"卒業写真の空いた席" 第8話
空欄のままの署名
代の父親は農閑期に稼ぎへき、兄は町ので働いている。兄の料はに入れているので、代も卒業したら同じようにするものだと族は考えていた。彼女が学したいと言ったことはあったが、計の話をされると、それ以は言えなくなったという。
「働きたくないわけじゃないんです。でも、仕事のことをらないまま京へくのが怖い。学では求票の読み方を習ったけど、料から何を引かれるかまでは聞いていません」
私は答えられなかった。指導で教えたのは、会社を選び、族と相談し、期限までに類をすことばかりだった。
代はその晩、駅の旅館で私と澄と緒に夕飯をべた。堂の壁には、京きの刻表が貼られていた。彼女は箸を持つを止め、母親がで何を言ったかを話した。父親は農閑期の稼ぎにている。兄は町ので働いているが、料はに入れている。代も卒業したら、同じようにへ送するものだと決められていた。
「働きたくないわけじゃないんです。でも、仕事のことをらないまま、京へくのが怖い。学では、求票の読み方を教わったけど、料から何を引かれるかまでは聞いていません」
私は、返す言葉がなかった。指導では、本が希望する会社を選ぶこと、族と相談すること、期限までに返事をすることばかり教えてきた。
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労働条件を確かめる具体な方法を、私は徒に教えていなかった。
駅の話から隣町の学へ連絡し、代の母親に来てもらうことになった。すぐには来られず、到着は翌の昼になるという。代は駅員の隅で、呂敷を膝に置いたまま待った。
私は職業定所へ向いた。担当者は、青葉縫製の求票と、坂商事から届いた紹介状を机に並べた。
「坂商事は、求をした会社ではありません。採用の寮の世話を頼んでいたようですが、労働条件が変わったなら、会社と本が確認しなければならない」
「青葉縫製は、もう械をかしていません」
「先、事業の縮届がています。ただ、雇用契約自体をどう理したのか、こちらには届いていません」
担当者は、私の署名を見たあと、推薦を机に戻した。「先が悪いと決めるために呼んだのではありません」と彼は言った。求を紹介する側も、紹介された子も、会社の説を信用していたのだろう。だが、続きがっていたことは、結果が正しかった証にはならない。その言葉は、私に向けられたというより、机のに並ぶ類すべてに向けられているようだった。
担当者は、何度も類を確かめた。彼の表から、すべてをっていて見逃したとはえなかった。けれど、のでは、会社の所と求の条件しか確認されていない。
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寮の運営や、料から差し引かれる額は、誰も確かめていなかった。
「学からは、推薦がていますね」
彼が言った。
私は、鞄のにあった自分の署名を見た。成績がよく、仕事に真面目で、庭の事にも理解がある。私はそういて、澄を紹介した。働く所を確かめるためにを訪ねたことは、度もなかった。
「私の確認もりませんでした」
担当者は返事をせず、坂商事へ連絡を取った。今すぐ違法かどうかを断定することはできない。与細の内容と、本が同した範囲を確かめる必がある。労働基準監督署にも相談するが、調査にはがかかるという。
「その、あの子たちの仕事はどうなるんですか」
「こちらで、別の求を探すことはできます。ただし、本の希望と、今の雇用関係を確認してからです」
事務所をると、駅の話ボックスに代がいた。彼女はへ話をかけたが、母親が留守でつながらなかった。受話器を戻すと、こちらを見ずに言った。
「先、私、京で働きたいんです。田舎へ帰ったら、の借を理由にへかせてもらえない。けれど、今の仕事が何なのか、料がいくら残るのからないままくのは嫌です」
「その希望を、職業定所のにも伝えましょう」
「私ののことまで、話していいんですか」
「どこまで話すかは、あなたが決めていい」
代は、その言葉を確かめるように、ゆっくりうなずいた。
夕方、澄が寮からやってきた。文子も緒だった。寮の女たちは、の仕事を休まされると聞いても、いつものように夕飯の支度を続けた。煮物を皿に分け、洗った茶碗を伏せる。常のを止めたら、だけがきくなるからだろう。澄は、誰かが「あなたのせいで仕事がなくなる」と言いさないか、私の顔を見ていた。私は、そう言われる能性まで否定できなかった。
彼女たちは、細をしたことでの女たちの仕事がなくなるのではないかと配していた。私は「丈夫」とは言わなかった。そんな約束をすることはできなかった。
その代わり、職業定所で聞いたことをつずつ伝えた。会社の状態、調査にかかる、次の仕事を探せる能性。澄は黙って聞き、最に尋ねた。
「先は、私がへ帰ったほうがいいといますか」
私はすぐに答えられなかった。これまでなら、危ないから帰りなさいと言っただろう。だが、それは彼女の望みを聞かずにを決めることと同じだった。
「あなたが何を選ぶか、緒に考えます。私が決めることではありません」
代の母親は、坂から「京の寮へ送れば、毎の仕送りを配する」と説されたという。自分で娘の料を取りげようとっていたわけではない。
毎いくらに届くのかが分かれば、それでよいと考えていた。借のことを娘に全部話すのはつらい。それでも、娘の収入を当てにしなければ計が回らない。そのつの気持ちが、母親のでぶつかっていた。
そのとき、寮の文子から話が入った。坂が女たちに「から仕事を休ませる」と告げたという。
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