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"「祖母が危篤」と10万円を求めた夫の大嘘" 第14話

畑から港へ

達夫さんに会ったのは、の初めだった。港の作業には氷の入った箱が積まれ、靴を履いたたちが魚を仕分けていた。私は母に双子を預け、幸と松さんに同した。達夫さんは代半ばで、焼けした顔にいしわがあり、初対面の私へ丁寧にをげた。「話は聞いています。仕事のことは、本に確認します」。

「漁に乗ればすぐが稼げるとっているなら、帰ったほうがいい」。達夫さんは最初にそう言った。未経験者はまず揚げの伝いや加の仕事から覚え、に乗るなら全講習や健康状態の確認も必だという。候で仕事量が変わり、朝勤務もある。期の航へる話は、経験を積んだあとでなければ考えられない。

幸は黙って聞いていたが、「料はどれくらいですか」と尋ねた。達夫さんは基本と当の目を説し、実際の取りは働き方や季節によって変わると話した。今の仕事より必ずいとは言えない。ただ、繁忙期にきちんと働けば収入を増やす余はある。私は条件をき留めながら、簡単ななどないのだとった。

達夫さんは、港で働くたちのを見せてくれた。傷を防ぐための袋、濡れたで滑らない靴、作業に確認する図。力任せに働けばいいわけではなく、仲のきを見て危険を避けなければならない。

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「のためだけで来るなら続かない。自分の体も、周りのの体も守る仕事だから」。幸は黙ってうなずき、その言葉を帳にいていた。

作業を見せてもらうと、魚の入った箱を運ぶだけでも相当な体力が必だった。幸が持ちげようとして、腰を落としたまま止まった。達夫さんは笑わず、「無理な持ち方をするな。腰を壊したら働けない」と言い、正しい姿勢を教えた。私はそのやり取りを見て、夫が初めての指示を素直に聞いていることに気づいた。

昼休み、達夫さんは私へ「族を養うためにへる、と格好よく言うもいるけどね」と話した。「は借を消してくれる所じゃない。働いた分だけが入る、それだけです」。私はその言葉にうなずいた。夫に必なのは厳しい罰でも奇跡でもなく、毎働いて責任を果たすことだった。

帰り、幸は窓のを見ながら「怖いな」と言った。私は「無理に決めなくていい」と答えた。夫はしばらく黙ったあと、「でも、今のままじゃ返済が終わらない」とつぶやいた。私は「収入が増えるならいいけど、続けられるかも考えて」と伝えた。彼が仕事を変える理由を、私への見せかけの謝罪にしてほしくなかった。

週、幸は達夫さんへ自分で連絡し、期の試用勤務を申し込んだ。現の会社にも退職を急がず、就業規則と引継ぎを確認したうえで相談した。

松さんは「今度は仕事を辞めるに話したんだね」とだけ言った。以の夫なら、そのの勢いで会社を辞め、あとから困っていただろう。さな違いだが、私は覚えておくことにした。

試用勤務の初、幸は夜けに発した。松さんから『起こさなくてもに起きたよ』と連絡が来た。私はのミルクを温めながら、そのい文を読んだ。夫が働くことは当然だ。それでも誰かに命じられたからではなく、自分で起きてかけたという事実は、なくとも以の彼とは違っていた。

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