"正月の高級焼肉、嫁の席だけ外した義母の誤算" 第4話
消された席と裏切りの廊
千さんからの話を受けたその晩、私は帰宅した夫にすべてを打ちけた。
「秀さん、やっぱり事にはっきりさせておいた方がいいよ。『秀がいるから丈夫』ってお義母さんが親戚に言ってるみたい。当になって、また親戚ので全額払わされるかもしれない」
夫は着を脱ぐを止め、刻な顔で頷いた。
「そうだな……。美代の言う通りだ。にでも母さんに釘を刺しておく」
の夜、夫は私の目ので義母に話をかけた。スピーカーから漏れる義母の声は、いつもよりワントーンかった。
『母さん、俺だけど。正の焼肉、まさかうちが全部払う話になってないよな?』 『何言ってるのよ、そんなこと誰も言ってないわよ!』 『……ならいいけど。各庭で割り勘だからな』
話を切った夫は「ほら、誰も言ってないってさ。考えすぎだよ」と笑った。
けれど、私はどうしても胸のつかえが取れなかった。仕事の鉄則が、ので警報を鳴らしていた。約束は、からいくらでも覆される。
「秀さん、お願いだから今の内容、族のグループメッセージにも言残しておいて。直子さんも見てるんだから」
夫は「げさだなあ」と苦笑いしながらも、私の頼みを聞いてメッセージを送信してくれた。
『さっき話で確認したけど、のため。
広告
今の焼肉はうちが全額払う話にはなってないから。各庭で割り勘でよろしく』
すぐに義母から『だから誰もそんなこと言ってないって言ったでしょ。各庭でいいわよ、しつこいわね』と返信があり、そのには直子さんから解をする丸のスタンプがポンと押された。
文字として残った記録。それを見て、私はようやく胸を撫でろした。
そして迎えた、。
午、私たちは産の最を持って練馬の本に到着した。でむ予定の夫に代わり、帰りは私が運転する段取りだった。
玄関をけると、すでに入り切らないほどの靴が並んでいた。
「秀! よく来たわね、寒かったでしょう!」
義母は夫を見るなり満面の笑みを浮かべ、私が差しした最の箱を横取りするように受け取った。「まあ、秀は気が利くわねぇ」と、自分が選んで買ったかのように居へ運んでいく。いつものことだ。
にくのだから、台所の仕事はない——そうっていたのは私だけだった。
「美代さん、みんなにお茶淹れてちょうだい!」
コートを脱ぐもなく義母の声がぶ。結局、私は台所でお湯を沸かし、くの湯呑みを並べ、お菓子を配り、散らかった靴を揃えて並べ直した。
午半頃、お盆を持って廊を通りかかったとき、階段ので義母が夫を招きして声で囁いているのが見えた。
広告
『秀、クレジットカードはちゃんと財布に入ってるわよね?』 『……持ってるけど、なんで?』 『のためよ、おなんだから』
義母は何わぬ顔で居へ戻っていった。そのの私は、割り勘の支払いの確認だろうと軽く受け流してしまっていた。
そして午半。
「さあ、そろそろよ! 移しましょう!」
直子さんがを叩き、親戚同がゾロゾロと玄関へ向かい始めた。千さん夫婦は真っ先に靴を履いてへていく。
私は台所の片付けを終え、廊のフックにかけてあった自分のウールコートにを伸ばした。
そのだった。
「あ、美代さんはかなくていいから」
背から、ややかな声がってきた。
振り返ると、義母が笑いを浮かべながら、コートに伸ばした私のを見つめていた。玄関では、ブーツのファスナーをげていた直子さんが、私の顔も見ずに平然と言い放った。
「で適当に何かべててよ」
「……え?」
私ののが、真っになった。
「あの……私の席は……?」
絞りすような私の声に、直子さんは面倒くさそうに肩をすくめた。
「だって、数がいし。嫁の分まで予約してないのよ」
玄関ので靴を履きかけていた夫が、ピシリときを止めた。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
腎臓をあげた私に離婚届――夫の隣には若い女
三歳の娘を育てる裕子は、重い腎臓病になった夫・英司を救うため、自分の腎臓を一つ提供した。ところが手術後、体調を崩した裕子を待っていたのは、夫からの暴言と冷たい仕打ちだった。やがて英司は、若い女との新生活を理由に離婚届を突きつけ、娘まで奪おうとする。そんな裕子の味方になったのは、意外にも義母だった。命を救ってくれた妻を平然と捨てようとする夫。すべてを失いかけた裕子は、娘と自分の人生を守るため、反撃を決意する。夫婦|真実|裏の顔|真相|第二の人生1.4万字5 26 -
完結第12話
新婚旅行に便乗する義母を空港に残した結果
