みかん小説
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"大正、子守奉公の少女" 第8話

銭の遣い

京の敷をいくつか渡り歩くうち、私は仕事を覚えるのがくなった。最初に台所のを確かめ、を使う所と器をしまう棚を覚える。女主が何を好み、何を嫌うのかは、言葉より卓の様子から分かることもあった。

塩をすにはをめにし、い茶を好むには湯呑みを温めておく。さな気づきが、次のでも私を助けた。

奉公先のが「よく気がつく娘だ」と言ってくれると、嬉しかった。けれど、そう言われるたびにしい用事が増えることもっていた。誰かが休めば代わりに台所へ入り、客が増えれば夜まで皿を洗う。

働けることを認められるのと、休むことを認められるのは、別の話だった。

遣いをもらえるもあった。銭ほどの貨をにすると、私は指で何度も縁をなぞった。先の菓子や髪に挿すさな飾りを買うこともできたが、ほとんどは貯めて実へ送った。母がで「ありがたい」といてくれると、それだけで満したつもりになれた。

元に残るのは、の封筒と、次のまでの数だった。

度、通りのでさな鏡を見つけたことがある。縁にの模様がついていて、掌に収まるほどのきさだった。値段を聞き、買えることを確かめてから、私はしばらく先にっていた。鏡があれば髪をえるときに便利だろう。

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しかし同じで実の弟に何が買えるかとうと、を伸ばせなかった。結局、そのは何も買わずに帰った。

あるの暮れ、実から弟の仕事が決まったとらせがあった。私は嬉しくて、いつもよりしくを送ろうとした。すると緒に働く女が「自分の袋も買いなさい。穴がいているよ」と言った。

私は元を見た。毎見ていたはずなのに、継ぎ当てが擦り切れていることに気づかなかった。

その、私は送るをし減らし、丈夫な袋を買った。のが寸法を確かめてくれたので、帰りの取りが軽かった。母にを送ることと、自分がも働けるようにすることは、どちらも必なのだろう。そう考えられたのは初めてだった。

帳面には送の額の横に、袋代もいた。自分のために使ったを、ろめたくわずに記してみたかった。

私の化粧具は鹸だけだった。顔を洗い、髪をまとめ、着物の襟をえる。それ以のことをする暇ももなかった。敷の若いお嬢様がりのよい油を髪につけているのを見ると、きれいだとったが、羨ましいと言葉にしたことはない。

羨ましいと認めたら、欲しいものが増えてしまいそうだった。

実からのには、季節ごとの畑の様子がかれていた。私は字を全部読めなかったので、同じ奉公先の女に頼んで読んでもらうことがあった。

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母の言葉をのから聞くのは、し変な気分だった。返事をくときも、簡単な文を教えてもらって写した。

のでだけは、派な娘でありたかった。

ある夜、女仲が「いずれは嫁にくんでしょう」と尋ねた。私は答えに困った。嫁にけば自分のが持てるのか、それともまた別ので働くことになるのか、像がつかなかったからだ。

今まで私のき先を決めてきたのは、親や兄や奉公先のだった。自分のために何かを選ぶという考えは、いの話のようにじられた。

それでも、私はさな帳面を冊買った。覚えた仕事の順番と、送ったの額をき留めるためだった。読めない漢字は音を聞いて印をつけた。誰に見せるわけでもない帳面だったが、私がどこで何をしてきたか、私自がっていたかった。

からへ移っても、帳面だけは荷物の底からさずに持ち歩いた。

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