"昭和62年、国鉄最後の日に駅弁を一つ売らなかった理由" 第14話
個の違い
、私は初めてきな失敗をした。
へ届けた個のうち、個に、頼まれていた献と違うおかずが入っていたのだ。の残業班向けの試作と、昼弁当の準備を同じ棚に置き、容器の札を付け替え忘れた。
「べられないものじゃないけど、注文した内容と違うのは困るわ」
井さんは話で言った。
私はすぐにへ向かった。謝って、代をその分返し、次から同じ違いをしないための確認方法を説した。
の堂では、もう午の仕事に戻るたちが子を片付けていた。私の顔を見て、何かが気まずそうに目を逸らした。誰も鳴らない。そのことがかえってつらかった。
「今度から気をつけてくれればいいのよ」
が言った。私はその優しさに甘えたくなったが、首を振った。
「気をつけるだけでは、また同じことをします。作るに、注文と箱をで確かめるようにします」
言葉にして初めて、私の仕事はの勘だけで続けられないのだと分かった。
「気をつけます、だけじゃりないの」
井さんは厳しかった。
「誰が見ても分かるようにして。私が休んだでも、別のが受け取れるように」
私は頷いた。これまでの宮原のでは、私が全部っていればよかった。客の好みも、駅員の勤務も、仕込みの順番も、のに入っていた。
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だがしい仕事では、私がいないときにも違わずにかなければならない。
帰宅すると、美さんが作業台のにさなを並べていた。
《昼・鶏そぼろ》《昼・野菜》《夕・鶏めし》
それぞれのにをつけ、注文票と同じの紐を箱に掛けるという。
「これなら、フミさんも私も迷わないとうんです」
「よく考えたね」
「娘の保育園で、履きの箱を分けしてるんです。字が読めない子も分かるから」
私は笑った。
「保育園の先に教わったみたいね」
美さんはし照れた。
「それから、の勤務のことなんですけど」
私は息を止めた。
「朝い仕事が減るなら、私、午の包装と話番をやりたいです。娘を送ってから来られるので」
「うちに残ってくれるの?」
「残れるなら。だけど、お料とを先に決めてください。曖昧なままだと、保育園にせないから」
私は美さんの言葉を、頼もしいとった。以なら、従業員に条件を言われると寂しくじたかもしれない。今は違う。働くが自分の暮らしを守ろうとするのは、当然のことだ。
その晩、私たちはからの仕事を仮に分けた。フミさんは午の調理を週、美さんはから午までの包装と注文管理。良治は配達計画と買いし。私は調理と取引先との話しいを受け持つ。
「料を払えるだけの注文が、まだないだろ」
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良治が言った。
「だから、かだけの見通しで約束しない。か分の費用をしてから決める」
誠は計算を伝った。無理な数字を入れると、すぐに赤鉛で消した。
「母さん、駅の売をの計画に入れちゃだめだ。ゼロから考えよう」
私は赤い線を見つめた。
、駅があることを提にしてきた。そこをゼロにすると、残るものがない。
それでも、の注文、役の予約、夕方の残業班、で受け取る所の客があった。
ゼロではなかった。
翌朝、私は井さんにもう度話した。
「昨の件、本当に申し訳ありませんでした。しい確認表を作りました。次の注文で、もう度試していただけますか」
井さんはしを置いて言った。
「いいわ。ただし、次に同じ違いがあったら、しばらく休んでもらう」
私はくをげた。受話器の向こうには見えない。それでも、そうせずにはいられなかった。
信頼はかけて作っても、次ので失うことがある。
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