"葬儀よりハワイ" 第2話
夜、吉郎が台所のちゃぶ台でを抱えていると、子がいお茶を置いた。
「あなたがやりたいなら、やったらいいとう」
吉郎が顔をげると、子は静かに続けた。
「うまくいかなかったら、また2でやり直せばいいんだから」
その言で、吉郎の腹は決まった。
さなを借り、械を古で揃え、吉郎は部品製造の会社を起こした。最初の数は苦しかった。注文が途切れ、資繰りに困る夜もあった。けれど子は、いつも黙ってそばにいてくれた。
子は経理をに引き受けた。帳簿をつけ、請求をき、とのやり取りもこなした。もともと計算の得なだったが、商売を始めてからはさらに正確になり、税理士にもされるほどだった。
まさに23脚だった。
やがて会社は、しずつ取引先を増やした。メーカーの請け仕事も入り、従業員を数雇えるまでになった。きな会社ではなかったが、堅実で信頼される会社になった。
そのに、1息子の正も成した。
正がまれたのことを、吉郎は今でも覚えている。病院の廊でうろうろしていた、赤ん坊の泣き声が聞こえた。気づけば吉郎は泣いていた。
この子には、自分のような苦労はさせたくない。
それは吉郎と子、2共通の願いだった。
正は素直に育った。勉もでき、当たりもよかった。
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元の公から学へみ、卒業は都内の械メーカーに就職した。
正が30歳になった、紹介したいがいると連絡があった。
相は美。正より2歳で、都内の裕福な庭に育った女性だった。髪はきれいに巻かれ、もそうなワンピース。爪にはきらきらしたネイルが施され、首には細いのブレスレットが揺れていた。
吉郎は正直、にさな引っかかりを覚えた。
この子は苦労をっているのだろうか。
だが正がまっすぐな目で言った。
「このと結婚したいんだ」
隣の子が、穏やかに微笑んだ。
「正が選んだなら、きっと丈夫ね」
その言葉で、吉郎はそれ以何も言わなかった。
結婚をに、吉郎はの貯蓄と退職から3500万円をし、息子夫婦のために軒を購入した。駅から歩いて15分ほどの宅にある、庭付きのだった。
「好きに使いなさい。おたちのしい活だ」
正はくをげた。美もにこにこ笑いながら言った。
「ありがとうございます、お父さん」
ただし吉郎は、1つだけ商売としての判断をしていた。
の名義は、自分のままにしておいたのだ。
子にだけ、こっそり言ったことがある。
「まあ、いざっての保険みたいなもんだ。何もなけりゃ、そのうち正の名義に変えてやるよ」
子は笑った。
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「あなたらしいわね」
そのの吉郎はらなかった。
この何気ない判断が、10数、妻を失った自分を救うたった1つの武器になることを。
正夫婦が居に移ってからも、吉郎と子の暮らしはきく変わらなかった。
毎朝6に起き、2で朝ご飯をべる。子が入れたほうじ茶をみながら庭のを眺め、昼は所を散歩し、夕方になれば料理を囲む。穏やかで静かで温かい々だった。
あるの夕暮れ、縁側に並んで座りながら、吉郎はぽつりと言った。
「なあ、子。俺の、おがいなかったらどうなってたかな」
子はし考えてから、おかしそうに笑った。
「さあ。でも、きっとおにぎりを作るがいなくて困ってたんじゃない?」
吉郎はわず吹きした。
「違いない」
2で笑いうが、永に続くようにえた。
だがは、1番切なものから順に奪っていく。
子の体に異変が起き始めたのは、子が78歳になったの12だった。朝、吉郎が居で聞を広げていると、台所から乾いた咳が聞こえた。
「邪か。最えるからな。温かくしとけよ」
吉郎が声をかけると、子は台所から顔をして笑った。
「丈夫よ。ちょっと喉がいがらっぽいだけ」
最初はその程度だった。
し咳がる。し欲が落ちる。齢を考えれば、誰にでもあることのようにえた。
しかしがけて1になっても、咳は向に治まらなかった。むしろににひどくなっていった。夜に何度も目を覚まし、布団ので体を丸めて咳き込む子を、吉郎は配そうに見つめた。
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