"死んだ母を名乗る女" 第16話
暴かれた余罪と因果応報の判決
パトカーがった、実のリビングに、私と池田親子、そして駆けつけてくれた伊藤刑事の部が残された。 散乱していた庭の砂利を掃き清め、居の掃きし窓を閉めると、ようやく胸の奥につかえていた黒い鉛のような塊が、ゆっくりと溶けていくのをじた。
「美咲さん、本当にお疲れ様でした。怖いいをさせてしまいましたね」 池田文彦氏が、温かいお茶のペットボトルを私の元に差ししてくれた。 「いいえ……池田社、そして義親さん。おのご協力がなければ、私は今もあの根裏の気配に怯え、母の遺品を汚され続けていたはずです。本当に、ありがとうございました」 私が々とをげると、義親は照れくさそうに笑いながら、ポリポリと頬を掻いた。 「いや、俺はただ、郵便配達員として当たりの仕事をしただけですよ。審な郵便の受け渡しを見過ごすわけにはいきませんから」
それから数週のに、所轄警察署での取り調べによって、叔母と川島の悪事の全容が次々とらかになっていった。 まず、川島秀について。 伊藤刑事の見て通り、週に実の窓ガラスを割り、財を物しようとした空き巣の犯は川島本だった。 叔母から『実のどこかに、くなった姉のへそくりや貴属が隠されているはずだ』と唆され、に困った川島が実犯として侵入したのだという。
広告
建造物侵入および窃盗未遂の容疑が確定し、さらに過の寸借詐欺の余罪も発覚した川島は、起訴されて実刑判決を免れない見通しとなった。
そして、千恵子叔母。 取り調べの当初は『親族の銭トラブルだ』と喚き散らして否認を続けていた叔母だったが、義親が提した決定な証拠画、跡鑑定の結果、そして何より池田文彦氏による厳格な告訴状のに、すべての罪を自せざるを得なくなった。 母のを図に隠蔽し、百万円もの現を騙し取った詐欺罪。 さらに、実への居侵入、そして母の葬儀での典窃盗。
文彦氏は、母への敬から過度な極刑こそ望まなかったものの、法な処罰の免除には切応じなかった。 検察による起訴の結果、叔母には懲役ヶ、執猶予の罪判決がされることとなった。 刑務所への収監こそ辛うじて猶予されたものの、叔母を待ち受けていたのは、以よりも遥かに過酷な現実だった。
罪判決の記録が親戚、そして関係のすべてにれ渡り、叔母は完全に親族ネットワークから追放された。 誰として連絡を取る者はおらず、保証を見つけることすら能なのとなった。 抱えていた百万円の借は、民事訴訟を通じて自己破産の申してをうこととなったが、浪費と詐欺による借であったため免責が認められるかも怪しく、過酷な返済義務と世のたい目に晒されながら、寄りのない孤独な活を送ることになったのだ。
悪いいは、必ず自分に返ってくる――。 の母が語っていた言葉が、あまりにも正確な形で、叔母ののにり注いだのだった。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護2.6万字5 0 -
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 5 -
完結第16話
75万円を借りに来た私に、銀行が告げた65億円の秘密
十四年間、洋服直しの仕事を続けてきた石田牧は、自分の店を開くため、不足する75万円を借りに銀行を訪れた。ところが支店長から告げられたのは、自分に約65億円の信託財産があるという信じがたい事実だった。亡き母は大手物流会社の創業家の娘だったという。なぜ母は貧しい暮らしを選び、巨額の財産を隠し続けたのか。戸惑う牧の前に、初対面の叔父が現れ、21億円で株式を買い取ると申し出る。突然手にした財産の裏には、家族が長年隠してきた秘密と思惑があった。真実|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 447 -
完結第20話
宅配箱を盗む隣家の子…餌を入れた翌朝、母親が激怒
