"シャッターを切らなかった日" 第13話
注文を取るための写真
になると、枝さんのにさな変化が起きた。
阪の学から話を聞いたという女性が、郵便での直しを頼んできたのだ。最初は着のスカートだった。仕がりを気に入った女性は、友にもを紹介した。
「郵便で仕事が来るなんて、考えたことなかった」
枝さんは嬉しそうだったが、同に困っていた。くのは、どんな直しができるのかをらない。採寸の仕方も、料もわからない。
「写真がるんじゃないですか」
僕が言うと、彼女は笑った。
「今度は、ちゃんと役につ写真を撮ってよ」
僕たちは商売のためのさな案内を作ることにした。袖直しのと、裾の縫い目、ボタン付けの見本。布を平らに置き、物差しを添えた。の顔もも写さない写真ばかりだった。
岸本の親方は、印画を無駄にするなと言いながら、照の置き方を教えてくれた。いを当てると、黒い布の縫い目がつぶれる。横から柔らかく照らすと、糸の線が見える。
最初の試し刷りは失敗した。黒い布の縫い目が真っ黒につぶれ、直すとの違いがわからなかった。枝さんは「これじゃ、うちの仕事がに見える」と笑った。僕は撮の角度を変え、布のにいを敷いた。何度も撮り直した末に、糸の本本が見える写真になった。
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今度は見るに必な報が、ちゃんと写っていた。
「撮りたいものが決まってる写真は、と難しいんだ」
親方はそう言った。
完成した案内には、枝さん自が料をいた。僕はそのにの所を入れた。以なら、所を隠すことばかり考えていた。今回は本が、仕事の注文を受けるために載せると決めたのだ。
写真を渡すと、枝さんは枚ずつ指で確かめた。
「これなら、お客さんも縫い目を見られる」
「僕の名は入れなくていいですか」
「入れたいの?」
し考えて、僕は首を振った。
「の案内ですから」
彼女はうなずいた。
案内を見たから、袖丈をどこから測ればいいのかという質問が届いた。枝さんは僕に、物差しを当てる位置も撮ってほしいと頼んだ。僕たちは古い着を着借り、肩の縫い目から袖までを測る写真を追加した。注文するが違えないように、数字をき込む欄も作った。見栄えのいい写真だけでは、くの客と仕事はできない。相が困るところまで考えて初めて、写真は具になるのだとった。
ところが、案内を配り始めた頃、所の仕てから苦が来た。枝さんだけが聞や支援者の力で仕事を集めているように見えるという。
枝さんは僕に、案内を持って隣町のへこうと言った。
「緒に受けられる仕事があるかもしれない。
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うちだけじゃにわない注文もてくるから」
僕は付き添った。最初、相の主は腕を組んでいたが、枝さんが実際の縫い目を見せると、しずつ話が変わった。
「学ならうちもできる。けど、婦の細かい直しはあんたの方がい」
「じゃあ、頼みおう。できない仕事を抱えて、お客さんを困らせるよりいい」
は料表を並べ、互いに紹介できる仕事をきした。
帰り、僕は枝さんに聞いた。
「写真を撮らなくても、注文は増えたかもしれませんね」
「そうかもね。でも、あの写真があったから、話を始められたのも本当よ」
彼女は袋を持ち直した。
「写真って、見るを泣かせるためだけにあるんじゃないでしょう。ちゃんとした仕事を頼んでもらうためにも使える」
僕はその、暗で初めて、自分の撮った縫い目の写真を見て嬉しくなった。
聞の面には載らない。賞も取れないだろう。それでも、誰かがこの写真を見て、を直そうとう。僕にはそれが、以よりずっときな仕事にえた。
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