"午前3時、警察から「夫を迎えに」――私は独身なのに" 第1話
午3の話
え切ったのが、寝のガラス窓を激しく叩いていました。
静まり返った部に枕元の着信音が響き渡ったのは、午ちょうどのことでした。 ごく限られた緊急連絡先だけに教えてある、私個の直通番号です。
い毛布を押しげ、暗ので青くる液晶画面を見つめました。 画面に表示されていた発信元の文字は、「警庁湾岸警察署」でした。
(グループの施設で事故でも起きたのかしら……)
胸騒ぎを覚えながら、通話ボタンを押しました。
「はい、神堂ですが」
受話器の向こうから聞こえてきたのは、の音を背景にした警察官の切迫した声でした。
「夜分遅くに申し訳ありません。神堂美桜さんのお話で違いございませんでしょうか」 「はい、私ですが。このような夜に体どのようなご用件でしょうか」
警察官は度く息を吸い込むと、全く予もしていなかった言葉をにしました。
「湾岸署の当直です。先ほど埠の倉庫くで、ひどく衰した元の男性を保護いたしました」 「男性を、ですか?」
「はい。識が混濁しており会話もままならないのですが、先ほどしだけ識を取り戻されまして……」 警察官はそこで言葉を区切り、極めて真剣な調子で続けました。
「ご主を、迎えに来ていただけないでしょうか」
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その瞬、私の考は完全に止まりました。 投げかけられた言葉のが理解できず、たくなった指先で受話器を握り直しました。
「警察官さん、何かの聞き違いでしょうか。私、まだ結婚してませんけど」
違いではないですか、と続けました。 婚姻届など提したことのない独の私にとって、あまりにも荒唐無稽な言葉だったからです。 神堂グループの莫な資産を狙う当たりや詐欺の類ではないかという疑が、をかすめました。
「いえ、違いありません」 話の警察官の声には、らかな切迫と揺が混じっていました。
「男性が倒れていた現で、肌さずく握りしめていたものがあるのです」
警察官は元にある何かを確認するように、をめくるような音をてました。
「男性は、古い真鍮のロケットペンダントを胸元で固く握りしめていました」
ロケットペンダントという単語を聞いた瞬、私の背筋にたいものがりました。
「決して放そうとせず、にはさく折りたたまれた類が入っていました」 警察官は静かに、しかし言ずつ噛みしめるように読みげました。
「そこには、の付が記された、神堂美桜様との婚姻届の控えが入っていたのです」
ドクン、と私の臓が激しくねがりました。
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「婚姻届の控え……ですか?」 「はい。夫の欄には『条蓮』とかれ、裏面にあなたの直通番号が記されていました」
条蓮。 その名をにした瞬、私の界が激しく揺らぎました。
のあの、私のからのすべてを奪いった、最のの名でした。
「そ、そんなはずはありません……!」 私の声は、自分でも驚くほど震えていました。
「条蓮は、の爆発事故でくなっています。警察も保庁も、そう判断したはずです」
、私の神堂グループ総帥就任直に起きた爆破テロ。 婚約者の条蓮さんは、代わりとなって私をかばい、炎するとともにへと沈んでいきました。 懸命な捜索にもかかわらず遺体は見つからず、に認定がりていたのです。
あの真鍮のペンダントは、入籍の夜、私が蓮さんへ渡した特注品でした。 内側にはのイニシャルが刻まれ、世界で私たちしからない品のはずでした。
「その男性が条さんご本かどうかは、まだ断定できません」 警察官は慎に言葉を選びながら、しかし切迫をめて言いました。
「ですが、男性はひどい怪と体温症で、極めて危険な状態にあります。救急搬送の配をめていますが、れゆく識ので、あなたの名を呼び続けているのです」
『美桜……美桜……』と、泣き叫ぶように繰り返しておられるのです、と。
受話器の向こうから、かすかに響く属音と、取り乱したような周囲のざわめきが伝わってきました。
「元引き受けとして、どうか刻もく署へ来ていただけないでしょうか」
「すぐに向かいます」
私は震える唇を噛みしめ、それだけを答えて通話を切りました。
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