"「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨" 第5話
腐敗した警察との茶番
品川警察署のくにある、古い記録保管庫。 埃の積もったスチールキャビネットの奥から、渡辺は〇〇の方事件の捜査ファイルを引っ張りしました。
黄く変したファイルをいた瞬、渡辺の表は凍りつきました。
「なんだこれは……捜査が、たったで打ち切られている……?」
が同に姿を消したという、本来なら規模な公捜査に発展すべき事案でした。 それにもかかわらず、現となったれの鑑識記録は枚もなく、敷の捜索すらわれていませんでした。 集められていたのは、主である郎がいた「目を盗んで男と逃げた」という申告と、それをそのまま鵜呑みにした数枚の聴取メモだけだったのです。
そして、捜査終結の決済欄に押されていたのは、ひときわきな赤い印鑑でした。
『品川警察署 本岩雄』
当の署だった男の名でした。 渡辺はすぐに警察のデータベースを叩き、本岩雄の経歴を追跡しました。 画面に表示された職歴の推移を見た瞬、渡辺は机を激しく叩きつけました。
本は、事件を「単なる夜逃げ」として処理したわずかか、定を待たずに警察を期退職していました。 そしてその翌、郎が理事を務めていた『青葉奨学財団』の常任理事へと、異例のりを果たしていたのです。
広告
勤義務はに度あるかないか。 それにもかかわらず、本は財団から毎百万円以の額な役員報酬を受け取り、級と法カードを乗り回していました。
「殺事件をもみ消した見返りに、理事の子と黒いを買い取ったのか……!」
警察組織のトップが、幼い命を奪った殺鬼のを握り、真実をのへ緒に埋めてていたのです。
翌、渡辺は県内の級ゴルフへと向かいました。 青々とした芝ので、取り巻きの実業たちと談笑しながらパターを構えていたのが、代半ばになった本岩雄でした。
「本元署ですね。〇〇、邸の政婦母娘失踪事件についてお聞きしたい」
警察帳を突きつける渡辺に、本は鏡を指先で押しげ、笑を浮かべました。
「ああ、ニュースで見たよ。庭から骨がたそうだな。だが、それが私と何の関係があるんだね?」
「あなたは現の捜索もせず、わずかで捜査を打ち切った。そしてその直にの財団へっている!」
渡辺が詰め寄ると、本の目から笑みが消え、猫のような酷なが宿りました。 本は渡辺の胸元に差し指を突きて、元で嘲笑うように囁きました。
「おいおい、渡辺係。法律の勉をやり直してきたらどうだ? 仮にあの庭に体を埋めたとしてもだな、『体遺棄罪』の公訴効は当の法律で、法改正でも最だ。
〇にはとっくに効が成しているんだよ。 が殺したという証拠がどこにある? 凶器はあるのか? 目撃者はいるのか? 証拠もないのに功名で偉い先を嗅ぎ回っていると、君の警察官、瞬で終わるぞ」
本は唾を吐き捨てるように言い残すと、待たせていた級に乗り込み、悠然とっていきました。
効の壁、失われた凶器、そして権力者たちの結託。 たいが吹き抜ける、渡辺は拳を握りしめ、りゆくのテールランプをただ睨みつけるしかありませんでした。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
「寄付は千円ぽっち」笑われた老夫婦の30年の秘密
町内会の夏祭りで、寄付が千円しかないと笑われた68歳の静子。古い自転車に乗り、夫の勉と慎ましく暮らす彼女は、婦人会長から「ケチな人」と見下され、記念式典の受付役まで外されてしまう。それでも静子は言い返さない。夫婦には、30年間、毎月15日に欠かさず続けてきた秘密の約束があった。やがて婦人会の記念式典に、育英基金の支援で大学を卒業した青年が現れる。青年が大切に持っていた一通の手紙をきっかけに、会場の空気が思いがけない方向へ変わり始める。人生逆転|夫婦|真実|金銭問題1.9万字5 690 -
完結第12話
昭和35年、上野駅に現れた二人の「ハルコ」
昭和35年春。集団就職列車を迎えに上野駅へ来た食堂の主人は、「山本春子」と呼ばれた少女が二人同時に手を挙げたことに戸惑う。一人は店で働くために上京した春子。もう一人の晴子は、三年前に東京へ出た姉を捜していた。姉は故郷へ帰ったことになっているのに、家族は誰も会っていない。不審に思った主人が古い雇用通知書を調べると、晴子の帰郷を証明する書類に、自分の署名が残されていた。誰が少女たちの名前を使い、何を隠していたのか。集団就職の時代を背景に、書類一枚に翻弄された若者たちの人生を描く物語。時代|歴史|昭和|真相2.3万字5 0 -
完結第15話