新婚旅行で大阪へ向かうみちると健二。ところが、何かと二人の予定に入りたがる義母・恵子が「私の航空券も買って!」と空港から電話をかけてきた。何度断っても諦めない義母を避け、二人は夜行バスで出発。これで夫婦水入らずの旅行になるはずだった。しかし恵子は、二人の荷物に目をつけ、とんでもない方法で後を追おうとする。さらに健二の友人・圭司の借金騒動まで絡み、大阪では思いもよらない珍事件が発生。暴走する義母と、それに振り回される人々のドタバタコメディ。嫁姑|夫婦|真相1.3万字5 79 -
完結第16話
午前3時、警察から「夫を迎えに」――私は独身なのに
神堂グループを率いる美桜のもとに、午前3時、警察から奇妙な電話が入る。「ご主人を迎えに来てください」。しかし、美桜は一度も結婚したことがなかった。保護された男性が持っていたのは、5年前の爆発事故で亡くなったはずの婚約者・一条蓮との婚姻届の控え。半信半疑で警察署へ駆けつけた美桜は、信じられない光景を目にする。空白の5年間に何があったのか。そして、なぜ今になって彼が現れたのか。かつての事故をめぐる疑惑と、身近な人物の隠された思惑が、少しずつ明らかになっていく。夫婦|裏の顔|真相2.7万字5 141 -
完結第12話
竹林の向こうの白衣
八歳のティアラは、重い喘息を理由に山奥の療養施設へ預けられた。だが本当の理由は、両親が天才と呼ばれる兄の教育に専念するためだった。家族に忘れられた少女を支えたのは、施設の人々と小児科医の竹之内先生。やがて彼女は自分の名前を変え、医師になる道を選ぶ。努力の末に脳神経外科医となった洋子は、ある冬の深夜、救急搬送された患者と向き合うことに。かつて自分を置き去りにした家族との思いがけない再会が、彼女の人生を大きく揺さぶり始める。兄弟姉妹|真相|絶縁|親子関係1.7万字5 39 -
完結第12話
五歳の母ちゃん
両親を事故で亡くしたシンジは、五歳の妹・楓を育てながら、昼も夜も働いていた。そんなある日、楓が「母ちゃんが来た」と言って連れてきたのは、同じ保育園に通う五歳の少女・リサだった。ところが彼女は、家族しか知らない昔の出来事を次々に話し、シンジを息子のように気遣う。信じられない再会に戸惑いながらも、兄妹は少しずつ彼女に心を開いていく。しかし、リサ自身の記憶が薄れていくという異変が起こり始める。もう一度母に会いたかった兄妹が、大切なものを守るために選ぶ道とは。兄弟姉妹|真実|真相|第二の人生1.2万字5 38 -
完結第12話
結婚式に来ないと怒鳴る義母→義父「もう会場にいるぞ?」
母の美容院を継いだ誠は、医師の新と結婚して三年。夫婦仲は良好だったが、医者一家の義母からは学歴や職業を理由に見下され、嫌がらせを受け続けていた。そんな中、義弟の陸が看護師のかな子と結婚することに。義母は二人の豪華な披露宴を自慢し、誠への嫌味をますます強めていく。そして迎えた結婚式当日。朝早くから会場にいた誠のもとへ、義母から突然の怒鳴り電話がかかってきた。しかし、義父が電話を代わった瞬間、思いがけない事実が浮かび上がる。嫁姑|夫婦|真実|裏の顔1.6万字5 123 -
完結第10話
出産3日目、1億円の入金直後に夫が離婚届
娘を出産してわずか三日。病室で体を休めていた立花玲奈の口座に、父から譲り受けた株式の特別配当金、一億円が振り込まれた。その直後、見舞いに来た夫・直樹が突然離婚届を差し出す。しかも、財産分与として五千万円を要求し、自分の会社への融資継続まで求めてきた。夫の本性を知った玲奈は、追加融資と家族カードを止め、離婚に向けた準備を始める。ところが、カードの利用明細を調べると、身に覚えのない高級ホテルや宝飾店への支払いが次々と見つかり……。夫婦|真相|親子関係1.8万字5 72 -
完結第12話
結婚式当日「新婦が救急搬送」私、ここにいますけど?
高校時代から付き合ってきた健二と、ようやく結婚することになった警察官の愛。式の準備をほとんど任せきりにする健二に寂しさを感じながらも、愛は幸せな結婚生活を信じていた。 ところが結婚式当日の朝、式場に「新婦の愛さんが病院に運ばれた」という連絡が入る。愛本人は、ウェディングドレス姿で控室にいるというのに。 しかも病院の女性は、健二を呼んでほしいと言っているらしい。そこへ遅れて現れた健二は、愛の姿を見るなり顔色を変えた。 病院にいる「愛さん」は誰なのか。そして、長年信じてきた婚約者が隠していた秘密とは――。因果応報|人生逆転|夫婦|修羅場1.3万字5 348