"スイスへ消えた妻" 第4話
私は息を潜めながらノートパソコンをきます。
画面の向こうに映っていたのは、スイスのマイケルでした。
かつて仕事で助けたことのある、プライベートバンクの幹部です。
「陽子、こっちへ来ないか」
マイケルは静かな声で言いました。
「君の能力なら、分に通用する」
私は、その言葉に迷わず頷きました。
その瞬から、私の脱計画は始まったのです。
まずは資産の移でした。
両親の遺産。
独代から貯めていた貯。
計千万円。
私は半かけて、しずつ座へ送していきました。
達也さんは、私が計簿と睨めっこしている姿を見て笑っていました。
「また円単位の節約か?」
まさか私が数千万円をかしているとは、にもわなかったでしょう。
でも、本当に恐ろしかったのはおではありません。
連帯保証という鎖でした。
嵐商事は、額の融資を受けていました。
そして、その保証には義父だけでなく、私の名も入っていたのです。
もし会社が倒産すれば、借は私にまでりかかる。
私は、その鎖を断ち切る必がありました。
そして、皮肉にもそのチャンスは玲奈の妊娠で訪れました。
玲奈が陣痛を起こし、のが混乱になった。
私はい類の束を達也さんへ差ししました。
「達也さん、急いで。入院続きの類と、婚の財産分与関係よ」
達也さんは玲奈の腰を支えながら、苛った声をしました。
「名をけばいいんだろ!」
彼は類の内容を確認もせず、次々とサインをしていきます。
そのに、枚だけ別の類が混ざっていました。
債務保証変更。
つまり、会社の借の保証を、私から達也さんへ完全移する契約です。
達也さんは気づきませんでした。
それが、自分の首に巻き付くロープだということに。
「はい、これでいいだろ!」
彼は類を私へ投げ返しました。
私はそれを受け取りながら、ので静かに呟きました。
――これで鎖は切れた。
嵐商事がどうなろうと、もう私には関係ありません。
私は自由になったのです。
第章 砂のの崩壊
聖都医科学病院の産婦科病棟は、獄絵図になっていました。
先ほどまで響いていた赤ん坊の産声は、号と鳴へ変わっています。
「説しろ!」
達也さんの鳴り声が廊へ響きました。
彼は顔面蒼になりながら、玲奈へ詰め寄っています。
玲奈はベッドので怯えた顔をしていました。
「だ、だから奇跡なのよ……!」
「ふざけるな!」
達也さんは鳴りました。
「俺は無精子症なんだぞ!」
護師たちが慌てて止めに入ります。
義母の義子さんは、顔を失っていました。
義父の総郎さんだけは、別の恐怖に震えていました。
世体です。
もし、この事実がへ漏れたら。
嵐の跡取り騒は、完全な笑い話になります。
会社の信用はに落ちる。
からの融資も危うい。
総郎さんは脂汗を流しながら叫びました。
「陽子を呼べ! あいつなら何とかする!」
達也さんは、祈るような顔でスマートフォンを取りしました。
「そうだ……陽子なら……!」
彼は私の番号へ話を掛けます。
けれど。
『おかけになった話番号は現使われておりません』
無質な音声だけが響きました。
達也さんはスマホを落としました。
画面にきな亀裂がります。
「陽子は……もう、いない……」
その瞬。
嵐は、自分たちが本当に失ったものをったのです。
嵐商事の社内は、朝から異様な空気に包まれていました。
私が姿を消してから、週。
話は鳴り止まず、社員たちは落ち着きを失い、廊をり回っています。
社では、義父の総郎さんが真っ赤な顔で鳴っていました。
「おい達也! このドイツ語のメールは何ていてあるんだ!」
机を叩く音が響きます。
しかし、達也さんはパソコンので額に脂汗を浮かべながら、ただ狼狽えていました。
「わ、分からないよ! 翻訳ソフトの使い方も分からないんだ!」
これまでとの契約。
輸入類。
税務関係。
交渉。
それらすべてを処理していたのは私でした。
達也さんも義父も、“陽子が勝にやっている仕事”くらいにしかっていなかったのです。
義母の義子さんだけは、まだ現実を理解していませんでした。
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