"シャッターを切らなかった日" 第5話
写真をすだけでは
翌朝、僕は始発のバスで聞社へ向かった。
編集部には煙の匂いが染みつき、机のには切り抜きと原稿用が積まれていた。さんは徹夜けらしく、目のに濃いを作っていた。
「展示の写真をしてください」
僕が言うと、さんは印刷所へ掛ける話を止めた。
「す。もちろんすよ。昨、本にも謝りにった」
「会えましたか」
「会ってもらえなかった」
「じゃあ、まだ終わってません」
さんは顔をげた。
「君は僕を責めに来たんだろう。でも、記事がたことで取材の申し込みが増えたのも事実なんだ。らないままでいるに、何かをらせる力はある」
「その力で、枝さんの注文が減ったんです」
彼は何も言わなかった。僕も、記事を全部否定したいわけではなかった。俣病の原因や責任が、写真の使い方の違いで曖昧になっていいはずはない。けれど、の苦しみを伝えるという理由で、そのの選ぶ権利まで取りげていいともえなかった。
さんは印刷所へ話し、展示用の拡を止めた。僕は受話器の向こうから聞こえる返事を確かめるまで、席をたなかった。
午、公民館で緊急の集まりがかれた。聞記事のせいで、展示を止すべきだという声がていた。
「最初から聞なんか入れるからだ」
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「でも、聞がなきゃくのには届かん」
「病気のことを隠したいのか」
「誰もそんなことは言ってない!」
の女性が、「写真に写ったら、親戚から縁談を断られるかもしれない」と言った。別のは、「だから隠せと言うのか」と声を荒らげた。とも、相の配を否定したかったわけではない。自分のに起きたことを、誰かの都で黙らされるのが怖かったのだ。恵子は黒板の端に《反対の見も記録する》ときした。
声がなり、子がをこすった。僕が謝ろうとつと、岩崎さんがで制した。
「謝るのは事だ。だが、謝って済むのは撮った側だけだろう」
その言葉は、僕の胸に残った。
恵子は黒板につの項目をいた。《誰が写るか》《誰が説するか》。そのに、《誰が断れるか》ときした。
「このつを決めないなら、私は展示をやりたくない」
会議は結論をせずに終わりかけた。
そのとき、戸がいた。
本枝さんが、紺の学を抱えてっていた。を休んでいたはずの彼女は、髪をきちんと結い、仕事用の掛けをしていた。
「写真をすって聞いたけど」
僕はちがった。
「はい。もう印刷も止めました」
「そう」
彼女は僕のに学を置いた。
「じゃあ、あの写真を枚だけ、ここに持ってきて」
「でも、見せたくないんじゃ……」
「見せたくないのは、あの説のままの私よ」
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枝さんは聞を広げた。切り取られたが、机のに現れた。
「この写真を見たは、私が縫えないとった。じゃあ、縫えないとったに、私の縫ったものも見てもらいたい」
彼女は学の袖を裏返した。丁寧な縫い目が並んでいる。
「ただし、条件がある」
会議が静まった。
「私の顔もも、勝に使わないこと。何をすか、私が最に決めること。それから、あの聞の説が違っていたと、同じ所にくこと」
さんが子からった。
「訂正をします」
「訂正だけじゃりない」
枝さんは彼ではなく、僕を見た。
「航君。今度は、私が見せたい写真を撮ってくれる?」
僕は答えようとして、彼女が抱えてきた学の内側に、もう枚のが仮留めされているのを見つけた。
さなには、注文主の名と納期がかれていた。そしてそのに、鉛でこう記されていた。
《このを受け取る子には、町ので俣だと言わないように伝えてください》
枝さんは、僕が文字を読んだことに気づいた。
「これも、今の俣なの」
僕は初めて、撮りたいものが目のにあるのに、どう撮ればいいのかわからなくなった。
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