"腎臓をあげた私に離婚届――夫の隣には若い女" 第3話
平の帰宅とたい通告
退院からヶが過ぎる頃には、英司はすっかり以の健康を取り戻していた。
顔は良く、声にも張りが戻り、病院の定期検診でも「経過は極めて順調」とお墨付きをもらっていた。本来ならぶべきことのはずだった。しかし、体力が戻るにつれて、夫の傲さと勝な振るいはエスカレートしていった。
会社を休職したままの英司は、事も育児も切伝おうとしなかった。義母が「しは裕子さんを伝いなさい」と言を言っても、「俺は病みがりなんだよ!」と鳴り返すばかり。
それどころか、平の昼から綺麗に着飾り、「気分転換だ」と言い訳をしてふらふらとを繰り返すようになったのだ。
どこへっているのかと尋ねても、「おに関係ないだろ」「病のくせに詮索するな、気持ち悪い」と吐き捨てるように言い放ち、夜遅くまで帰ってこない。
その方で、私はといえば、朝から亜美の朝を作り、自分の制限を用し、のむくみと倦怠を抱えながらに揺られて会社へ通勤していた。夕方に帰宅すれば、義母と緒に夕飯の支度をし、亜美をお呂に入れ、夜は残った仕事のメールを返す。
ともに限界にかったが、幸いなことに、徹底した事管理と投薬が功を奏し、先の検査では尿蛋の数値がかなり落ち着いてきていた。
広告
「裕子さん、数値が良くなって本当に良かったわね。でも、決して油断しちゃ駄目よ」
義母の優しい言葉だけが、私の張り詰めたを辛うじて支えてくれていた。
そんなある、初の平のことだった。
私は休暇を取り、午に学病院で腎能の定期検診を受けていた。検査結果は良好で、医師からも「この調子なら常活にきな制限をかけなくても丈夫でしょう」と温かい言葉をもらい、胸を撫でろしながら昼過ぎに義実へと戻ってきた。
義母はちょうど「今のうちに夕飯の買いしにってくるわね」と所のスーパーへかけており、のは静まり返っていた。
リビングのソファに腰掛け、たい麦茶をんで息ついていただった。
カチャリ、と玄関の鍵がく音がして、英司が帰ってきた。
品のポロシャツにブランドもののサングラスを胸元に差し、いかにも嫌な様子だった。しかし、リビングに座っている私の姿を認めた瞬、骨に眉をひそめて舌打ちをした。
「なんだよ、お。今会社サボりか?」
「病院の定期検診だったのよ。を取ってたの」
私がややかに答えると、英司は靴を脱ぎ捨ててリビングへ入ってきた。そして、テーブルを挟んで私の正面につと、ポケットから枚のを無造作に取りし、私の目のへパサリと放り投げた。
広告
「おい、これにサインしろ」
テーブルのに落ちたの表題を見た瞬、私の息が止まった。
『婚届』。
すでに夫の欄には、英司の跡で署名と押印が済まされていた。
「……何よ、これ」
「見れば分かるだろ。俺と婚しろって言ってんだよ」
英司は腕を組み、さも当然の権利を主張するかのように、顎をしゃくって見せた。
「俺は病気も完全に治ったしな。これからまたしいをやり直すんだよ。せっかくに入れた第のなんだ、おみたいな病で老け込んだ嫁とダラダラ暮らすなんて御免だからな」
「病って……誰のせいで私がこんな体になったとってるの?」
「だから、その恩着せがましい態度が昔から鬱陶しいんだよ!」
英司はで笑い、信じられない暴言を平然と言い放った。
「病気のの介護なんてまっぴらごめんだわ。これからはを謳するんだから、おはお役御免なんだよ」
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
新婚旅行に便乗する義母を空港に残した結果
新婚旅行で大阪へ向かうみちると健二。ところが、何かと二人の予定に入りたがる義母・恵子が「私の航空券も買って!」と空港から電話をかけてきた。何度断っても諦めない義母を避け、二人は夜行バスで出発。これで夫婦水入らずの旅行になるはずだった。しかし恵子は、二人の荷物に目をつけ、とんでもない方法で後を追おうとする。さらに健二の友人・圭司の借金騒動まで絡み、大阪では思いもよらない珍事件が発生。暴走する義母と、それに振り回される人々のドタバタコメディ。嫁姑|夫婦|真相1.3万字5 138 -
完結第12話
竹林の向こうの白衣
八歳のティアラは、重い喘息を理由に山奥の療養施設へ預けられた。だが本当の理由は、両親が天才と呼ばれる兄の教育に専念するためだった。家族に忘れられた少女を支えたのは、施設の人々と小児科医の竹之内先生。やがて彼女は自分の名前を変え、医師になる道を選ぶ。努力の末に脳神経外科医となった洋子は、ある冬の深夜、救急搬送された患者と向き合うことに。かつて自分を置き去りにした家族との思いがけない再会が、彼女の人生を大きく揺さぶり始める。兄弟姉妹|真相|絶縁|親子関係1.7万字5 107 -
完結第12話
五歳の母ちゃん
両親を事故で亡くしたシンジは、五歳の妹・楓を育てながら、昼も夜も働いていた。そんなある日、楓が「母ちゃんが来た」と言って連れてきたのは、同じ保育園に通う五歳の少女・リサだった。ところが彼女は、家族しか知らない昔の出来事を次々に話し、シンジを息子のように気遣う。信じられない再会に戸惑いながらも、兄妹は少しずつ彼女に心を開いていく。しかし、リサ自身の記憶が薄れていくという異変が起こり始める。もう一度母に会いたかった兄妹が、大切なものを守るために選ぶ道とは。兄弟姉妹|真実|真相|第二の人生1.2万字5 70 -
完結第12話
結婚式に来ないと怒鳴る義母→義父「もう会場にいるぞ?」
母の美容院を継いだ誠は、医師の新と結婚して三年。夫婦仲は良好だったが、医者一家の義母からは学歴や職業を理由に見下され、嫌がらせを受け続けていた。そんな中、義弟の陸が看護師のかな子と結婚することに。義母は二人の豪華な披露宴を自慢し、誠への嫌味をますます強めていく。そして迎えた結婚式当日。朝早くから会場にいた誠のもとへ、義母から突然の怒鳴り電話がかかってきた。しかし、義父が電話を代わった瞬間、思いがけない事実が浮かび上がる。嫁姑|夫婦|真実|裏の顔1.6万字5 225 -
完結第10話
出産3日目、1億円の入金直後に夫が離婚届
娘を出産してわずか三日。病室で体を休めていた立花玲奈の口座に、父から譲り受けた株式の特別配当金、一億円が振り込まれた。その直後、見舞いに来た夫・直樹が突然離婚届を差し出す。しかも、財産分与として五千万円を要求し、自分の会社への融資継続まで求めてきた。夫の本性を知った玲奈は、追加融資と家族カードを止め、離婚に向けた準備を始める。ところが、カードの利用明細を調べると、身に覚えのない高級ホテルや宝飾店への支払いが次々と見つかり……。夫婦|真相|親子関係1.8万字5 144