"シャッターを切らなかった日" 第4話
切り取られた
聞がた朝、僕は駅の売で自分の名を見つけた。
方版の半分に、《俣の苦しみを縫い続ける》という見しがあった。写真には、枝さんのがきく写っていた。震える指先とミシンの針。袖の布は画面の端で切られ、完成した学は見えない。
撮者の欄には、瀬航とかれていた。
息が止まった。
その写真は、僕が断られたあとに撮ったものではない。最初にへく数、通りの向こうから試し撮りした枚だった。枝さんの顔は写っていないし、のきもすぎて、本のものと断定できない。だから問題ないと考え、ベタ焼きの端に残したままにしていた。
さんに渡した封筒には、たしかにその枚が入っていた。
記事には、彼女が仕事を続けていることも、注文票のこともかれていなかった。写真のには、病に苦しむ民の暮らしを象徴するような説が添えられていた。
僕は聞を握ったまま、写真館へった。
写真館の入には、卒業記の見本写真が並んでいた。昨まで誇らしかった自分の名が、今は聞の片隅でひどくかった。親方は僕の顔を見るなり、何が起きたか察したらしい。僕が聞をくに、作業台のを片づけ、話の横にメモ用を置いた。鳴るより先に、確かめなければならないことがあった。
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「これ、載せていいって言ってない!」
親方は記事を読み、すぐ話を掛けた。聞社の交換台を通され、さんの声が聞こえた。
「すまない。締め切りがまって、理部に候補を回した。説を付けたのは僕じゃない」
「誰が付けたかじゃありません。枝さんは断ったんです」
話の向こうで、をめくる音がした。
「顔はていない。個を特定する記事でもない。訂正の相談はするけど……」
「本はわかります。所のだって」
返事はなかった。
昼、枝さんのへくと、入の札が裏返っていた。《本休業》。ガラス越しに見えるミシンには、い布が掛かっている。
朝、僕は駅の待でも同じ聞を見た。誰かが写真の部分を指で押さえ、「このはもう働けないんだろう」と話していた。僕は否定しようとして、名をしてしまうのが怖くなった。写真のの説が違っているとっているのに、本の解なしに正しい報を広めることもできない。その板挟みが、僕には初めてだった。
隣の履物の主が言った。
「朝から話が何本も来た。らん町のが、写真を見たって。に来て写真を撮ろうとした奴までいたよ」
僕は戸を叩いた。枝さんはてこなかった。
夕方になって、やっと恵子が連れてきてくれた。枝さんは鳴らなかった。聞をつ折りにして、僕に差しした。
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「ここに写ってるの、私の仕事じゃないね」
「すみません」
「私は今朝、制を取りに来たお母さんに言われたの。『無理をさせてごめんなさい。別のへ頼みます』って」
彼女はしだけ笑った。
「気遣ってくれたんだろうね。でも、うちの今の注文は、これでまたつ減った」
僕は聞をき、切り取られた部分を指した。
「元の写真には、制が写っています。そこも見せれば……」
「それで、何が戻るの」
言葉がなくなった。
枝さんはの鍵をけ、完成した学を着持ってきた。肩の縫い目を裏返すと、細い糸が揃っていた。
「このは、届ける。写真がても、私はの約束を守らなきゃいけない」
僕はそれを持ってち尽くした。彼女が守ろうとしているものを、僕の写真が削っていた。
夜、親方から枚のを渡された。さんが送ってきた、翌の写真展示の案内だった。聞社が援に入ることになり、写真の拡印刷をめるという。
展示候補の覧に、あのの写真が載っていた。
しかも印刷所への入稿は、の午だった。
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