"四十九日、電話を切った妻" 第1話
話のベルが突然鳴った。私は類を片にちがり、受話器をに取る。病院のナースステーションからの話だ。義母の容子が急変したというらせだった。臓がねがり、息をえながら、すぐに夫のスマートフォンにを伸ばす。張の夫に連絡を取らなければならない。
画面を押し続ける指先に力が入る。何度も呼びし音が続くが、向こうはない。の再発プロジェクトの現にいる夫は、波が定せず、なかなか通じないのだ。私は額にを当て、呼吸をする。やっと通話がつながった瞬、私は必に状況を説した。声は震えていたが、落ち着いて伝えようと努めた。
「お願い、落ち着いて聞いて」と私はさく息をつきながら言った。しかし、夫の声はたく、械だった。「またくだらない話か。俺は無駄が嫌いなんだ。おとは1秒も話したくない。でも、本当に変なのか?病院からひろ。いい加減にしろ。度と仕事の邪魔をするな」
受話器の向こうから気を帯びた声が響き、私はく息を吐いた。「わかった」とだけ返し、話を切る。ので、義母の否をいながらも、これ以無理に説得しないことを決めた。元に置いた類ので、指先が震える。呼吸をして、をし振ると、静さを取り戻そうとする自分がいた。
広告
その晩、義母は静かに息を引き取った。私はベッドサイドに座り、彼女のを握り続ける。さくのひらに触れる指の触に、まるでしたかのような微かな温もりをじた。涙が頬を伝う。夜の静寂の、計の秒針だけが規則正しくを刻む。
振り返れば、夫にとって義母は、病のの来事に過ぎなかったのだろう。私はで全ての続きをめることを決する。葬儀の準備、親族への連絡、役所での続き。義母が、私を気遣ってくれたように、今度は私が全力を尽くす番だ。類に目を落としながら、私は署名欄を確認し、各続きをので理する。
そのも、夫からの連絡は切なかった。あの、度と仕事の邪魔をするなと言われたので、私も完全に無することにした。49、度も音汰はなかった。そして、ようやく夫が帰国するが訪れる。親族が集まる、彼だけがスーツ姿で現れた。私は窓から差し込む午のに、スーツのを映しながら、を静かにえる。
義母の兄である剣造さんや相馬の険しい表が目に入り、私は静かにそのにつ。夫が何を言おうとも、私はを揺らさずに状況を見守る準備をしていた。義母の最のいを、私は胸に抱えていた。
49の納骨当、ようやく覇斗は帰国した。
親族が集まる、彼だけがし遅れて玄関に現れた。
広告
黒いスーツを着ていたが、表には疲れよりも嫌さが浮かんでいた。から戻ったばかりだからなのか、それとも自分のらないところで全てがんでいたことが気に入らないのか。靴を脱ぐ作さえ乱暴で、廊に革靴が片方だけ斜めに転がった。
私はその音を聞きながら、仏壇のに座っていた。義母の遺は穏やかに微笑んでいる。まるで、もう何も言わなくていいのよ、と私に語りかけているようだった。
「なんだこれは?」
覇斗は部に入るなり、い声で言った。
親族たちの線が斉に彼へ向く。義母の兄である剣造さんは、湯のみを持つを止めた。相馬も険しい顔で覇斗を見げている。
「葬式、勝に終わらせたのか? 母さんの葬儀なのに、なぜ俺に相談しなかった?」
私はすぐには答えなかった。あの、病院から連絡を受けて、何度も覇斗に話をかけたことをいしていた。つながった、私は必だった。けれど、彼は私の言葉を最まで聞こうともしなかった。
相馬が箸を置き、静かにをいた。
「兄さん、それはないでしょう。千尋さんがどれだけ連絡を取ろうとしたか、らないんですか」
「俺は仕事で忙しかったんだ。それぐらい理解しろ」
覇斗は苛ったようにネクタイを緩めた。
剣造さんの眉にい皺が刻まれる。
