"正月の高級焼肉、嫁の席だけ外した義母の誤算" 第3話
赤坂の夜と穏なグループ通
万円を支払ったあの正が終わってから、丸。
の夜、私がリビングのソファで乾いた洗濯物を畳んでいると、テーブルののスマートフォンがく震えた。
義母が結婚当初に作った、義母、直子さん、夫、そして私のだけのグループメッセージだった。普段は正の買いしの連絡くらいにしか使われないそのグループに、義姉の直子さんから突然メッセージが投げ込まれた。
『今はお寿司じゃなくて、みんなで焼肉にしない?』
すぐに義母の返信が続いた。
『いいわね! たまにはでお肉も華やかでいいわ』
直子さんがさらに画面のリンクを貼り付けてきた。
『せっかくだから、ちょっといいおにしようよ! ここ、個もあるしお正からやってるみたい』
隣に座っていた夫と緒に、画面を覗き込んだ。
紹介されていたのは、赤坂にある級焼肉だった。数で使える完全個があり、正から営業しているらしい。メニューの番にスクロールしていくと、コース料理の詳細が載っていた。
『正特選コース:極希部位盛りわせ、特選タン、締め麺付き お様 28,000円(税・サービス料込)』
「……に、万千円!?」
私はわず声をげてしまった。夫も目を丸くして、画面の数字を指でなぞっている。
広告
「これ、子どもも含めてくったら……肉だけで万超えるぞ。そこにお酒代が入ったら体いくらになるんだ……?」
の寿司とは桁が違っていた。
けれど、揺する方で、私の胸の奥にさな希望が灯ったのも事実だった。
(のおでべるなら……今はお煮しめの鍋の番をしなくていいのかな。台所でで皿洗いをしながら、座敷の笑い声を背で聞かなくて済むのかもしれない……)
毎、親戚たちが帰ったの夜過ぎ、がらんとした台所でめたご飯をでかき込んでいたあの惨めさから解放される。みんなと同じテーブルに座って、温かいお肉をべられるかもしれない。
そううと、万千円という法な額さえ、どこか救いのようにえてしまったのだ。
夫はしばらく画面を見つめた、慎にメッセージを打ち込んだ。
『結構いね。今は各庭でそれぞれ払うじ?』
既読の数字がすぐに「3」になった。
返ってきたのは、直子さんの能気な言だった。
『細かいことは当決めればいいじゃん!』
続けて義母からもメッセージが届く。
『せっかくのお正なんだから、野暮なおの話ばっかりしないの!』
それきり、やり取りは途絶えた。夫の質問に対する確な答えは、何つ返ってこなかった。
夫は苦笑いをしながらスマホを膝のに伏せた。
広告
「まあ……当決めればいいか。母さんから額を指定されたら、いつも通り予算の範囲ですし、言われなきゃうちの分だけ払えばいいだろ」
夫はそう言ってタオルを畳み始めたが、私の胸のざわつきは収まらなかった。
過、義母はに入ると真っ先に「今は万」「今は万」と額を指定してきたのだ。もって言われた分だけすというがのルールを、義母なりに逆に取っていたはずだった。
それなのに、万千円もする級にくに限って、額を言おうとしない。それどころか「おの話をするな」と煙に巻こうとしている。
その夜遅く、直子さんから『予約取れた! 、半から個で名ね!』とメッセージが届いた。
それからの夜、私のスマホに千さんから話がかかってきた。
「美代ちゃん! 今度の正はおなんですってね。よかったわねぇ」
話の千さんの声は、から弾んでいた。
「美代ちゃん、毎朝から台所にこもりっきりだったでしょう? 今はようやくゆっくり座ってべられるわね。おではね、私、美代ちゃんの隣に座らせてもらおうかしら」 「ありがとうございます、千さん。私も本当に楽しみです」 「美代ちゃんはお肉は何が好きなの?」 「牛タンが番好きです」 「じゃあ、牛タンは美代ちゃんの分を番最初に焼いてあげるわね!」
千さんの温かい言葉に、胸がじんわりと温かくなった。
けれど、話を切る際、千さんが何気なく付けした言が、私の臓をたく掴んだ。
「さよ子さんもね、話で嬉しそうに言ってたわよ。『今も秀がいるから丈夫よ』って」
「……え? 秀さんが、ですか?」 「ええ。頼もしい息子を持って幸せねぇって話してたのよ」
通話を終えた、私は暗い部のでスマホを握りしめたままけなくなっていた。
秀がいるから、丈夫——。
その言葉の裏に隠されたを像しただけで、背筋にたい汗が流れた。
の正、親戚ので「秀がめにしてくれる」とを叩いた義母の笑顔が、々しく蘇ってきたのだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
腎臓をあげた私に離婚届――夫の隣には若い女
三歳の娘を育てる裕子は、重い腎臓病になった夫・英司を救うため、自分の腎臓を一つ提供した。ところが手術後、体調を崩した裕子を待っていたのは、夫からの暴言と冷たい仕打ちだった。やがて英司は、若い女との新生活を理由に離婚届を突きつけ、娘まで奪おうとする。そんな裕子の味方になったのは、意外にも義母だった。命を救ってくれた妻を平然と捨てようとする夫。すべてを失いかけた裕子は、娘と自分の人生を守るため、反撃を決意する。夫婦|真実|裏の顔|真相|第二の人生1.4万字5 26 -
