"夜勤明けに鍵を替えられた私" 第14話
友達のままで
健太とは、に度くらい会うようになった。喫茶で昔の話をしたり、くの公園を歩いたりする。彼は私の仕事の愚痴を聞き、私も彼の況を聞く。お互いの話を遮らず、答えを押しつけない。そんな会話がよかった。
ある、健太が「また会いたい」と言った。私はし考えてから、「友達としてなら、もちろん」と答えた。彼は残そうに笑ったが、「分かった。急がせるつもりはないよ」と言った。
私は再婚を考えていなかった。婚してやっとの活に慣れてきたところだ。誰かと暮らすことを、今すぐ望んでいない。健太はその気持ちを尊してくれた。
仕事では、護部から教育の改善案を任された。真帆たちと緒に、夜勤の相談やが困ったに話せる担当者の仕組みを作った。しずつだが、若い護師が辞めるに相談してくれるようになった。
「千歳さんに話してよかったです」
そう言われると、私は嬉しかった。相の気持ちに寄り添うことは、相の代わりにを決めることではない。今ならそれがよく分かる。
健太と会うも、自分の仕事も、どちらも私が選んでいる。誰かに許をもらわなくてもいい。そうえるようになったことが、婚の番きな変化かもしれなかった。
健太とは、休みがうに会うようになった。
広告
喫茶で話すこともあれば、駅を歩くこともある。彼は私の仕事を詳しくらないので、病棟の話をすると何度も質問した。私は患者さんの個報に触れない範囲で、護師としてじていることを話した。
彼は自分の話もした。仕事を辞めた期があり、元に戻るまで迷っていたこと。族の介護を伝っていたこと。には、い通りにまない期がある。そう言う彼の声には、変にを励まそうとするじがなかった。
ある、健太は「また来週も会えたら」と言った。私は、再婚を考えていないことを先に伝えた。彼はし驚いたあと、「友達としてならいい?」と聞いた。私は「それなら歓迎」と答えた。
彼は私の返事を急かさず、次の約束だけ決めた。その帰り、私は自分が誰かと会うことを楽しみにしていると気づいた。再婚の気持ちがなくても、とのつながりを持っていい。そうえるようになった。
健太から「友達としてなら」と言われた、私は彼を傷つけていないかし配になった。けれど彼は、次に会ったもいつも通りだった。私が再婚を望んでいないことをって、態度を変えることはなかった。
私は、結婚活のことをしずつ話した。彼は助言をしようとせず、聞いたに「変だったね」と言った。私はその言葉に救われた。
広告
何かを決めるに、正解を教えてもらう必はない。ただ、自分の気持ちを聞いてもらえるだけでいいもある。
彼に頼りきりにならないよう、私は自分の予定を優先している。健太も自分の仕事や暮らしを持っている。そので会えるに会う。それが今のにはちょうどよかった。
彼と会った、私は自分の気持ちを確かめた。楽しいとう。でも、今すぐ恋になりたいわけではない。どちらも本当の気持ちだった。急いで名をつけなくても、関係は続けられる。
健太と会う、私はいつも帰るを先に決めている。夜勤ならだけ、休みのなら夕方まで。彼はその約束を守り、もうし緒にいようと無理に引き止めない。以の私は、相を嫌にさせないために予定を変えることがあった。今は、自分の予定を伝えても関係が壊れないと分かってきた。
ある、健太は「いつか気持ちが変わることがあれば教えて」と言った。私は「そのはね」と答えた。今の気持ちは、友達として会うのが楽しいということ。それ以でも、それ以でもない。健太は「分かった」と笑った。
恋かどうかを決めなくても、と過ごすは切にできる。私は自分の気持ちに急いで名をつけず、今の関係を楽しむことにした。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
3年ぶりの帰省、弟嫁がゴミ箱を漁っていた理由
32歳の玲奈は、3年ぶりに実家へ帰り、弟の妻・南が別人のように痩せていることに驚く。夕食の席でも南の前には料理がなく、家族は誰も気に留めない。その深夜、台所で物音を聞いた玲奈は、ゴミ箱を漁る南の姿を目撃する。「食べられるものを探していました」――その言葉をきっかけに、母と弟が南に強いていた異常な暮らしが明らかになっていく。さらに、南が隠し持っていた手帳には、翌朝に迫る恐ろしい約束が記されていた。玲奈は弟嫁を守るため、信じていた家族と向き合う決意をする。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|修羅場2.4万字5 14 -
完結第11話
新婚初夜の裏切り
結婚式を終えた夜、美香はホテルの浴室から、夫の健太が自分のバッグを探る姿を目撃する。持ち去られたのは、父から贈られた1億円の預金口座のキャッシュカードだった。翌朝、健太は「弟の用事がある」と言ってホテルを出ていく。以前から義母と義弟は、8800万円の新居を欲しがっていた。まさか、私のお金で家を買うつもりなの? 夫を問い詰めず、黙って様子を見る美香。やがて不動産会社から、思いもよらない電話がかかってくる。結婚初日に露わになる夫の本性と、美香が密かに用意していた対抗策とは。兄弟姉妹|夫婦|ATM扱い|金銭問題1.8万字5 10 -
完結第10話
もやしと消えた仕送り
フリーランスのデザイナーとして働く里見は、一人暮らしの母・春江に毎月10万円を仕送りしているつもりだった。ところが、久しぶりに訪ねた実家で目にしたのは、冷やご飯ともやしだけの寂しい食卓。母は仕送りなど一度も受け取っていないと言う。家計を任せていたのは、優しく頼りになる夫の久し。疑念を抱いた里見が夫のスマホを確かめると、そこには信じがたい送金記録と、妻をあざ笑うメッセージが残されていた。さらに、夫が隠していた給与明細にも不可解な数字が……。信じていた家族の裏切りを知った里見の反撃が始まる。裏切られた|嫁姑|親子関係|金銭問題1.5万字5 33 -
完結第10話
「中卒女に現場は無理」職人10人が辞めた結果
中学卒業後、十五歳で職人の世界に飛び込んだ堀江千夏。三十二歳で工務店の現場責任者に抜擢されるが、古参の職人頭・岩木は「中卒の女に現場が回せるか」と嘲笑う。やがて岩木を含む十人が一斉に退職。大型介護施設の改修工事は納期目前なのに、残された職人はわずか三人だった。しかし千夏には、十七年間積み重ねてきた技術と、二十冊を超える黒い手帳があった。仲間とともに現場の立て直しに挑む千夏。その一方で、手帳に記された資材の数字が、会社に隠された不審な事実を浮かび上がらせていく。職場逆転|因果応報|人生逆転|修羅場1.3万字5 28 -
完結第20話
夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転
夫・達也の専務昇進を喜んだ美桜。ところが父に報告すると、返ってきたのは祝福ではなく、「財産をすべて母さんの名義に移しなさい」という不可解な指示だった。昇進を境に夫は横柄になり、義母まで豪邸と通帳を自分たちのもののように扱い始める。さらに、高額な宝石の領収書や会社の不審な資金移動が見つかり、美桜は夫の裏の顔を知っていく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.5万字5 24