"消された妻の通院日" 第4話
いつもならったまま、昼の支度を始めるだった。
数の朝。
物音がした。
廊をる音。
スリッパがを打つ音。
話がに落ちる音。
秀が幸子の名を呼んだ。
「幸子!」
声はく、震えていた。
幸子は台所のに倒れていた。
救急が来るまで、秀はずっと幸子の隣にいた。名を呼び続けた。
幸子の目が、ほんのしいた。
「げさだな」
そう言ったのは、今度は幸子ではない。
秀のに残る、昨までの自分の声だった。
病院の受付で、秀は保険証をした。
けれど、それは自分のものだった。
窓のが確かめ、静かに返した。
幸子の保険証はどこか。
薬の帳はどこか。
秀は封筒をひっくり返した。
いつもそこにあった。
けれど、確かめたことがなかった。
「奥様は現、どんなお薬をまれていますか?」
秀は答えられなかった。
「胸の痛みはいつ頃からですか?」
秀は封筒を見た。
には、自分の診察券と、幸子が今朝のために用した自分の予定メモだけが入っていた。
「分かりません」
それしかてこなかった。
受付の台には、記入するためのが置かれていた。
名、所、これまでの病気、いつもんでいる薬、倒れるまでの様子。
秀はペンを持った。
けれど、最初の欄でが止まった。
幸子がいつから痛みをじていたのか。
何の薬をんでいたのか。
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どこの先にかかっていたのか。
全部、幸子だけがっているようで、ペンはので止まったままかなかった。
こんなにく緒にいたのに、けることがない。
その空欄が、秀には叱責よりもかった。
昼、健太が病院に着いた。
優は台所の引きしから持ってきた通院メモと、茶の封筒を健太に渡した。
健太がページをめくると、最初から最まで父の名が続いた。
薬は朝ご飯の。
血圧の記録。
塩分に注。
保険証。
筒。
母の名は最のページの隅にあった。
「胸の痛み」
「めまい」
「階段で息切れ」
その言葉には横線が引かれていた。
そのに、い言葉があった。
「私の分はで」
健太は、そのページで止まった。
母の字がさいことに、今さら気づいた。
父の名の横では、母の痛みまで慮しているように見えた。
医師は廊でし話した。
「もうしく相談できていれば、選べることはかったといます」
責める声ではなかった。
事実だけが、静かに置かれたように聞こえた。
秀はうなずいた。
それしかできなかった。
優が茶の封筒から、秀がけられなかったを取りした。
折り目をくと、にきくかれていた。
「紹介状」
胸の詳しい検査を勧めるだった。
付は8ヶ。
端は柔らかく、裏にはさな付箋が貼ってあった。
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「で受付にく練習」
健太は声を失った。
封筒の底から、もう1枚いがてきた。
タクシーの領収だった。
付は、カレンダーの鉛の丸と同じだった。
幸子はそのに、病院のくまでっていた。
けれど通院メモの同じ付には、こういてあった。
「秀さんの薬が切れる。先に薬局」
健太がさく言った。
「母さん、でこうとしてたのか」
誰も答えられなかった。
さらにページをめくると、番にさな文字があった。
「健太には言わない。仕事の途に配をかける」
健太はページを閉じられなかった。
自分が忙しいと言った。
母からの話にく返した。
その全部が、今の文字とつながった。
「丈夫って、俺たちを黙らせる言葉だったんだな」
声にしたつもりはなかった。
けれどその言葉だけが、病院のい壁に残った。
幸子が退院してきた、玄関のがり框にはすりがついていた。
健太がに取り付けたものだった。
幸子は度それにを触れて、何も言わずにへ入った。
台所は変わっていなかった。
ストーブの位置も、鍋の所も、布巾の折り方も同じだった。
ただ、噌汁のだけが、いつもよりしかった。
秀が気をつけてめているだけだった。
テレビは朝からついていたが、音はさかった。
秀は何度かをきかけた。
けれど言葉にならなかった。
幸子は秀のに湯みを置いた。
「お薬はみましたか?」
それだけ言って、また台所に戻った。
数が過ぎた。
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