"戸籍の中のもう一人の妻" 第4話
いがうリビング
午半、私は義父母のマンションのドアベルを鳴らしました。
迎えてくれた義母の秀子は、赤い柄のエプロンをにつけ、にはハンバーグを捏ねていたのか麦をつけていました。 「いらっしゃい、結さん。寒かったでしょう」
リビングの奥では、義父の健が音量でテレビの代劇を眺めていました。 私が入ってきても線すら向けず、フンとを鳴らしただけでした。 いつもの、嫌で無な義父の姿でした。
私は買ってきた豚肉と野菜をキッチンのシンクに置くと、リビングの央へ歩みました。 回りくどい置きをする気は、毛ありませんでした。
「お義母さん、しお話しがあります」
秀子がキッチンからひょっこりと顔をしました。 「何かしら? 健太から何か連絡でもあった?」
「今、区役所へってきました。健太さんの赴任の同を提するためです」 私の声は、の気予報を告げるアナウンサーのように平坦でした。
「そこで、戸籍謄本を確認しました。……健太さん、のにマンチェスターで、別の女性と婚姻届をしていました」
テレビから流れていた代劇のチャンバラの音が、CMに入ってピタリと途切れました。 義父のリモコンを持つが止まり、画面が暗転しました。
「相は渡辺真理という方です。
広告
学代の同級だそうです」 私はの目を交互に見つめ、音音を正確に刻むように続けました。
「健太さんは張にっているわけではありません。向こうであの女性と庭を築き、暮らしているんです。半本に帰ってこないのは、もう帰る必がないからです」
バフッ、と鈍い音がから響きました。 秀子がに持っていた麦の袋が、タイルのに落ちて破裂した音でした。 真っなが、秀子のスリッパとエプロンをく染めげながら、煙のようにいがりました。
「……な、何を言ってるのよ」 秀子の顔から、完全に血の気が引いていました。
「な、何かの違いに決まってるじゃない! あの子がそんなことするわけないでしょ! 毎週末、私たちと元気にビデオ通話してるのよ!? このだって、結さんにイギリスのブランドバッグを買ったって……!」
「お義母さん、そのバッグを買ったのは、私の族カードです」 私は遮ることなく、静かに事実を突きつけました。
「イギリスでの彼の活費の半分は、私たちの共同座から引き落とされています。健太さんは、私のおを使って、向こうで元カノを養っているんです」
その言葉は、研ぎ澄まされたメスのように、この族が守り続けてきたっぺらな体面を切り裂きました。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
義妹の荷物40箱を拒否したら、夫の勝手な約束が発覚
五十六歳のかず子の家に、義妹が経営するネットショップの商品が突然四十箱も届いた。預かると聞いていたのは小さな荷物だけ。受け取りを断ると夫は激怒し、かず子が大切にしている二階の六畳間を倉庫にすればいいと言い放つ。そこは、三十年以上家族を優先してきたかず子が、ようやく手に入れた自分だけの場所だった。さらに翌朝、配送会社から渡された書類には、身に覚えのない集荷予定と自分の名前が。夫と義妹は、かず子に何をさせるつもりだったのか。裏切られた|兄弟姉妹|夫婦1.8万字5 51 -
完結第12話
義母が倒れたと伝えたら、義兄嫁は葬儀を楽しみにした
山あいの村で農業を営む金田のぞみは、夫と義母、息子と穏やかに暮らしていた。ところが、農家を見下す義兄嫁の美香が、夏休みの間、二人の子どもを突然預けてくる。忙しい収穫期に子どもの世話まで重なり、無理を続けた義母は熱中症で倒れてしまう。 慌てて連絡したのぞみに、美香は心配するどころか、葬儀になれば仕事を休めると笑い出した。翌日、旅行気分で義実家を訪れるという美香。これまで我慢を重ねてきたのぞみは、ある決意を固める。嫁姑|夫婦|絶縁1.3万字5 166 -
完結第12話
同窓会で「席はない」と笑われた私に、若女将が一礼
七十歳になった水野春江は、亡き夫との約束を胸に、地元の老舗旅館で開かれる古希の同窓会に出席する。ところが受付で、幹事の麗子から「会費未納だから席はない」と告げられ、皆の前で仲居扱いされてしまう。確かに春江は、この旅館で掃除も布団運びもしている。だが、その理由を麗子は知らなかった。高校時代から続く嫉妬、勝手に消された名簿、そして欠席するはずだった恩師のために用意された席。五十一年ぶりの再会をきっかけに、春江が長年大切にしてきたものが明らかになっていく。人生逆転|第二の人生|金銭問題1.9万字5 41 -
完結第12話
150万円を払わせたママ友、次は寿司300万円
夫の昇進祝いで家族とレストランを訪れたひまり。楽しい食事の最後に告げられた会計は、なんと150万円。原因は、顔見知り程度のママ友・ぽて子一家が大量の料理を注文し、勝手にひまりへ支払いを押しつけたことだった。仕方なく立て替えたものの、返金を求めると渡されたのは、まさかのポテトチップスの空袋。しかも数日後、ぽて子は高級寿司店で新たな計画を立て始める。「ママ友なんだから払って当然」と言い張る一家に、ひまりが取った行動とは?因果応報|夫婦|真相|親子関係|金銭問題|修羅場1.2万字5 24 -
完結第10話
離婚して10年、元夫が鍵を替えなかった理由
二十二年間連れ添った夫・正彦の無口さに耐えきれず、四十八歳で離婚したみつ恵。それから十年後、正彦が脳梗塞で倒れたと娘から連絡が入る。入院に必要な荷物を取りに、かつての自宅を訪ねたみつ恵は、返しそびれた合鍵で玄関が開くことに驚く。なぜ十年も鍵を替えなかったのか。部屋には、昔と変わらない食器や、みつ恵が置いていったスリッパが残されていた。やがて見つけた一通の手紙には、二十二年間聞けなかった夫の想いが綴られていた。別れた二人は、もう一度向き合えるのだろうか。夫婦|第二の人生|介護|退職金|熟年離婚1.3万字5 73 -
完結第10話
父の葬儀中「飯を作れ」と怒鳴った夫に、参列者が…
父の葬儀で喪主を務める美穂のもとに、夫・健一から何度も電話がかかってきた。用件は「今すぐ帰って飯を作れ」という身勝手な要求だった。二十年間、夫の暴言と厳しい金銭管理に耐えてきた美穂。父との最後の別れさえ邪魔され、ついに参列者の前で夫の怒声が響き渡る。すると、最後列に座っていた一人の男性が立ち上がった。その人物は亡き父の教え子で、健一とも思いがけないつながりがあった。因果応報|怒り|夫婦|親子関係|修羅場1.6万字5 514 -
完結第12話
結婚23年目、35万円を渡した妻が持ち帰ったもの
結婚23年目、妻の三重が久しぶりに山あいの実家へ帰りたいと言い出した。夫は母親との時間を楽しんでほしくて、35万円を持たせて送り出す。数日後、三重が持ち帰ったのは、古い着物とアルバム、そして母親からの一通の手紙だった。封筒には「今まで言えなかったこと」と書かれていた。手紙を読み進めるうちに、夫は妻が長年胸にしまってきた思いを知る。何不自由なく暮らしていると思っていた23年間。人生逆転|夫婦|相続|第二の人生|親子関係1.2万字5 591