨拶をしてから、封鎖されるを見つめた。
「ここを広げる話がたのは、昨今のことじゃない。昭36の事を覚えているか」
俊は首を振った。
「夜にの角からがた。がくて、根伝いに燃え広がった。消防は通りから先へ入れず、ホースを何本もつないだ。
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がバケツでを運び、隣のから財をした。あのとき、もうしが広ければと、誰もがった」
桑原は、の狭さを懐かしむような調では話さなかった。あののせいで、誰かが危険な目に遭ったことを、今も覚えている声だった。
「を残せば、全部が救われるわけじゃない。狭いには、狭いの危険がある。だが、広いを作れば、すべてが解決するわけでもない。を変えるときは、変わったに誰が困るかまで考えなきゃならん」
杉は黙って聞いていた。彼も、を広げる必があることを誰よりっていた。現で働くは、古いを美しい記憶としてだけ見ることができない。が入れない、荷が運べない、が広がる。そうした便や危険も、同じの部だった。
「じゃあ、何を残せばいいんでしょう」
俊が尋ねると、桑原はし考えた。
「そのものじゃないかもしれん。が全にき来できる仕組みだ。をなくすなら、次のを用する。次のができるまで、どこを通ればいいからせる。それがなければ、ただ壁をてただけだ」
その言葉は、俊が考えていたことにかった。ただし、桑原は古いを残せとは言わなかった。を広げる仕事にも理由があると認めたうえで、その先を問うていた。
事主任は、仮囲いの位置を確認し直した。
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歩者が通れる幅を確保するには、資材を置く所をしずらさなければならない。作業員の線も変わるため、現の調が必だった。
「午だけなら、ここを通せるかもしれません。ただし、午の搬入は閉じます」
「それでは、診療所へ来るは午に迷います」
野寺が言った。
「では、午は別のを使う案内をすしかない」
「毎、案内が変わるんですか」
直子が尋ねた。
主任は答えなかった。事の都を無してつのを固定することはできない。だが、毎変わるを、通り慣れないが自分で判断するのも難しい。
俊は、ノートの余にいた。「で変わる」。
そのの午、彼は会社の作業で、矢印の板を何枚か切りした。まだ文字はかない。まず、通できると、通できないを、現と相談して決める必があった。
桑原が帰り際に教えてくれた事の所を、俊はひとりで見にった。焼けたはすでになく、そこにはしい建物が建っていた。隣のの壁には、古い消栓の位置を示す赤い印が、塗り直された壁のにかすかに残っていた。今の幅が必なのは、未来のためだけではない。過ににわなかったことを、次は繰り返さないためでもあった。
帰り、俊は事両の運転と話した。運転は、歩者を見落とすのが怖いから、柵のへてくるを見かけると、すぐに作業を止めるのだと言った。
止めれば事が遅れ、止めなければ事故の危険がある。
「歩くのためのが決まっていれば、こっちもして仕事ができるんだがな」
運転の言葉に、俊は頷いた。歩者の案内は民のためだけではない。現で働くが、何を警戒すればいいかを確にするためにも必だった。
桑原は、消防署にいた頃の話をもうひとつした。狭いでは、消防が入れないだけでなく、避難すると消に向かうが同じ所でぶつかる。が広がれば、両が入りやすくなり、避難するの通も確保しやすい。だから、を広げることに反対するつもりはないという。
「ただ、広いを作ったあと、そこへるまでのを失わせてはいけない。のから全な所へられなければ、広いがくにあるだけだ」
俊は、標識を描く仕事と防災が、別々の話ではないことをった。を案内することは、便利さだけでなく、危険から逃げるための筋を示すことでもあった。
桑原は、消防署にいた頃の話をもうひとつした。狭いでは、消防が入れないだけでなく、避難すると消に向かうが同じ所でぶつかる。が広がれば、両が入りやすくなり、避難するの通も確保しやすい。だから、を広げることに反対するつもりはないという。
「ただ、広いを作ったあと、そこへるまでのを失わせてはいけない。のから全な所へられなければ、広いがくにあるだけだ」
俊は、標識を描く仕事と防災が、別々の話ではないことをった。を案内することは、便利さだけでなく、危険から逃げるための筋を示すことでもあった。
杉は作業台の端にち、板のきさを見ていた。
「標識は、てたら終わりじゃない。が変われば、直さなきゃならん。おがそれを引き受ける覚悟があるのか」
俊は、すぐには答えなかった。
彼が描こうとしているのは、きれいな矢印ではない。毎変わるを、誰かが迷わず通るための案内だった。
「引き受けます」
ようやくそう答えると、杉はく頷いた。
「なら、までに案をせ。通れるを3本じゃなく、1本に絞れ。に選ばせるな。選ばなくても済むようにするんだ」
俊は、もう度ノートをいた。を描く作業が、ようやく始まった気がした。
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