「仕事が忙しくても、母親の最ぐらいち会うものじゃないのか」
「にいたんだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
義母の老人ホーム代120万円を勝手に約束した夫
医療機器メーカーで働く結衣は、結婚以来、夫の翔太と義母の幸子に頼まれるまま、家電の買い替えや旅行代を負担してきた。月7万円の仕送りも、半分出すと約束した夫は一円も払わない。それでも家庭を壊したくない一心で我慢していたが、義母はついに結衣の勤務先へ送金を催促する電話をかけてくる。さらに夫は、義母が希望する高級老人ホームの入居金120万円まで、結衣に無断で支払う約束をしていた。夫のスマホに届いた一通のLINEをきっかけに、結衣は自分の人生を取り戻す決意をする。人生逆転|嫁姑|夫婦|絶縁|介護|金銭問題2.7万字5 795 -
完結第15話
認知症の父を「逮捕しろ」と叫ぶ姑――孫の一言で形勢逆転
夫を突然亡くした佳苗は、幼い二人の子どもを育てながら、認知症になった父の介護も引き受けることになった。心身ともに限界を迎えるなか、支えになってくれたのは小学六年生の息子・亮太だった。家族で父の実家へ引っ越し、ようやく穏やかな暮らしを取り戻したかに思えたが、何かにつけて佳苗を責める姑が、またもや騒ぎを起こす。ある日、仕事中の佳苗に亮太から緊急の電話が入った。急いで帰宅すると、家の前にはパトカーが。家の中でいったい何が起きたのか。姑の言い分に対し、亮太が語り始めたのは……。祖父母と孫|嫁姑|絶縁|親子関係|介護|認知症1.6万字5 244 -
完結第15話
生活費を奪って消えた母、20年後の再会で私が頼んだもの
小学四年生の秋、美咲の母は家の生活費と預金を持ち去り、突然姿を消した。残された父は工場で懸命に働きながら娘を育て、給料日には食堂へ連れていってくれた。「好きなものを食べなさい」と笑う父が、自分のために頼むのはいつも水だけだった。苦しい日々を二人で乗り越え、大人になった美咲の前に、長年音信不通だった母が現れる。何事もなかったように振る舞う母を、美咲は高級レストランへ誘った。そこで彼女が選んだものには、父と過ごした忘れられない日々への思いが込められていた。夫婦|絶縁|親子関係|金銭問題1.9万字5 368 -
完結第15話
看護師を捨てた元彼、10年後に妹の名刺を踏みつけた
看護師のヒナは、起業を夢見る恋人・大志を支えるため、夜勤を増やして生活費を払い、家事も一人で引き受けていた。ところが大志は事業に成功すると、社長令嬢との婚約を決め、ヒナを一方的に捨ててしまう。それから10年。偶然再会した大志は、独身のヒナを見下し、看護師の仕事まで大声で馬鹿にし始めた。そこへ現れた妹の桃が、冷静に言い返す。しかし大志は、桃が差し出した名刺を床に落とし、靴で踏みつけてしまう。その名刺が何を意味するのか、知りもしないまま……。因果応報|兄弟姉妹|夫婦|絶縁|金銭問題|不倫1.6万字5 299 -
完結第15話
誕生日に姪を選んだ夫、3年後の再会で絶句
読書好きで控えめな陽菜子は、誠実だと信じていた夫・高尾と穏やかに暮らしていた。ところが三十歳の誕生日、夫は姪の百花を連れて現れ、妊娠を告げたうえで離婚届を突きつける。「子供ができないお前が悪い」と責められ、家まで追い出された陽菜子は、誰も自分を知らない町で新しい生活を始める。やがて高校時代の同級生との再会をきっかけに、少しずつ前を向けるようになっていく。そして数年後、偶然出会った元夫と姪の前で、思いがけない出来事が起こる。因果応報|人生逆転|夫婦|親子関係|修羅場|不倫2.1万字5 713