"夫の出張中に義両親が居座った――電話で判明した正体" 第10話
蒼井の覚と「と太陽」
『くそっ……! なんて奴らだ!』 画面の向こうで、政宗が悔しそうに拳を握りしめていました。
『蒼井、メイ、すまない……! 俺がすぐに帰れればいいんだが、を乗り継いでも最ではかかる……!』
「まさちゃん、丈夫だよ」
私のからたその声は、自分でも驚くほど穏やかで、静かな響きを帯びていました。
スマホの画面を覗き込むと、政宗と本物の義両親が、配そうに私の顔を見つめていました。 私はふっと息を吐きし、元に微笑みを浮かべました。
「まさちゃんの両親だとってたから、嫁として失礼のないようにしてたの。 でも、赤のの棒だって分かったなら……もう、慮なんてミリもいらないわ」
画面の向こうの政宗の顔が、サッと青ざめました。 『……あ、蒼井? お、まさか……』
「やれることがあるから、してね」 私は優しくそう告げると、通話をスッと終させました。
リビングを振り返ると、クズノ夫婦が腕を組んでこちらを見ろしていました。
「なんだい、諦めたのかい? どんなに睨みつけたって無駄よ。私たちはびくともしないんだから」 老婆がせせら笑います。
私はゆっくりとキッチンのカウンターへ歩み寄り、腕を組みました。
「ねえ、あなたたち。『と太陽』の童話ってってる?」
「ああん? と太陽だあ?」 老が眉をひそめました。
広告
「旅のコートを脱がせる勝負をした、名なイソップ寓話よ」 私は穏やかな調で語りかけました。
「が力づくでびゅうびゅうとを吹き付けても、旅はコートを固く押さえて脱がなかった。 けれど、太陽がかくぽかぽかと照らすと、旅は暑さに耐えかねて、自分からコートを脱いだの」
クズノ夫婦は顔を見わせ、で笑いました。 「それがどうしたっていうのよ」
「力づくで無理やり追いそうとするより、相が自分からていくように促すほうが、はるかに賢いってことよ」 私は目を細め、満面の笑みを浮かべました。
「だからね、私は太陽になるの。 あなたたちが、自分のでうようにして、泣き叫びながらこのから逃げしていくようにしてあげるわ」
私の笑顔を見た瞬、クズノ夫婦の巨体が、なぜかピクリと恐怖に震えました。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
15年無給で働いた若女将を追い出した老舗旅館の末路
老舗温泉旅館「鶴の湯」に嫁いで15年。若女将の美里は一度も給料を受け取らず、料理から接客まで休む間もなく働いてきた。ところがある日、義母と夫はSNSで人気を集める若い女性を新しい若女将に迎え、美里を「時代遅れ」と追い出してしまう。長年守ってきた味も、常連客との約束も、彼らには何の価値もなかった。しかし、美里が去った翌朝から、旅館では思わぬ問題が次々と起こり始める。15年間、あの宿を本当に支えていたのは誰だったのか。職場逆転|人生逆転|嫁姑|第二の人生2.2万字5 24 -
完結第15話
離婚半年後、元義母が私の新居を奪いに来た
離婚から半年。十歳の娘ユアと新居で暮らし始めたゆいのもとへ、元義母の智恵子が引っ越しトラックを連れて現れた。「今日から同居ね」と一番広い部屋を使おうとする智恵子は、その家を息子が買ったものだと信じ込んでいた。実際には、ゆいが自分の収入で購入した家だった。離婚の事実を告げても引き下がらず、今度は不倫を疑い始める元義母。さらに、元夫が隠していた裏切りまで明らかになり、ようやく手に入れた母娘の平穏な暮らしが脅かされていく。嫁姑|裏の顔|絶縁|金銭問題|不倫2.0万字5 156 -
完結第15話
正月、娘を家政婦扱いした義実家――私が下した決断
43歳のゆり子は、13歳の娘・美咲を連れて再婚した。しかし、結婚前は優しかった夫の賢二は、家事を押しつけ、娘の食事まで平気で奪うようになる。 迎えた初めての正月。夫の実家へ帰省した母娘を待っていたのは、休む間もない家事と姑からの冷たい仕打ちだった。さらに元旦、親戚の子どもたちがお年玉をもらう中、美咲だけが「他人だから」と仲間外れにされてしまう。人生逆転|嫁姑|夫婦|第二の人生|絶縁|親子関係1.9万字5 263 -
完結第13話
産後の私に義母の世話を押しつけた夫の絶縁宣言
二人目を出産したばかりのレナは、母に二週間だけ家事と長男の送迎を頼んでいた。ところが夫の悠人は、相談もなくその約束を断り、代わりに自分の母親を呼んでしまう。手伝いに来たはずの義母は食事も洗濯もレナ任せ。夫に訴えても「家族なんだから」と取り合ってもらえない。とうとう子ども二人を連れて実家へ帰ったレナに、悠人は「母さんとは縁を切る」と宣言する。しかし、その言葉を聞いたレナが夫に求めたのは、思いがけないことだった。嫁姑|第二の人生|絶縁|親子関係1.3万字5 50 -
完結第15話
生活費を奪って消えた母、20年後の再会で私が頼んだもの
小学四年生の秋、美咲の母は家の生活費と預金を持ち去り、突然姿を消した。残された父は工場で懸命に働きながら娘を育て、給料日には食堂へ連れていってくれた。「好きなものを食べなさい」と笑う父が、自分のために頼むのはいつも水だけだった。苦しい日々を二人で乗り越え、大人になった美咲の前に、長年音信不通だった母が現れる。何事もなかったように振る舞う母を、美咲は高級レストランへ誘った。そこで彼女が選んだものには、父と過ごした忘れられない日々への思いが込められていた。夫婦|絶縁|親子関係|金銭問題1.9万字5 494