"忘れたコートが教えてくれたこと" 第17話
私の順番
恵美と別れたあと、私はで自宅へ向かった。
駅をると、の夜が頬に触れた。
と同じ季節。
同じコート。
でも、
歩いている私は違っていた。
自宅の玄関に着き、
バッグから鍵をす。
鍵を回す。
扉をける。
誰かが決めたではない。
誰かの会社を守るための担保でもない。
祖母が残し、
私が守った、
私の活だった。
気をつける。
さなダイニング。
ソファー。
読みかけの本。
母と旅したに買った湯呑み。
どれも派なものではない。
でも私は、この部が好きだった。
コートをハンガーへ掛ける。
今度は忘れないように、
ポケットから財布と鍵をした。
その、
ふと笑ってしまった。
以、
博は言った。
《ゆいのものなんだから、ゆいが決めればいい》
あの言葉だけは、
結果に正しかった。
私のものだから、
私が決めた。
マンションを担保にしない。
結婚しない。
自分のおを誰に使うか。
誰と族になるか。
何を許し、
何を許さないか。
全部、
私が決めた。
幸子さんや博が悪い未来を迎えることを願っているわけではない。
会社はさくなって続いている。
幸子さんもしいまいで活している。
博も自分の料で自分の族を支えている。
それでいい。
彼らは彼らのを、
自分たちの責任できればいい。
私は私のを、
自分の責任できる。
広告
もう交わる必はない。
キッチンで湯を沸かし、
コーヒーを入れた。
窓辺につ。
には、のの灯りが広がっている。
の私は、
を失ったとっていた。
今はし違う。
失ったものもある。
でも、
取り戻したもののほうがきかった。
自分の。
自分のお。
自分の答え。
そして何より、
自分のを決める順番。
結婚とは、
先に決めた未来へ相を追い込んでから、
最に同だけを求めることではない。
本当なら、
切なことほど最初に話すべきだった。
相が「嫌だ」と言う能性も含めて、
緒に選ぶべきだった。
博には、
それができなかった。
だから私は、
あの夜、
婚約指輪をした。
コートを忘れたことで戻ったで、
私は結婚を失ったのではない。
誰かに決められかけていた未来から、
自分のを取り戻した。
私は温かいカップを両で包み、
静かな部のでんだ。
もう、
誰かに「断っていい期」を決めてもらう必はない。
私の答えは、
私が決める。
私のなのだから。
広告
おすすめ作品
-
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 28 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 65 -
完結第22話
「祖母が危篤」と10万円を求めた夫の大嘘
双子を出産してわずか3週間。看護師の雪乃は、夫の幸一から「祖母が危篤だから10万円ほしい」と頼まれる。ところが本人に電話すると、83歳の松江は畑仕事の真っ最中。「またあの子は私を死にかけにしたのかい」と呆れた声を上げた。夫の嘘をきっかけに、雪乃は生活費の口座から多額の貯金が消えていることに気づく。祖父母と孫|夫婦|第二の人生2.8万字5 163 -
完結第15話
3年眠った財閥社長を叩き起こした3歳の道士
3年間、意識不明のまま眠り続けていた財閥総帥・陸晏蕭。医師たちが命を諦めかけた瞬間、病室に飛び込んできたのは、峨眉山で修行した3歳の天才道士・沈兮兮だった。少女の強烈な平手打ちで奇跡的に目覚めた晏蕭は、彼女が自分の娘だと知って愕然とする。しかし兮兮は「パパなんていらない!」と完全拒絶。占いや不思議な術で周囲を驚かせる少女に、冷徹だった父親も少しずつ心を動かされていく。やがて3年前の事故に隠された陰謀と、少女が山を下りた本当の理由が浮かび上がり……。人生逆転|祖父母と孫2.1万字5 89 -
完結第20話
死んだ母を名乗る女
母を亡くして二年。三十歳の浅沼美咲は、空き家となった実家を片付けている最中、郵便配達員から思いがけない言葉を告げられる。「先月もお母様にお会いしましたよ」。亡くなったはずの母を名乗り、郵便物を受け取っている女がいるというのだ。家の中に残された生活の痕跡、天井裏から聞こえる不審な物音、そして母宛てに繰り返し届く現金書留。兄とともに調べ始めた美咲は、疎遠だった叔母の影と、母の遺産をめぐる不穏な思惑に気づく。死者の名を使ってまで隠そうとした秘密とは。真相|親子関係2.3万字5 246 -
完結第20話
シャッターを切らなかった日
昭和46年、水俣。写真館で働く17歳の村瀬航一は、町の現実を新聞に伝えようと、仕立て屋の橋本夏枝にカメラを向ける。しかし、彼女から「撮らないで」と拒まれた後、以前撮った手の写真が本人の了承なく新聞に掲載されてしまう。その一枚は夏枝の仕事と暮らしに思わぬ影響を及ぼした。工場で働く父、被害を訴える住民、善意で支援する人々。それぞれの事情に触れるなかで、航一は問い始める。人の苦しみを伝えることと、その人の人生を勝手に語ることは、同じなのだろうか。激動の昭和を背景に、写真と人間の尊厳を描く物語。時代|歴史|昭和|真相2.7万字5 52 -
完結第12話
消えた路地の矢印
昭和39年、東京オリンピックを目前に控え、東京の街は急速に姿を変えていた。23歳の標識職人・黒田俊も、新しい道路の案内板を作る仕事に追われていた。ところが工事によって古い路地が封鎖され、診療所へ通う老人や商店の人々が行き場を失い始める。立ち退きを迫られる活版所の親子、変わり続ける迂回路、そして正しいはずの標識に迷わされる人々。時代|歴史|昭和|真相|修羅場2.8万字5 37 -
完結第10話
手取り23万円の俺、旅館で妻が「お嬢様」と呼ばれた
手取り月23万円のトラック運転手・中村和也は、妻の彩佳と娘の結衣を何よりも大切にしていた。幼い頃、亡き父と交わした温泉旅行の約束を果たすため、毎月五千円を五年間積み立て、ようやく三十万円を貯める。結婚記念日に彩佳が選んだのは、山奥に佇む名門旅館「月影楼」。質素な暮らしの自分たちには場違いに思えたが、玄関に到着した途端、従業員が彩佳に深々と頭を下げた。「お嬢様、お帰りなさいませ」。妻が長年隠してきた過去とは何なのか。家族への愛と、思いがけない運命の再会を描く物語。人生逆転|夫婦|第二の人生|親子関係2.4万字5 1516