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"消えた路地の矢印" 第10話

を借りる

松稲荷の裏を歩者にくため、町内会の集まりがかれた。

集まったのは、神主の森田、野医師、護婦の野寺、青果の本、枝活版所の源治と直子、そして事主任と区役所の佐藤だった。俊と杉は、通の幅を測った図面と、仮設案内板の見本を持参した。

森田は、をけるを午8から午6までと提案した。夜は防犯のために閉める。倉庫へ荷物を運ぶは、神社側から町内会へ連絡する。境内で祭事があるは、別のへ誘導する。通を掃除する当番は町内会で決め、事現の作業員は資材を置かない。

条件はかった。だが、どれも誰かの都を無したものではなかった。

「診療所は朝くからいています。8よりに来る患者さんもいるんです」

野寺が言うと、森田は考え込んだ。

「毎、夜けからをけるのは難しい。神社の者が来るに、勝にをけられても困ります」

野医師が、診療所の診察をいたを差しした。

「朝の患者さんは、主に定期診察です。今までの表通りから来てもらうよう、こちらで説します。急患のは、私たちが迎えにくことも考えます」

その提案は、診療所だけに負担を押しつけるものだった。それでも、を朝からけるをすぐに用できない以、できることとできないことを分ける必があった。

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源治は、腕を組んだまま聞いていた。彼は移転先を決めたが、まだ荷造りは終わっていない。印刷の移が決まり、何件かの注文を断ることになった。職のひとりは、移転先がいという理由で辞めると伝えてきた。

「を借りる話は、いいことだとう。だが、を借りられたからといって、今までの仕事が戻るわけじゃない」

源治は、直子のノートを見ながら言った。

「うちの客は、表通りからへ来ていた。これからは、移転先の所を軒ずつらせなきゃならん。伝票にしい所を刷るだけじゃ、古い客はたどり着けない」

「しい案内も、印刷できます」

直子が答えた。

「ただし、うちが刷る案内には、うちのしい所だけじゃなく、この町のしいも載せたいんです。どこが通れなくなり、どこから回ればいいか。の名だけを残しても、たどり着けなければがありませんから」

俊は、その言葉を聞いて、3枚の図のことをいした。の図、事の図、暮らしの図。それぞれが別のものを示していても、最には同じの元でつながる。

事主任は、神社の裏から診療所までのを歩き、両の線と交わらないことを確認した。通の部は狭く、荷物を持ったがすれ違うには、片方がち止まる必がある。そこで、案内板には「自転はりて通」

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「荷は通れません」とくことになった。

「そんなに細かくいたら、板が文字だらけになるぞ」

杉が言った。

「必なことだけにします。矢印と、いていると、通るときの注です」

俊は見本を見せた。きな矢印のに「診療所・商へ」。そのに、さく「歩者専用 8〜18」。通のには、次の角までの距と、診療所の名を記した。

佐藤は、案内板の設置を正式に認めた。ただし、事の捗に応じて位置を変更すること、毎朝の点検記録を残すこと、神社の放を守ることが条件だった。板を置くことより、その板が正しく案内し続けることの方が、ずっとがかかる。

翌朝、俊と直子は、最初の案内板を松稲荷のに取り付けた。森田がをけ、杉が幅を測り、事主任が柵の位置を確認した。野医師と野寺は、診療所の入にしい案内を貼った。

ただ、町内会の全員が賛成していたわけではなかった。神社の世話役のひとりは、境内を通にすれば、転んだの責任を誰が取るのかと配した。別の民は、らないが裏を通るようになれば、ごみを置かれるかもしれないと反対した。森田も、そのを無することはできなかった。

直子は、通の入に掲示する約束を作った。放、通できる、禁止すること、点検の当番、問題が起きたときの連絡先。

活版所で使っている注文票の形式を応用し、誰が何を引き受けるかを枚にまとめた。町内会のたちは、名をくに何度も読み返した。

「誰かの親切だけに頼ると、親切にできないが来たときに終わってしまいます」

直子は言った。

「続けるなら、続けられる約束にしないと」

世話役は、最に署名した。全員が納得したわけではなかったが、なくとも、誰が何を守るのかはらかになった。を借りることは、善に甘えることではなく、負担を分けることでもあった。

世話役のひとりは、最まで署名を迷っていた。以、境内に自転を置かれ、祭りの準備に支障がたことがあるという。彼は「また同じことが起きたら、誰が片付ける」と繰り返した。直子は、当番表の横に、問題が起きたときの連絡先と、通を閉鎖できる条件をきした。

「何があってもけておくとは約束できません。危険があれば閉じます。その代わり、閉じたときには、別のを示す板をすぐにします」

俊はそう説した。を通れるようにすることだけが責任ではない。通れなくなったときに、その事実を隠さず、次の選択肢を示すことも責任だった。世話役はようやく署名し、当番表に自分の名を加えた。

世話役のひとりは、最まで署名を迷っていた。以、境内に自転を置かれ、祭りの準備に支障がたことがあるという。

彼は「また同じことが起きたら、誰が片付ける」と繰り返した。直子は、当番表の横に、問題が起きたときの連絡先と、通を閉鎖できる条件をきした。

「何があってもけておくとは約束できません。危険があれば閉じます。その代わり、閉じたときには、別のを示す板をすぐにします」

俊はそう説した。を通れるようにすることだけが責任ではない。通れなくなったときに、その事実を隠さず、次の選択肢を示すことも責任だった。世話役はようやく署名し、当番表に自分の名を加えた。

最初に通ったのは、青果へ向かう女性だった。彼女は矢印を見て、ので度ち止まった。

「ここを通ってもいいんですか」

「はい。午6までは通れます」

直子が答えると、女性はさくをげ、ゆっくり境内へ入っていった。

そのろから、杖をついた男性が続いた。通の途でち止まり、すれ違う相を待つ。急ぐは、しだけ回りの表通りを選んだ。全員が同じを使えるわけではない。それでも、を選ぶための報が、ようやく目に見える形になった。

夕方、俊は点検記録に「通」とき込んだ。隣には、森田が「の閉確認」、事主任が「柵の位置確認」と記していた。

さなのに、何もの名が並んでいた。

を消す事を止めたわけではない。

古い板も、の所も、元どおりにはならない。ただ、誰かがを失わないようにする仕事を、ひとりだけに任せずに済むようになった。

俊は、案内板の矢印を見げた。今度の矢印は、ただを指しているのではなかった。そこを通れると、通るための約束まで含めて、を示していた。

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