みかん小説
本棚

"姑から受け継いだしゃもじ" 第1話

お見いは度だけ

昭の、形のあいにあるさなで、ふみは歳になった。朝はの伝いをし、昼は所の子どもの面倒を見たり、母と緒に畑へたりして過ごしていた。結婚の話がたのは、がようやく解け始めた頃だった。

「隣のに、いいがいるんだって。農の男だけど、真面目ならしいよ」

母はそう言って、ふみの顔をうかがった。父は縁側で煙を吸いながら、聞を畳んでいる。とも、ふみに無理いをするつもりはないようだった。けれど、相ののことも、齢も、条件も、話はずいぶん先までんでいた。

「度会ってみるだけでも、どうだ?」

父に言われ、ふみはうなずいた。嫌だと言う理由があるわけではなかったし、結婚について自分の考えを誰かに話したこともなかった。では、親が相を見つけ、同士で話をめることが珍しくなかった。ふみにとっては、そういうものなのだとうしかなかった。

見いの、ふみは母の若い頃の着物を着せてもらった。待ちわせたの座敷に現れた相は、(はじめ)という歳の青だった。背がく、に焼けた顔をしている。数はなかったが、ふみの話を聞くときは、目をそらさずにうなずいていた。

「農作業は、慣れるまで変だとう。

広告

うちには母もいるし、覚えることもいだろう」

は、そう言ってからしを置いた。

「でも、困ったことがあったら俺に言ってくれ」

それだけの会話だった。ふみは相のことをほとんどらないまま、見いを終えた。帰り、母に「どうだった」と聞かれたが、「よく分からない」と答えることしかできなかった。すると、母は困ったように笑った。

「会ったのは度だけだものね。これからっていけばいいよ」

数、話はまとまったとらされた。ふみの気持ちが決まるに、両のでは結婚の取りや嫁入り具の相談が始まっていた。驚きはあったが、族がんでいる様子を見ると、これでよかったのだろうとおうとした。

嫁入りの、親戚に付き添われたふみは、い着物を着て嫁列に加わった。端にてきた子どもたちが、「嫁さんだ」と声をげながら、しのついてきた。見慣れた景がざかるたび、胸の奥が細くなる。実をる直、母はふみのを握った。

「つらいことがあったら、いつでも帰っておいで」

ふみは返事の代わりに、母のをく握り返した。

夫のに着くと、座敷には親戚が集まり、夜遅くまで祝いの席が続いた。ようやくが帰り、部が静かになった頃、姑のとしがふみを台所へ呼んだ。

「から、のことを覚えてもらうよ。

ここではのことは私が見てきた。台所も、財布も、勝にかすものじゃないからね」

ふみは「はい」と答えた。自分の暮らしが、今からきく変わったことを、その夜になってようやくじ始めていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: