"姑から受け継いだしゃもじ" 第5話
こたつののメダル
昭、京オリンピックがかれた。のにも、が稼ぎで送ってきたおで黒テレビが届いた。箱を運び込んだとき、正と幸子はテレビの周りをり回った。
「これがテレビ? が入ってるの?」
正が画面の裏をのぞこうとする。
「にはいないよ。に座って見るんだ」
ふみが笑って言うと、としが説した。
「乱暴に触るんじゃないよ。いものなんだからね」
テレビがに来てから、族が同じに居へ集まることが増えた。ふみは夕飯の支度をめに済ませ、子どもたちのを洗わせてから、こたつのへ座る。としも針仕事を持ってきて、画面を眺める。
女子バレーボールの決勝の、には所のたちも集まった。選たちがボールを追いかけるたび、誰かが声をげる。本がソ連に勝った瞬、としはこたつからちがり、ふみのをつかんだ。
「勝ったよ! ほら、勝った!」
「本当ですね。すごいですね」
は顔を見わせて笑った。としの目には涙が浮かんでいた。ふみはそのを握り返した。姑と嫁が並んで、同じものを見てんでいる。そんな当たりのが、ふみにはうれしかった。
それから数のに、田んぼの仕事もしずつ変わっていった。農業の械が入り、で植えていた苗を械で植えるようになった。
広告
脱穀も昔より楽になり、族全員で夜遅くまで作業するは減っていった。
械の扱いに慣れないとしは、最初のうち満をにした。
「こんなものを使って、本当にちゃんとできるのかね」
「所のも使ってるそうですよ」
「昔のやり方の方が、米の具は分かったよ」
それでも、実際に使ってみると、作業にかかるは確かにくなった。ふみの腰への負担も減った。田植えのあとの夕方、族で縁側に座るができた。
「し楽になったね」
ふみが言うと、としはうなずいた。
「そうだね。私たちが若い頃にあったら、ずいぶん違っただろう」
その言葉を聞いて、ふみはった。自分たちの暮らしは、しずつ変わっていく。姑が守ってきたやり方も、全部がそのまま残るわけではない。変わるものを怖がるだけでなく、暮らしにわせて変えていくことも必なのだろう。
昭には、米を作りすぎないように田んぼを減らす政策が始まった。の収入をどうするか、ととしは何度も話しった。ふみも、計のやりくりを任されることが増えていった。
「ふみ、来の肥料代はこれでりるか」
としが帳面を見せる。
「費をし見直せば、何とかなるといます」
「そうか。あんたものことを分かるようになったね」
それは、としから初めて受け取った、はっきりしたねぎらいの言葉だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
「寄付は千円ぽっち」笑われた老夫婦の30年の秘密
町内会の夏祭りで、寄付が千円しかないと笑われた68歳の静子。古い自転車に乗り、夫の勉と慎ましく暮らす彼女は、婦人会長から「ケチな人」と見下され、記念式典の受付役まで外されてしまう。それでも静子は言い返さない。夫婦には、30年間、毎月15日に欠かさず続けてきた秘密の約束があった。やがて婦人会の記念式典に、育英基金の支援で大学を卒業した青年が現れる。青年が大切に持っていた一通の手紙をきっかけに、会場の空気が思いがけない方向へ変わり始める。人生逆転|夫婦|真実|金銭問題1.9万字5 8 -
完結第10話
腎臓をあげた私に離婚届――夫の隣には若い女
三歳の娘を育てる裕子は、重い腎臓病になった夫・英司を救うため、自分の腎臓を一つ提供した。ところが手術後、体調を崩した裕子を待っていたのは、夫からの暴言と冷たい仕打ちだった。やがて英司は、若い女との新生活を理由に離婚届を突きつけ、娘まで奪おうとする。そんな裕子の味方になったのは、意外にも義母だった。命を救ってくれた妻を平然と捨てようとする夫。すべてを失いかけた裕子は、娘と自分の人生を守るため、反撃を決意する。夫婦|真実|裏の顔|真相|第二の人生1.4万字5 408 -
完結第12話
新婚旅行に便乗する義母を空港に残した結果
新婚旅行で大阪へ向かうみちると健二。ところが、何かと二人の予定に入りたがる義母・恵子が「私の航空券も買って!」と空港から電話をかけてきた。何度断っても諦めない義母を避け、二人は夜行バスで出発。これで夫婦水入らずの旅行になるはずだった。しかし恵子は、二人の荷物に目をつけ、とんでもない方法で後を追おうとする。さらに健二の友人・圭司の借金騒動まで絡み、大阪では思いもよらない珍事件が発生。暴走する義母と、それに振り回される人々のドタバタコメディ。嫁姑|夫婦|真相1.3万字5 463 -
完結第16話
午前3時、警察から「夫を迎えに」――私は独身なのに
神堂グループを率いる美桜のもとに、午前3時、警察から奇妙な電話が入る。「ご主人を迎えに来てください」。しかし、美桜は一度も結婚したことがなかった。保護された男性が持っていたのは、5年前の爆発事故で亡くなったはずの婚約者・一条蓮との婚姻届の控え。半信半疑で警察署へ駆けつけた美桜は、信じられない光景を目にする。空白の5年間に何があったのか。そして、なぜ今になって彼が現れたのか。かつての事故をめぐる疑惑と、身近な人物の隠された思惑が、少しずつ明らかになっていく。夫婦|裏の顔|真相2.7万字5 530 -
完結第12話
結婚式に来ないと怒鳴る義母→義父「もう会場にいるぞ?」
母の美容院を継いだ誠は、医師の新と結婚して三年。夫婦仲は良好だったが、医者一家の義母からは学歴や職業を理由に見下され、嫌がらせを受け続けていた。そんな中、義弟の陸が看護師のかな子と結婚することに。義母は二人の豪華な披露宴を自慢し、誠への嫌味をますます強めていく。そして迎えた結婚式当日。朝早くから会場にいた誠のもとへ、義母から突然の怒鳴り電話がかかってきた。しかし、義父が電話を代わった瞬間、思いがけない事実が浮かび上がる。嫁姑|夫婦|真実|裏の顔1.6万字5 743 -
完結第10話
出産3日目、1億円の入金直後に夫が離婚届
娘を出産してわずか三日。病室で体を休めていた立花玲奈の口座に、父から譲り受けた株式の特別配当金、一億円が振り込まれた。その直後、見舞いに来た夫・直樹が突然離婚届を差し出す。しかも、財産分与として五千万円を要求し、自分の会社への融資継続まで求めてきた。夫の本性を知った玲奈は、追加融資と家族カードを止め、離婚に向けた準備を始める。ところが、カードの利用明細を調べると、身に覚えのない高級ホテルや宝飾店への支払いが次々と見つかり……。夫婦|真相|親子関係1.8万字5 380 -
完結第10話
正月の高級焼肉、嫁の席だけ外した義母の誤算
結婚して六年、藤森美代は毎年正月になると、夫の実家で親戚たちの世話を押しつけられていた。集合写真にさえ入れてもらえず、いつも一人だけ台所で過ごしてきた。今年は赤坂の高級焼肉店で集まると聞き、ようやく皆と食事ができると思っていたのだが、出発直前、義母から「嫁の分は予約してない」と告げられる。怒った夫はその場で帰宅を決意。ところが、二人が帰った途端、義母と義姉は思いがけない事態に追い込まれる。高級焼肉の予約に隠されていた、二人の本当の狙いとは……。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|ATM扱い1.7万字5 2555