みかん小説
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"卒業写真の空いた席" 第12話

もう枚の写真

になり、庭の桜が咲いた。私はしいの希望をまとめていた。までなら、求票を読みげ、希望する徒の名をき、推薦に署名して終わっていた。今は、会社の所だけでなく、働く所、寮、費、料から引かれるものを、できる限り確かめてから話すようにしている。

それだけで、すべてが全になるわけではない。さなには、学が訪ねてもがいないことがある。求票にかれた担当者が、実際の寮のことをらないもある。それでも、らないまま送りすことを、もう当然とはえなかった。

5の終わり、澄からが届いた。封筒には、墨田区のしいの所がかれていた。字は、違いなく本のものだった。

「先へ。働き始めて2かになりました。最初の料は、寮費と費を引かれても、自分で数えられるだけ残りました。母へ送った分の控えも、私が持っています。代さんは夜の学へ通うことにしました。私はまだ迷っています。姉は、の面接を受けるそうです。3で同じ部にめるかは、まだ分かりません」

代からも葉が届いていた。彼女はしいで働きながら、夜の学へ通い始めたという。へ送る額は母親と相談し、封筒の裏に毎き留めているそうだ。

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「自分の名でけるが増えました」と、最に添えてあった。細い字だが、そこには以より迷いがなかった。私はその葉を机の引きしにしまった。切に、そっと。

の最には、卒業証を机のに置いた写真が同封されていた。証の隣に、澄の作業着と、読みかけの国語の教科が写っている。彼女は、京で働きながら、夜にしずつ勉を始めたという。

私は、その写真をに見せた。

「本が元気なら、それでいいじゃないか」

はそう言った。彼が悪で学を止めたわけではない。学の責任を曖昧にしたかったのだろう。けれど、今では彼も、求票を確かめるために職業定所へ向いている。

「次の卒業写真には、就職で先に発する徒の分も、別に撮っておきましょう」

私は提案した。

「卒業式にいない子だけ、特別扱いするのか」

「写真に写れない理由を、本の都だけにしないためです」

はすぐには答えなかった。やがて、卒業式のに、就職する徒たちの写真を撮ることを認めた。

は、写真を撮る期を指導の予定に加えた。卒業式のににわない徒には、発に撮する。就職先が決まったあとも、本が希望すれば、学から族へ連絡する。決まりを増やしただけで問題がなくなるわけではない。

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それでも、卒業の名を呼ぶとき、返事のない席をそのままにしないための話しいが、職員で始まった。

休み、澄は度だけへ帰ってきた。文子も緒だった。姉妹は、母親と同じ卓を囲んだが、のように何もなかった顔では座れなかった。母親は、借の残りと計のことを説した。澄は、毎送れる額を伝えた。文子は、今ので採用されたことを話した。

話しいはく終わらなかった。誰もが、すぐに納得したわけではない。父親の仕事はまだ戻らず、弟と妹の学費も必だった。京で受け取ったおだけで、の事が解決することはない。

帰る、澄は学へ寄った。私は、卒業写真をした。空いていた席を見て、彼女はし笑った。

「私、こんなに皆に避けられてたんですね」

「あなたがいないから、皆が寄りすぎたの」

「じゃあ、こっちのほうがいい」

澄は、もう枚の写真を机に置いた。京のので、代と文子と並んで写っている。は仕事着で、顔は疲れていたが、3とも正面を向いていた。写真の裏には、それぞれの名がいてあった。

私は、卒業写真の横にその枚をてかけた。空いた席が埋まったわけではない。澄がへ戻って、昔と同じ所に座ったわけでもない。ただ、彼女がどこかで誰かの名に置き換えられることなく、自分の名で働いている。

それが分かる写真だった。

「先、私たちのこと、学で話してもいいですか」

「あなたが話したいことだけなら」

「じゃあ、料のことを話します。いくらもらって、いくら引かれて、何に使うか。らないまま働き始める子が、次にないように」

澄は、庭の桜を見げた。発のには、卒業の写真にも写れなかった。今もへ通っているわけではない。の借は残り、姉妹の暮らしも別々のままだ。

それでも、彼女は自分の料を自分で数えるようになった。自分の名で、をいている。次に何を学ぶかも、誰にいくら送るかも、自分で決めようとしていた。

卒業写真の裏には、撮した付と写っている徒の名を私がきした。澄の名の横には、さく「京」と記した。から見たには、それだけでは何も分からないだろう。それでも、彼女がただ欠席したのではなく、族の事と自分の希望ので決めたにそこにいなかったのだと、忘れないためだった。

翌の卒業写真を撮る、私は就職が決まった徒たちにも先に集まってもらった。全員が同じに発できるとは限らない。の事で式を欠席する子もいる。それなら、いなくなったあとで空席を囲むのではなく、発に枚撮ればいい。写真は、昨よりし広いを用した。

私は列の真んを空けず、ひとりずつの名を確かめてからシャッターを切ってもらった。

その写真を見るたび、ひとり分の席を空けたままにせず、本の声を聞くまで待つことをいす。

そういながら、私は教の窓を静かに閉めた。

私は、あのの写真を捨てずに残した。空いた所を見るたび、誰かがいなかったのではなく、私たちがそののき先をらなかったのだといせるように。

※本作は昭40ごろの集団就職を背景にした創作です。登物・団体・来事はすべて架空のものです。

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