"シャッターを切らなかった日" 第10話
倉庫のの町
の終わり、倉庫の展示が始まった。
入には恵子の字で《俣で暮らす――写真とことば》とかれたが掛かっていた。きな板ではない。に濡れたら替えられるように、を枠に挟んだだけだった。
初の朝、僕たちは誰も来ないのではないかと配していた。港へくからしれ、建物も古い。ところが、してほどすると、魚箱を抱えた男や買い物帰りの女性が、ぽつぽつと入ってきた。
最初にを止めたのは、さんの箱の写真だった。
「この箱、懐かしかね」
老が声をげると、さんが子からった。
「昔のがここにあったんよ」
「いや、あんたのはもう軒向こうだった」
「それは移ったあと。最初はこっち」
は写真ので面に指をらせ、見えないの通りを描いた。僕はその様子を撮りたくなったが、カメラは首に掛けたままにした。話しているのを、勝に切り取る必はなかった。
枝さんの写真のには、聞に載ったの写真と、しく撮ったの写真が並んでいた。の写真には、本がいた説を付けた。
《この写真は私の解なく聞に載りました。の状態だけを見て、仕事ができないと考えたがいました。私は今も注文を受け、を直しています。写真をすと決めたのは、私自です。
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》
そのには、学の袖直しの写真があった。針目がよく見えるよう、枝さんが位置を決めたものだ。
昼過ぎ、配の女性がそのでくち止まった。
「この、うちの孫のと似とるね」
枝さんは微笑んだ。
「似てるだけですよ。注文した方の名はしませんから」
女性は何度もうなずき、帰りにの所を控えていった。
僕は胸がくなったが、枝さんは僕の肩を軽く叩いた。
「件注文が増えたくらいで、全部元に戻った顔をしないで」
「……はい」
「でも、嬉しいのは嬉しいよ」
昼には、くの学がでやってきた。がの写真を見て「こんなに青いのに、どうして」と聞いた。さんは、魚を売っていた頃の話を始めた。僕は説しようとしてやめた。写真を見たが自分で疑問を持ち、町のが自分の言葉で答える。そのは、僕の説よりずっとく続いた。
午、父が来た。
作業ではなく、普段着だった。入で靴のを落とし、森田さんの作業の写真を見た。次にの排について説した資料のへき、い、文字を読んでいた。
「父さん」
声を掛けると、父は僕を見ずに言った。
「ここの文章は、誰がいた」
「公表されている資料をもとに、みんなで確認した」
「そうか」
父はそれだけ言い、奥へんだ。の責任を示す説ので、言い訳をしなかったことに、僕はし驚いた。
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そのとき、入で声がした。
「こんな写真を並べて、町の評判を落とすつもりか」
背広の男が、の写真を指していた。恵子が対応しようとすると、男は森田さんの作業のでち止まった。
「ほら見ろ。のだって被害者だと言いたいのか」
「そうはいてありません」
僕が言うと、男はで笑った。
「写真なんか、見たいように見えるんだよ」
その言葉に、僕は反論できなかった。まさにその通りだったからだ。
すると父が、男の横へ来た。
「見たいように見るなら、説も読んでからにしませんか」
男は父を見た。父は声を荒らげなかった。
「がしたことの責任は、ここにいてある。作業の写真には、そこで働くがいるといてある。どちらか片方を消したら、町の話にはならんでしょう」
男はしばらく黙り、最に何も言わずていった。
父もすぐ帰ろうとした。僕が追いかけると、倉庫のでち止まった。
「俺の写真は、まだ撮らんでいい」
「うん」
「だが、次の休みには、あの入の板を直しに来る。釘が浮いとった」
父は港の方へ歩いていった。
展示は、そのだけで終わらなかった。が写真のでち止まり、説にないことを話し、恵子がノートにきした。写真は完成品ではなく、話の始まりになっていた。
夕方、最の客が帰ったあと、僕は枚の空の台を見つけた。
そこにはまだ、写真も言葉も貼られていない。
恵子が言った。
「これ、誰かが断った所じゃないよ。これから話したいのために、空けてあるの」
僕はその空を、初めて希望のあるものとして見た。
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