ペットショップを営む榊哲也の家で、宅配ボックスから荷物が次々と消える。近所の目撃情報が指したのは、隣家の小学五年生・航太。しかし母親の千晶は「子どもを疑うな」と哲也を非難し、町内に悪い噂まで広め始める。哲也は自分宛ての荷物に店で扱う乾燥コオロギの餌を入れ、防犯カメラで行方を確かめることに。すると映像には、少年の行動以上に不可解な親子のやり取りが残されていた。さらに消えた荷物を追ううち、地域の見守り活動に関わる不自然な書類まで浮かび上がる。小さな宅配トラブルの裏に、何が隠されているのか。怒り|真相|修羅場2.8万字5 372 -
完結第17話
忘れたコートが教えてくれたこと
結婚式まであと3週間。高橋ゆいは婚約者・博人の実家に忘れたコートを取りに戻り、衝撃的な会話を耳にする。食卓に広げられていたのは、祖母から相続した自分のマンションを、博人の実家が営む会社の追加担保にする計画書だった。しかも本人への説明は「婚姻後1週間」の予定。14人の従業員を守るためだと訴える婚約者の母と、すべてを知りながら黙っていた博人。人生逆転|裡切られた|夫婦|真相|修羅場2.0万字5 0 -
完結第20話
シャッターを切らなかった日
昭和46年、水俣。写真館で働く17歳の村瀬航一は、町の現実を新聞に伝えようと、仕立て屋の橋本夏枝にカメラを向ける。しかし、彼女から「撮らないで」と拒まれた後、以前撮った手の写真が本人の了承なく新聞に掲載されてしまう。その一枚は夏枝の仕事と暮らしに思わぬ影響を及ぼした。工場で働く父、被害を訴える住民、善意で支援する人々。それぞれの事情に触れるなかで、航一は問い始める。人の苦しみを伝えることと、その人の人生を勝手に語ることは、同じなのだろうか。激動の昭和を背景に、写真と人間の尊厳を描く物語。時代|歴史|昭和|真相2.7万字5 38 -
完結第12話
消えた路地の矢印
昭和39年、東京オリンピックを目前に控え、東京の街は急速に姿を変えていた。23歳の標識職人・黒田俊も、新しい道路の案内板を作る仕事に追われていた。ところが工事によって古い路地が封鎖され、診療所へ通う老人や商店の人々が行き場を失い始める。立ち退きを迫られる活版所の親子、変わり続ける迂回路、そして正しいはずの標識に迷わされる人々。時代|歴史|昭和|真相|修羅場2.8万字5 31 -
完結第10話
手取り23万円の俺、旅館で妻が「お嬢様」と呼ばれた
手取り月23万円のトラック運転手・中村和也は、妻の彩佳と娘の結衣を何よりも大切にしていた。幼い頃、亡き父と交わした温泉旅行の約束を果たすため、毎月五千円を五年間積み立て、ようやく三十万円を貯める。結婚記念日に彩佳が選んだのは、山奥に佇む名門旅館「月影楼」。質素な暮らしの自分たちには場違いに思えたが、玄関に到着した途端、従業員が彩佳に深々と頭を下げた。「お嬢様、お帰りなさいませ」。妻が長年隠してきた過去とは何なのか。家族への愛と、思いがけない運命の再会を描く物語。人生逆転|夫婦|第二の人生|親子関係2.4万字5 1493 -
完結第12話
昭和46年、三日で逃げ帰った兄と消された就職記録
昭和46年、十五歳の正男は集団就職で東京へ向かった。しかし三日後、傷だらけで村に戻り、母に「家族を捨てるのか」と責められて家を追われる。それから26年。妹の美枝は、駅の記念展示を準備する中で、兄と一緒に旅立った少年三人の就職先が書き換えられた写真を発見する。約束された工場に入っていなかった少年たち、燃やされた契約書、口を閉ざす大人たち。なぜ兄は、次の就職列車を止めようとしたのか。長く「逃げ帰り」と呼ばれた帰郷の理由を、妹が追い始める。時代|歴史|昭和|絶縁|親子関係2.7万字5 221 -
完結第12話
昭和39年、給食費泥棒にされた少女
昭和39年、村の小学校で給食費9,600円がなくなったと騒ぎになり、11歳の岸田和子は担任から泥棒だと決めつけられた。無実を訴えても信じてもらえず、和子は転校を余儀なくされる。それから35年。廃校となった母校で古い出納簿を見つけた和子は、問題の給食費が事件の二日前に全額入金されていたことを知る。なぜ教師は、なくなっていないお金を盗んだと少女を責めたのか。食数の合わない給食記録、突然退職した調理員、沈黙する元同級生。忘れられた帳簿を手がかりに、和子は35年間隠されてきた学校の秘密を追い始める。時代|歴史|昭和|真相3.1万字5 383