"正月、娘を家政婦扱いした義実家――私が下した決断" 第2話
皿の消滅と奪われる事
「おい、腹減ったんだけど。飯まだかよ?」 缶ビールを空にした賢が、テーブルの端を指でトントンと叩きながら催促してきました。
「あと分でできるから。美咲を呼んで、お茶碗とお箸を並べてくれる?」 私が振り返って頼むと、賢はあからさまに嫌そうな顔をして眉をひそめました。
「はぁ? 俺、仕事から帰ってきたばっかりだぜ? なんで事まで伝わなきゃいけないんだよ」 「私もフルタイムで働いて、買い物して帰ってきたばかりなんだけど」
「俺のほうが稼いでるし、疲れてるんだよ。くしてくれよ」 そう吐き捨てると、賢は再びスマホの画面に目を落としました。
どちらが疲れているかを競いっても、毛な言い争いになるだけです。 私はそれ以何も言わず、美咲の部へ向かって声をかけました。
「美咲、ご飯できたわよー」 「はーい、今く!」
部からてきた美咲は、すぐに私の元を見て、何も言わずに分の箸とコップを並べ始めました。 父親であるはずの賢がソファでふんぞり返っている横で、学の娘のほうがよほど周囲を見ていていました。
「いただきます」 卓の央に、来ての豚肉と野菜の噌炒めを盛った皿を置きました。
その瞬でした。 賢のが目にも留まらぬ速さでき、きな取り箸ではなく自分の箸で、皿のおかずを盛りにすくい取ったのです。
広告
回、回、回。 美咲と私が自分の皿にを伸ばす暇すらありませんでした。
「ちょっと、賢! 取りすぎよ! まだ私と美咲の分を取り分けてないでしょ!」 私がわず声を荒らげると、賢はいっぱいに肉を頬張りながら、モゴモゴと答えました。
「ふぁ? まだ皿にちょっと残ってんだろ。細かいこと言うなよ」 皿に残っていたのは、崩れたキャベツの破片とわずかなタマネギだけでした。
メインの豚肉は、すべて賢の皿のへと消えっていました。 美咲は箸を持ったまま固まり、困惑したように私と皿を交互に見つめています。
「美咲、これべなさい」 私は自分の皿に辛うじて残っていたわずかなお肉を、娘の茶碗のへと移しました。
「お母さん、いいよ。お母さんもべてないじゃん」 気を使う娘の言葉に、胸が締め付けられるように痛みました。
賢は私たちのやり取りなど目に入らない様子で、ガツガツとご飯をかき込んでいます。 そして、あっというに自分の分を平らげると、美咲の皿に線をらせました。
「美咲、その唐揚げ、べないなら俺がもらうぞ」 美咲の箸が触れる寸だった唐揚げに、賢の箸が伸びてきました。
「やめて! 今から美咲がべるの! あなた、自分の分はもう全部べたでしょう!」 私がを乗りして遮ると、賢は骨に嫌な顔をして舌打ちをしました。
広告
「ケチくせえな。個くらい減ったってにやしないだろ。育ち盛りの男は腹が減るんだよ」 「育ち盛りなのは歳の美咲のほうよ! 過ぎたが子どものおかずを奪ってどうするの!」
私のりの声にも、賢は「はいはい、悪かったよ」と軽く受け流すだけでした。 そして卓をつと、蔵庫の野菜を勝にガサゴソと漁り始めました。
「おっ、これ美そうじゃん。いただき」 「ああっ! それ、のお弁当用に取り分けておいた卵焼きとウインナーよ!」
私の制止の声が届くよりもく、賢はタッパーの蓋をけ、づかみでへ放り込みました。 もぐもぐと咀嚼しながら、美しそうに喉を鳴らしています。
目ので繰り広げられる、底なしのい尽くし。 の都や、のお弁当のことなど、この男のにはミリもしていないのです。
費は以の倍くにねがり、作っても作っても蔵庫のはい尽くされていく。 交際に見せていた「いで男らしいところ」の正体は、ただの「卑しい無神経さ」でした。
(まだ再婚して……私のがりないだけなの……?) 胸の奥に鉛のようなたい溜息を沈めながら、私は空っぽになったタッパーを見つめていました。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
15年無給で働いた若女将を追い出した老舗旅館の末路
老舗温泉旅館「鶴の湯」に嫁いで15年。若女将の美里は一度も給料を受け取らず、料理から接客まで休む間もなく働いてきた。ところがある日、義母と夫はSNSで人気を集める若い女性を新しい若女将に迎え、美里を「時代遅れ」と追い出してしまう。長年守ってきた味も、常連客との約束も、彼らには何の価値もなかった。しかし、美里が去った翌朝から、旅館では思わぬ問題が次々と起こり始める。15年間、あの宿を本当に支えていたのは誰だったのか。職場逆転|人生逆転|嫁姑|第二の人生2.2万字5 24 -
完結第15話
離婚半年後、元義母が私の新居を奪いに来た
離婚から半年。十歳の娘ユアと新居で暮らし始めたゆいのもとへ、元義母の智恵子が引っ越しトラックを連れて現れた。「今日から同居ね」と一番広い部屋を使おうとする智恵子は、その家を息子が買ったものだと信じ込んでいた。実際には、ゆいが自分の収入で購入した家だった。離婚の事実を告げても引き下がらず、今度は不倫を疑い始める元義母。さらに、元夫が隠していた裏切りまで明らかになり、ようやく手に入れた母娘の平穏な暮らしが脅かされていく。嫁姑|裏の顔|絶縁|金銭問題|不倫2.0万字5 156 -
完結第13話
産後の私に義母の世話を押しつけた夫の絶縁宣言
二人目を出産したばかりのレナは、母に二週間だけ家事と長男の送迎を頼んでいた。ところが夫の悠人は、相談もなくその約束を断り、代わりに自分の母親を呼んでしまう。手伝いに来たはずの義母は食事も洗濯もレナ任せ。夫に訴えても「家族なんだから」と取り合ってもらえない。とうとう子ども二人を連れて実家へ帰ったレナに、悠人は「母さんとは縁を切る」と宣言する。しかし、その言葉を聞いたレナが夫に求めたのは、思いがけないことだった。嫁姑|第二の人生|絶縁|親子関係1.3万字5 50 -
完結第15話
夫の出張中に義両親が居座った――電話で判明した正体
夫の海外出張中、蒼井の家に突然やってきたのは、十年ぶりに顔を合わせる義両親だった。「息子から同居の許可をもらった」と言い張る二人は、家の料理を食べ尽くし、蒼井や娘のメイの服まで勝手に着て破いてしまう。追い出そうとしても、二人は居座るばかり。頼みの夫は電波の届かない場所にいて、連絡も取れない。そんな中、ようやく夫から電話がかかってくる。ところが、蒼井の訴えを聞いた夫は、思いもよらないことを口にした。厚かましい訪問者に振り回された母娘の、騒がしくも痛快な逆転劇。嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場1.4万字5 169