完結第12話
新婚旅行に便乗する義母を空港に残した結果
新婚旅行で大阪へ向かうみちると健二。ところが、何かと二人の予定に入りたがる義母・恵子が「私の航空券も買って!」と空港から電話をかけてきた。何度断っても諦めない義母を避け、二人は夜行バスで出発。これで夫婦水入らずの旅行になるはずだった。しかし恵子は、二人の荷物に目をつけ、とんでもない方法で後を追おうとする。さらに健二の友人・圭司の借金騒動まで絡み、大阪では思いもよらない珍事件が発生。暴走する義母と、それに振り回される人々のドタバタコメディ。嫁姑|夫婦|真相1.3万字5 79 -
完結第16話
午前3時、警察から「夫を迎えに」――私は独身なのに
神堂グループを率いる美桜のもとに、午前3時、警察から奇妙な電話が入る。「ご主人を迎えに来てください」。しかし、美桜は一度も結婚したことがなかった。保護された男性が持っていたのは、5年前の爆発事故で亡くなったはずの婚約者・一条蓮との婚姻届の控え。半信半疑で警察署へ駆けつけた美桜は、信じられない光景を目にする。空白の5年間に何があったのか。そして、なぜ今になって彼が現れたのか。かつての事故をめぐる疑惑と、身近な人物の隠された思惑が、少しずつ明らかになっていく。夫婦|裏の顔|真相2.7万字5 141 -
完結第12話
竹林の向こうの白衣
八歳のティアラは、重い喘息を理由に山奥の療養施設へ預けられた。だが本当の理由は、両親が天才と呼ばれる兄の教育に専念するためだった。家族に忘れられた少女を支えたのは、施設の人々と小児科医の竹之内先生。やがて彼女は自分の名前を変え、医師になる道を選ぶ。努力の末に脳神経外科医となった洋子は、ある冬の深夜、救急搬送された患者と向き合うことに。かつて自分を置き去りにした家族との思いがけない再会が、彼女の人生を大きく揺さぶり始める。兄弟姉妹|真相|絶縁|親子関係1.7万字5 39 -
完結第12話
五歳の母ちゃん
両親を事故で亡くしたシンジは、五歳の妹・楓を育てながら、昼も夜も働いていた。そんなある日、楓が「母ちゃんが来た」と言って連れてきたのは、同じ保育園に通う五歳の少女・リサだった。ところが彼女は、家族しか知らない昔の出来事を次々に話し、シンジを息子のように気遣う。信じられない再会に戸惑いながらも、兄妹は少しずつ彼女に心を開いていく。しかし、リサ自身の記憶が薄れていくという異変が起こり始める。もう一度母に会いたかった兄妹が、大切なものを守るために選ぶ道とは。兄弟姉妹|真実|真相|第二の人生1.2万字5 38 -
完結第12話
結婚式に来ないと怒鳴る義母→義父「もう会場にいるぞ?」
母の美容院を継いだ誠は、医師の新と結婚して三年。夫婦仲は良好だったが、医者一家の義母からは学歴や職業を理由に見下され、嫌がらせを受け続けていた。そんな中、義弟の陸が看護師のかな子と結婚することに。義母は二人の豪華な披露宴を自慢し、誠への嫌味をますます強めていく。そして迎えた結婚式当日。朝早くから会場にいた誠のもとへ、義母から突然の怒鳴り電話がかかってきた。しかし、義父が電話を代わった瞬間、思いがけない事実が浮かび上がる。嫁姑|夫婦|真実|裏の顔1.6万字5 123 -
完結第10話
出産3日目、1億円の入金直後に夫が離婚届
娘を出産してわずか三日。病室で体を休めていた立花玲奈の口座に、父から譲り受けた株式の特別配当金、一億円が振り込まれた。その直後、見舞いに来た夫・直樹が突然離婚届を差し出す。しかも、財産分与として五千万円を要求し、自分の会社への融資継続まで求めてきた。夫の本性を知った玲奈は、追加融資と家族カードを止め、離婚に向けた準備を始める。ところが、カードの利用明細を調べると、身に覚えのない高級ホテルや宝飾店への支払いが次々と見つかり……。夫婦|真相|親子関係1.8万字5 72 -
完結第12話
結婚式当日「新婦が救急搬送」私、ここにいますけど?
高校時代から付き合ってきた健二と、ようやく結婚することになった警察官の愛。式の準備をほとんど任せきりにする健二に寂しさを感じながらも、愛は幸せな結婚生活を信じていた。 ところが結婚式当日の朝、式場に「新婦の愛さんが病院に運ばれた」という連絡が入る。愛本人は、ウェディングドレス姿で控室にいるというのに。 しかも病院の女性は、健二を呼んでほしいと言っているらしい。そこへ遅れて現れた健二は、愛の姿を見るなり顔色を変えた。 病院にいる「愛さん」は誰なのか。そして、長年信じてきた婚約者が隠していた秘密とは――。因果応報|人生逆転|夫婦|修羅場1.3万字5 348