"卒業写真の空いた席" 第6話
会わない理由
坂は、っていたより若く、声も荒げなかった。紺の背広に、きちんと磨いた靴。名刺には「坂労務相談所」と印刷されている。彼は子に座るに私の名刺を確かめ、学名を帳にき留めた。文子がお茶をしたが、坂はをつけなかった。
「青葉縫製が移転したあと、私が仕事を紹介したのは事実です。会社が潰れたわけではありません。仕事を変えただけです」
「求票にない所へ移るなら、本に説が必です」
「本たちは承しています。寝るところも事も用した。田舎からてきた子が、の械が止まったあと、からどこへけばいいんです。私が面倒を見なければ、に迷っていたでしょう」
その言葉には、嘘だけではない響きがあった。実際、坂は女たちに寝を用し、仕事を探していた。彼がいなければ、会社が止まったにきをなくした子もいたかもしれない。だが、助けたことと、何を差し引いてもよいことは別だ。
「与から引かれている額について、本たちへ説しましたか」
「説はしています。細かい額は、働き始めてから決まるものもある」
「決まった点でらせるべきです」
坂は私ではなく、文子を見た。文子は、へ送ったのうち、自分で送用をいたがあることを認めた。
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族のために送ることは、彼女自が決めたことだった。問題は、紹介費や替の額が、いつ終わるのかも分からないまま料から差し引かれていたことだ。
「最初に京へ来る汽賃も、寝る所も、誰かが用しなければならないでしょう」
坂は、自分がしたことを挙げた。私は、それをすべて否定できなかった。寮の世話をしたことも、仕事をつないだことも事実だ。文子たちも、それを忘れてはいない。
「世話になったことは忘れていません。でも、いくら返したら終わるのか、教えてください」
文子の声は静かだった。坂は答えず、名刺の角を指でそろえた。
彼は、今度は私のほうを見た。
「先は、あの子のために来たんでしょう。なら、余計なことをして仕事を失わせないほうがいい。会社の名をせば、推薦した学にも迷惑がかかります」
私は、返す言葉を持てなかった。仕事がなくなれば困るのは女たちだ。話をきくしたあと、彼女たちがどこへくのか、私は考えていなかった。
坂の言葉が、私には脅しだけには聞こえなかった。彼は、学が何の責任も負わずに女を送りし、問題が起きてから京へ来たことを責めているのかもしれない。私は彼に責められるから、自分の署名がこの仕事先へ澄をつないだことをっていた。
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私が学へ戻れば、彼女たちはも仕事を続けられるかもしれない。けれど、黙って帰れば、空欄のままの控除はそのまま残る。どちらを選んでも、誰かに負担がかかる。そのことを、私は初めて自分の問題として考えた。
坂が帰ったあと、文子は寮にいる女たちを集めた。ひとりずつ与細を机に置く。控除の名目は違っていたが、「紹介費」「替」とかれた欄がある。何にいくら使われ、いつ払い終わるのか、説できる者はいなかった。
「澄は、これを見ていました」
文子は、京に澄から届いたをした。返事はしないでくれと頼んだのに、妹は現の所を調べていたという。
「澄が戻ったら、私が話します」
「いいえ。今度は、本が何を望んでいるかを先に聞きましょう」
そのとき、寮の話が鳴った。にいる律子からだった。坂商事が佐伯へ、澄の料の部を母親へ送るという面を届けたらしい。額の欄は空なのに、母親は署名してしまったという。
話を切ると、私は卒業証を見た。澄の名は、そこにまっすぐかれている。けれど、料も働く所も、本のがどこまで通るのか分からない。
夜が更け、寮の女たちが寝静まったころ、廊の戸が静かにいた。濡れた靴を脱ぎ、ひとりの女が入ってくる。
「澄さん」
彼女は私を見たが、文子のほうへはかなかった。
「先、あのに話をしないでください。私がここへ来たのは、姉を連れ帰るためじゃありません」
「では、何をしに来たの」
澄は鞄から枚の与細をした。
「この細に名のない子が、、同じ汽でここへ来ます」
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