"最後の伝書鳩" 第8話
を数える
峠を越えた、は救援隊のも名簿へき加えた。誰がどこで負傷したか、誰が担架を運んだかをく記す。報告の裏にの名をいた伍の気持ちが、しだけ分かった気がした。
田島の担架を運ぶ兵は、交代するたびに名を告げた。「田島を受け取る」「田島を渡す」。名を声にすることで、担架のの兵が荷物のように扱われるのを防いでいるようだった。関が報告に名をいた理由を、川原はそのようやく言葉にできた。
救援隊がをれる直、川原は背から聞こえた銃声の方向を確かめた。敵がづいているなら、急いでるほど危険になる。は面に伏せて音の隔を聞き、銃撃ではなく、岩が崩れる音が混じっていると判断した。
の偵察兵が先にみ、に崩れた砂を確かめた。幅は狭かったが、担架を横向きにすれば通れる。川原は部たちへ「ずつ、を空けろ」と指示した。は声をさず、互いの肩を支えながらを抜けた。
川原は、救援隊の数を何度も数えた。にいた、仲を数えることはきているかを確かめる作業だった。今は救援に来た者も含め、誰がどこにいるのかを把握しなければならない。
田島は担架に乗せられるのを嫌がった。歩けると言い張ったが、ちがると膝が崩れた。
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兵が「を張るな」と言うと、田島は「妹にられる」と答えた。川原はその返事に、瞬だけ笑った。
救援隊がをる、岸はろを振り返った。何かを探しているようだった。
「どうした」
川原が聞くと、岸は「鳩の羽が落ちてないかとって」と答えた。鳥がを運んだと聞いたのは、救援隊が来てからだった。
「鳩は帰った」
川原はそう言った。
「なら、もう探さなくていい」
岸は頷いたが、をめるにもう度だけを見た。そこには、彼らが過ごした夜と、に濡れた岩と、戻れるか分からなかったが残っていた。
峠ので、銃声が再び響いた。今度はい。は隊を止めず、負傷者を先にませた。を抜けたは、初めて本隊の姿を見た。
救援隊がへ向かったのは、翌朝だった。
尉と偵察兵、兵。部隊ではない。関の報告にあった炭焼きを使い、枯れ沢を度渡る。敵の見張りを避けるため、荷物は最限にした。
の入に着く頃、は止んでいた。
岩のには、が細く流れている。偵察兵が面を確かめ、は報告の裏にかれた印と照らしわせた。つに割れた岩壁。そのに、黒く焦げたの枝がある。
川原たちが図を送った所だった。
「がいると決めつけるな」
は声で言った。
「図の正体が分からなければ、すぐに戻る」
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しばらくむと、斜面の奥から鳥の鳴き声が聞こえた。軍鳩の声ではない。が笛を吹いたような、かすかな音だった。
偵察兵が図を返した。
度。
を置いて、度。
岩から、川原が姿を現した。顔はで汚れ、腕を布で吊っている。ろには兵がいた。
「川原軍曹か」
「そうです」
「数を報告しろ」
川原は、救援隊のろを見た。
「です」
「全員けるか」
「は負傷しています。は歩けません」
兵がすぐにづいた。
「残りは」
「弾薬がない。料は昨で尽きました」
川原は、の胸ポケットに挟まったの端を見た。
「関が送ったんですか」
「このが届いた」
「裏に、何がいてあったんです」
は、を取りそうとした。
その、の奥で銃声が鳴った。救援隊は岩へを寄せ、川原は反射に部のを押さえた。銃声は度だけだったが、敵に見つかった能性がある。
「ける者からる。負傷者は担架に乗せる」
が指示をした。
「ここに留まれば囲まれる」
川原は、歩けない田島のそばへった。田島は額に汗を浮かべ、目をけていた。
「俺は置いていけ」
「その話は帰ってからしろ」
川原は肩を貸した。
救援隊は、関が記した炭焼きを戻った。途、斜面が崩れ、担架の片側がへ沈んだ。と偵察兵が肩を入れ、何とか引きげる。
敵の姿は見えなかった。
だがのへるまで、誰も声をさなかった。
午遅く、救援隊は本隊の待つ所へ戻った。
ずつ名を確認した。
川原軍曹。
田島等兵。
岸等兵。
全員の名が呼ばれた。
田島は識が朦朧としていたが、兵の当てを受けていた。命に別状はないという。
輪尉は、川原を見た。
「戻ったな」
「はい」
「よく持ちこたえた」
川原は返事をせず、周囲を見回した。
「関は」
「こちらにいる」
関は、しれた所にっていた。
川原は彼のまで歩いてきた。
「を送ったのか」
「はい」
「命令違反だぞ」
「分かっています」
「俺たちを助けるために、本隊まで危険にさらした」
関は、顔をげた。
「はい」
川原は何かを言いかけて、やめた。
「きて戻れたから、礼を言うとは限らん」
「分かっています」
川原は、関の肩を度だけ叩いた。
「だが、あのに名があった。あれで俺たちは、ただの未帰還者じゃなくなった」
その言葉を聞いた輪は、目を伏せた。
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