"最後の伝書鳩" 第12話
帰る所
関は展示をる、報告ので度だけをげた。へなのか、トキへなのか、自分でも分からなかった。い、誰にも読まれなかったの裏を、今は見らぬたちがち止まって読んでいる。それで分だった。
展示の、川原の遺族からが届いた。川原の娘は、父が戦でに残された話をで度も詳しく語らなかったといていた。ただ、毎同じに、の名をへき、仏壇の引きしへしまっていたという。
には、そのの写しが同封されていた。文字は震えていたが、の名は報告と同じ順番だった。関はしばらく見つめた、展示担当者へ連絡し、その写しも保管してほしいと頼んだ。
報告の裏に関がき、川原ができ続けた名は、別々の所で同じたちを呼び戻していた。誰かが記録を読み、誰かが名を声にするたび、あので待っていたは、数字ではなくずつのとして帰ってきた。
展示には、戦の通信や、壊れた話線の断片も並べられていた。来者はそれらを眺めた、最に報告のでを止める。の央には、正面の印刷文字と裏面の鉛きが、同じ枚に残っていた。
関の息子も、展示を見に来ていた。父が鳩を飼っていたことはっていたが、戦で何をしたのかは聞いたことがなかった。
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彼は展示を読み終えると、父の隣へった。
「お父さんは、を助けたんだね」
関はすぐに答えなかった。
「助けにったのは、尉たちだ。俺は所をいただけだ」
「でも、その所を誰かに伝えた」
「鳩が運んだ」
息子は、に並んだ名をもう度読んだ。関はそれを止めなかった。
展示をた、は駅まで歩いた。ががり、線のに鳩が羽止まっていた。息子は空を見げたが、関はを向いたまま歩き続けた。
父から教わったことは、鳥は帰る所を覚えているということだった。関はい、トキが本当に戻ったかどうかをらなかった。だがあのは、鳥が戻った所で保管され、何もにの名を連れて、もう度々のへ帰ってきた。
その、関は自転へ戻ると、庭の餌箱を洗った。鳩を飼い直すつもりはなかった。ただ、父の文字が読めなくなるに、もう度確かめておきたかった。
関は、数に旧通信所を訪ねた。
建物はほとんど片づけられ、窓枠もされていた。理担当者は、報告を保用の透な袋に入れて待っていた。
関は、まず表面を見た。
赤鉛でかれた「無断記載」の文字は、っていたよりきかった。自分の名も、そのすぐ横にある。
次に、裏面を見せてもらった。
の名は、しずつくなっていた。
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それでも、読めない字はなかった。鉛の線が何度もに押しつけられ、ところどころ裏へ跡を残している。
「このが、トキの脚に結ばれていたんですね」
「記録から見る限り、そうです」
「トキは、そのどうなりましたか」
「数、方の飼育所で飼われていた記録があります。最のは分かりません」
関は、の端へを伸ばしかけて、やめた。
「よく戻ってきたな」
その声は、誰に向けたものか分からなかった。
救援記録によれば、鳩が方の飼育所へ到着したのは、没からだった。報告の裏にあった図と名がなければ、救援隊はへ入る判断をせなかった能性がい。
しかし、それをっていた者はなかった。
川原たちは救われた。輪は自分の判断を語らず、関は処分を受けた。記録には、命令違反だけが残った。の名は、公式の救記録に写されていたものの、伝鳩が運んだの裏に、関がずついたことまでは誰もらなかった。
「公表することはできますか」
担当者が尋ねた。
関はし考えた。
「名を残すなら、全員の名を載せてください」
「分かりました」
「私のことは、そのでいい」
担当者はうなずいた。
数か、古い通信記録を紹介するさな展示がかれた。きな式典ではなかった。聞にも、い記事がつ載っただけだった。
展示の央には、油に包まれていた報告が置かれた。表面には部隊の退報告。裏面には、の位置と、の名。そして、最の文がある。
「責任は関清が負います」
関は展示の隅にち、来者がそのを読むのを見ていた。誰かが「このが鳩をばしたのか」と言った。別のが、の名をつずつ声にした。
関は、を挟まなかった。
展示を見終えた息子は、のところでち止まった。
「の名、全部覚えられなかった」
「覚えなくていい。ここにいてある」
「でも、また誰かが忘れたら?」
関は、すぐには答えなかった。の記憶はれる。も傷み、建物もなくなる。それでも、誰かが度名を読み、別の誰かへ伝えれば、消えずに残るものがある。彼は息子に、報告の写真を枚買って帰ろうと言った。名が読めるきさで印刷されたものを選び、の帳面にはさんでおくつもりだった。
展示をると、はだった。駐の端に、の鳩が羽りてきた。野の鳥だったのか、くので飼われている鳥だったのかは分からない。
鳩は面を歩き、やがて根の向こうへんでいった。
関はその姿を見送った。
あの、トキが運んだのは、救援を求める言葉だけではなかった。に残ったが、確かにそこにいたという証しだった。
戦争が終わっても、誰かの記憶から消されそうになっても、名が残るように。
そのは、いあいだ折り畳まれたまま、鳥籠のない所で眠っていた。
そして最に、関の名と並んで、の名をもう度帰る所へ運んだ。
※昭の架空の戦を台にした歴史説です。物、部隊、名、事件は創作です。
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