"卒業写真の空いた席" 第4話
姉の居所
美代は、駅の堂で私に話をした。京してから最初の1かは、会社の寮で暮らしたという。朝は6に起き、堂の片づけをしてからへ歩く。仕事はミシンの準備で、慣れないうちは指に針を刺すこともあった。けれど、仕事そのものは嫌ではなかった。料には、自分で働いた分を受け取れるとっていた。
最初の細を渡されたとき、聞いていない項目がいくつもあった。寮の布団代、紹介費、京の荷物運び代。美代が「これは何ですか」と尋ねると、坂は「最初に世話した分だ」と答えた。それぞれの額が決まっているのか、いつ終わるのかは教えてくれなかった。美代は故郷へをこうとしたが、寮の管理に「余計な配をかけるな」と言われ、結局せなかった。
女の名は塚美代といった。彼女は青葉縫製の紹介で京したが、会社の械が止まったあと、坂商事の配で別の作業へ移ったという。
「そのとき、文子さんも緒でした。みんなには、結婚して川崎にいるって話していたみたいです。でも、結婚したわけじゃない。坂さんのところで、寮の世話をしています」
「なぜへ帰らないの」
「度、帰ろうとしたんです。でも、帰るおがありませんでした。料から寮費やら何やら引かれて、残った分を送っていたから」
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美代は、私の帳に川崎の所をきした。し迷ってから、もうひとつの所も教えてくれた。そこは坂商事の事務所で、青葉縫製の求票には載っていない。
「澄さんは、どこへったか分かる?」
「文子さんに会いにったはずです。来るにをくれました。『姉がいる所を調べる』って」
私は堵しかけて、すぐに自分を戒めた。姉がきていることは分かった。澄のき先は分からない。彼女が無事かどうかも、まだ確かめられていない。
美代は、仕事が終わるに、私を作業まで案内してくれた。建物は商の階にあり、窓からミシンの音が途切れず聞こえてくる。入の横に、青葉縫製の名札が貼られていた。だが、階の主は「うちは所を貸しているだけだ」と言った。
「ここで働くの雇い主は誰ですか」
「坂さんに聞いてくれ。わしには関係ない」
美代がうつむいた。私には、彼女が何を恐れているか分かった。ここで誰かを問い詰めれば、翌から働けなくなるかもしれない。
「佐伯文子さんに会わせてください」
美代は、すぐには答えなかった。かわりに、作業の裏を見た。そこから、疲れた顔をした若い女性がてきた。髪をく切り、袖をまくっている。彼女は私の顔を見て、ち止まった。
「文子さんですか」
「先……どうしてここへ」
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文子は、澄が受験を諦めたと聞いたとき、止められなかったと言った。自分がをたころ、母親は弟妹の世話でいっぱいだった。帰れば、次にをるのは澄だとった。だから帰ることも、妹に本当のことを伝えることもできなかった。妹を守るつもりで黙り、結果として同じへ向かわせてしまった。どちらかひとりを責めれば済む話ではなかった。
姉は、私が持ってきた卒業証を見た。筒にかれた澄の名を指でなぞり、目を伏せた。
「澄は、もう帰りましたか」
「帰っていません。あなたに会いに来たんです」
文子の表から、わずかに血の気が引いた。
「会っていません。あの子には、ここへ来るなとにいたのに」
私は彼女の肩の向こうを見た。作業の奥では、15歳ほどの女が、糸の切れたミシンを直していた。机の端には、青葉縫製と印刷された封筒が何通も積まれている。
作業からは、ミシンの音に混じってラジオのが聞こえた。誰かがさくずさみ、別の子が糸を通し直している。彼女たちはの持ち主が誰なのか、与細を誰が用するのからないまま、毎決まったにここへ来ていた。私は、類にある「勤務」というが、どれほどきな違いをむかを初めて考えた。
「この子たちは、青葉縫製の社員なのですか」
文子は答えず、封筒を抱えて裏からた。
「先、ここでは話せません。寮へ来てください」
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