"四十九日、電話を切った妻" 第7話
私ので、何かが切れた。
「やめて!」
気づいたには、私は机をく叩いていた。皿と湯のみがさく震える。涙が気に込みげてきた。
「お母さんは、血の繋がらない私を本当の娘としてしてくれたのに。あなたはそのの葬儀にも来なかった。最の声も聞こうとしなかった。それなのに、どうしてそんなことが言えるの!」
覇斗は黙って私を見た。
私は涙を拭わずに続けた。
「お母さんがどれだけあなたをしていたとっているの? 最まで、あなたのことを配していたのよ。覇斗が幸せになってくれるかしらって、何度も言っていたの。病のドアがくたびに、あなたが来たのかとって顔をげていた。でも来たのは、いつも護師さんか私だった」
「千尋さん、もう分です」
相馬が静かに言った。
「兄さんには、何を言っても無駄です」
私は覇斗を見た。
「あなたが失ったのは遺産だけじゃない。族も、も、として切なものも、全部失ったの。そしてそれは、全部あなた自が選んだことなのよ」
覇斗はたく笑った。
「になって無駄なを使ったな。俺にはサラがいる。しいが待っている。こんなところでを無駄にしているじゃない」
そう言うと、彼は荷物を掴み、振り返ることなく部をていった。
玄関のドアが乱暴に閉まる音が響いた。
誰も追いかけなかった。
義母が最に望んでいたことが、ようやく現実になったのだとった。
覇斗は自分の選択によって、族の輪のへていった。
あのから半が過ぎた。
私は義母から相続した遺産を切に管理しながら、しいアパートで静かに暮らしていた。
義母のは売却した。いが詰まっただったから、放すは胸が痛んだ。それでも、義母が私に託したものを守るためには、だけで抱え続けるわけにはいかなかった。
売却した資の部で、さなマンションを購入した。きなではない。けれど、朝が入る窓があり、義母の写真を置く所があり、私がして眠れる部があった。
残りの資産は堅実に運用した。
そして義母が望んでいたように、困っているたちを支援する活にもしずつ使うことにした。毎、齢者施設へ寄付をしたり、域の見守りボランティアに参加したりした。
義母が私にくれたものは、おだけではなかった。
を切にするというき方そのものだった。
相馬や剣造さんとは、今も定期に連絡を取りっている。血の繋がりはなくても、彼らは私を本当の族のように扱ってくれた。
相馬は々、寂しそうに言った。
「兄さん、どうしているんでしょうね」
私はそのたびに、しだけ窓のを見た。
「分からないわ。でも、彼が自分で選んだだから」
覇斗からは、半切連絡がなかった。
けれど、あるの夜。
スマートフォンが鳴った。
画面に表示された名を見て、私はしばらく指を止めた。
覇斗だった。
呼吸をしてから、通話ボタンを押した。
「何の用?」
話の向こうで、しがあった。
「千尋……ちょっと話があるんだ」
その声には、以の傲さがまだ残っていた。けれど、どこか疲れているようにも聞こえた。
「実は会社でしトラブルがあってな。プロジェクトのことで責任を取らされて、方にばされたんだ」
「そう」
「でもこれはなものだ。俺の実力をっている層部が、必ず戻してくれる。サラも待っていてくれるって言ってるし」
私は黙って聞いていた。
まだ現実が見えていないのだとった。
「ただ、そのの活費がし厳しくて」
覇斗は言いにくそうに言葉を切った。
「母さんの遺産から、ほんのしでも借りられないかとって」
「借りる?」
「そうだ。貸してくれればいい。俺が復帰したら利子をつけて返す」
私はいため息をついた。
このは、まだ何も学んでいない。
「覇斗、現実を見なさい」
「何だよ」
「あなたはもう会社には戻れないでしょうし、サラさんもあなたを待ってはいないとうわ」
話の向こうで息をむ音がした。
「何を根拠にそんなことを言うんだ。サラは俺をしてるって――」
「あなたが私にしてきたことと同じよ」
私は窓ののを見ながら言った。
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