「このおばあちゃん、危ない」六歳の孫が見たもの
六十八歳の静子は、夫を亡くしてから一人暮らしをしている。近所の蛇田さんは、毎日のようにお菓子を配って歩く親切なおばあさん。ところが、六歳の孫・小春だけは、なぜか彼女を避けていた。 ある日、三人でスーパーへ出かけると、小春が突然、静子の手を引いて言った。 「ばあば、このおばあちゃん、あぶない」 その直後、店員に呼び止められた蛇田さん。小春はいったい何に気づいたのか。お菓子に隠された秘密と、一人暮らしの老人たちが抱える寂しさを描く物語。人生逆転|祖父母と孫|真実|真相1.6万字5 114 -
完結第12話
最後の伝書鳩
昭和19年、南方の山地。撤退を命じられた部隊は、谷に残された九人の兵士と連絡が取れなくなっていた。 通信兵の関谷清一伍長は、彼らが「未帰還」の一言で片づけられることに納得できない。しかし、無線は故障し、残された伝書鳩は最後の一羽だけ。報告書が敵の手に渡れば、百人以上の仲間まで危険にさらされる。 命令を守るか、九人の居場所を知らせるか。関谷は報告書の裏に、九人の名前と谷の場所を書き込んだ。 戦場で一枚の報告書と一羽の鳩に、九人の命を託した通信兵の物語。時代|歴史|昭和|真実2.3万字5 88 -
完結第12話
150万円を払わせたママ友、次は寿司300万円
夫の昇進祝いで家族とレストランを訪れたひまり。楽しい食事の最後に告げられた会計は、なんと150万円。原因は、顔見知り程度のママ友・ぽて子一家が大量の料理を注文し、勝手にひまりへ支払いを押しつけたことだった。仕方なく立て替えたものの、返金を求めると渡されたのは、まさかのポテトチップスの空袋。しかも数日後、ぽて子は高級寿司店で新たな計画を立て始める。「ママ友なんだから払って当然」と言い張る一家に、ひまりが取った行動とは?因果応報|夫婦|真相|親子関係|金銭問題|修羅場1.2万字5 1016 -
完結第12話
毎朝「出ていけ」と怒鳴る隣人、測量の日に顔色が変わった
「引っ越しなさい!」毎朝七時、向かいの家の奥さんに怒鳴られる六十八歳のしず子。生まれ育った家を手放す気はないが、理由のない嫌がらせは日に日にひどくなり、相手の夫まで引っ越しを勧めてくる。しず子は言い返す代わりに、毎日の出来事をノートに書き留めていた。そんなある日、隣人の土地売却をきっかけに境界の測量が行われる。測量士が示した一本の線と、亡き祖父が残した古い封筒。そこには、長年の隣人関係を覆す意外な約束が隠されていた。怒り|真実|修羅場1.3万字5 522 -
完結第12話
新幹線で母娘の席を奪った女、現れた女性を見て絶句
五歳の娘パニミと夏休みの帰省を楽しみにしていた、弁当店を営むシングルマザーのパニコ。新幹線の自由席でようやく親子並んで座れたものの、見知らぬ女性に突然コーヒーをこぼされてしまう。服を拭くため席を外したわずかな間に、その女性は荷物を床へ放り出し、二人の席を奪っていた。娘を守るため、悔しさをこらえてデッキへ向かったパニコ。そこで偶然、日頃から世話になっている立花会長と再会する。事情を聞いた会長が一緒に席へ戻ると、先ほどまで威張っていた女性の顔色が一変して……。怒り|真相|親子関係|修羅場1.2万字5 1125 -
完結第12話
フクと小さなおにぎり
ペットショップの隅で「特価品」の札をつけられていた猫、フク。以前の飼い主に一度迎えられながら、すぐに店へ戻された過去があった。幼い娘ゆいに心を動かされ、フクを家族に迎えた俺と妻の由佳。少しずつ新しい家に慣れていくフクだったが、なぜか人前では決してご飯を食べようとしない。その理由を知った俺たちは、無理をさせずに見守り続ける。迎えてから約一年が過ぎたある夜、二歳になったゆいが小さな椅子を運んできた。娘の何気ない行動が、フクの心を少しずつ変えていく、家族の温かな物語。感動|真実1.1万字5 945 -
完結第10話
消えた卵の秘密
茜の家では、父の再婚相手・美津江が届けてくれる卵が、なぜか毎回なくなっていた。夜中につまみ食いをする夫の陽斗を疑っていた茜だったが、ある日、卵をこっそり持ち出す小学一年生の娘・凛を目撃する。「急に卵が嫌いになった」と泣く娘。しかし、いつもは素直な凛の様子はどこかおかしかった。そんな中、美津江から再び大量の卵が届く。茜は娘のために手作りプリンを用意するが、それを食べた美津江は、材料を聞いた途端に顔色を変えてしまう。娘が必死に隠していた秘密とは、いったい何だったのか。祖父母と孫|真実|真相|第二の人生1.4万字5 778