"卒業写真の空いた席" 第11話
料の封筒
しいの見学では、現主任が械を止めて、仕事の流れを説した。布を裁つ者、縫う者、検品する者。どの程から始めるかは本の経験を見て決める。寮の部は4部で、夜にするは届けが必だが、限に帰っただけで料を引くことはないと面にあった。女たちは、規則をひとつずつ尋ねた。聞くことが失礼だとっていた彼女たちにとって、そのは仕事の見学以のものになった。
主任は、料の見込みを説したあと、「分からないことがあれば、ここで聞いてください」と言った。澄は、寮費ががるは事にらせるのか、残業があったは細に記録されるのかを尋ねた。質問を終えたあと、彼女はし恥ずかしそうに目を伏せた。けれど主任は笑わず、質問への答えをにきした。
しいでの見学を終えた女たちは、全員が同じ返事をしたわけではなかった。代は働くことを決めた。美代は、いったん故郷へ戻って親と話すと言った。ほかのは、寮をて親戚のに移ることにした。
澄は、京に残ると決めた。文子は、採用の返事をもらえるまで、しばらくしいのくで仕事を探すことになった。姉妹が同じ所にめるかどうかは、まだ分からない。
女たちは、細の裏に自分で付をき、受け取ったと元に残った額を記録し始めた。
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文子は、過の分を全部いすことはできないと言った。何分もの控除を、今から正確に示すのは難しい。元に残った封筒も何枚かしかない。それでも、彼女は枚ずつ並べ、分かる範囲で記憶をき添えた。美代も、故郷へしたの控えを探すため、寮の箱をけた。
「今になって、戻ってくるおがあるかどうかも分からないのに、こんなことをするがあるんでしょうか」
美代が尋ねた。
「返るかどうかを決めるのは、記録を見たです。でも、何も残さなければ、あなたたちの話がなかったことにされる」
担当者の返事は、希望を約束するものではなかった。それでも女たちは、を捨てずに取っておくことにした。
話しいの翌、担当者は女たちに、細のほかに雇用条件が分かるや、寮へ入ったを記したがないか尋ねた。文子は何分もいせないと言った。美代は故郷へしたの控えを探し始めた。返ってくるおがあるかどうかも分からないのに、記録を集めるがあるのかと、ひとりが尋ねた。
「返るかどうかは、記録を見たが決めます。でも何も残さなければ、私たちの話がなかったことにされる」
澄の言葉に、女たちはを止めなかった。
職業定所の担当者は、坂商事の控除について、関係類を集めるよう女たちに伝えた。
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与細は返してもらえる能性があるが、本が署名した面のを確かめる必がある。すぐにおが戻るわけではない。女たちは、それぞれのに自分の名をき、話した内容を確認した。
封筒を受け取った美代は、そのでを数えた。帰郷の切符を買える額には届かず、彼女はしばらく考えてから、職業定所の担当者へ相談にくことにした。坂の返事を待つだけではなく、別の仕事も探す。文子は、過の分をすべて取り戻せなくても、これから働く所を選び直すと言った。女たちはずつ違う決断をしていた。
坂からは、ひとりずつに封筒が届いた。には未払い分の部と、「替を差し引いた残額」とかれたが入っていた。全額ではない。説も分ではなかった。それでも、封筒をけた女たちは、まず自分ので額を数えた。
澄は、自分の封筒から千円札を枚取りし、母親に差しした。
「今の分。りなかったら、次にまた相談する」
母親は受け取るまでにがかかった。
「全部じゃないんだね」
「全部は無理。自分の費と、寮費がある。それに、し残しておきたい」
「何のために」
「夜の学へけるかもしれないから」
母親は、娘の顔を見た。へけなかったことを、澄は忘れていない。けれど、今から勉を続けるがあるのか、まだ確かな話ではない。
「勉したいなら、すればいい」
母親はそう言った。許したというより、初めて娘の希望を聞き返したような声だった。
そのの夕方、私はへ戻る切符を買った。卒業式から、もう1週が過ぎている。学では、空いた席の写真をどうするか、と話さなければならなかった。
駅のホームで、文子が見送りに来た。
「先、澄を連れて帰らないんですね」
「本が帰ると言ったら、緒に帰るつもりでした。でも、今はここで働くと決めた」
「私も、まだ帰れない」
文子は笑おうとしたが、うまくいかなかった。
「母は、すぐには分かってくれないといます」
「すぐに分かってもらわなくていい。を続けてください」
汽が入ってきた。私は文子に、卒業証を預けた。澄に渡してもらうつもりだった。彼女の名がかれた筒は、京の寮へ持って帰ることになった。
窓から、文子がさくを振るのが見えた。私は、帰ったら澄の机を片づけようとった。だが、机のには、彼女が残したものがまだある。鉛の削りかす、読みかけの本、卒業写真の注文票。
に着くと、律子が駅で待っていた。
「先、写真ができています」
封筒のには、クラスの集写真が入っていた。澄の所は空いたままだ。皆はその空を埋めるように肩を寄せている。私は写真の端を持ち、いあいだ眺めた。
「澄さん、帰ってくるかな」
律子が聞いた。
「分からない。でも、あの子が今どこで何をしているかは、もうより分かる」
そう答えたとき、私はようやく、捜すことと連れ戻すことは同じではないとった。
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