"箱根の盲点" 第6話
湯の温度管理の方がよほど事だ。
目を閉じたままの朝のことを考えた。
6に起きて源泉の温度を確認する。
は配管がえるから油断できない。
7連続の老夫婦が到着するのは午3。
角部の準備を確認して、夕の蕎麦の配を帳に伝える。
臓の拍がまた1つ乱れた。
戸田はそれに気づかなかった。
すでに眠りに落ちていた。
翌朝、チェックアウトの準備をしているにった。
荘のフロントで精算を待っていると、従業員同士がひそひそと話しているのが聞こえた。
「湯本館のご主がくなったらしい」
「さっき、娘さんが布団のでたくなっているのを見つけたって」
樋のが止まった。
戸田克彦。
昨宮原と緒に訪ねたばかりの物だ。
隣にっていた宮原も聞いていた。
「戸田さんが……」
宮原の声はかすかに震えていた。
顔から血の気が引いている。
「臓だそうです」と従業員が言った。
「元々お体が悪かったみたいで」
樋は宮原の顔を見た。
揺は本物に見えた。
昨会ったばかりのが突然んだのだから、驚くのは自然だ。
宮原は目を伏せ、しばらく黙っていた。
「実は昨、ご挨拶に伺ったばかりなんです。お元気そうだったのに」
「皆さんそうおっしゃいます」と従業員は言った。
「救急の方も、齢と持病を考えると議ではないと」
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樋は帳を取りし、付と刻をきつけた。
『12〇午840分 克彦の報。因は臓発作の模様』
「ご冥福をお祈りします」と宮原はさく言った。
それから樋に向き直った。
「先、予定通り京に戻りましょう。々がここにいても仕方ありませんから」
ロマンスカーの内で、宮原はほとんどをかなかった。
窓のを流れる景を眺めながら、何かを考えている様子だった。
樋も黙っていた。
戸田のと宮原への尾。
この2つに関連があるとは考えにくかった。
戸田は臓の持病があり、自然だという。
尾者は発反対派の関係者か、あるいは競社の調査員だろう。
戸田のは偶然の致に過ぎない。
樋はそう判断した。
宿に着いたのは午1過ぎだった。
改札をたところで、宮原が封筒を差しした。
「報酬です。ご確認ください」。
樋はそのではけずポケットに収めた。
事務所に戻ってから封筒をけると、事に提示された額の倍の現が入っていた。
相の3倍にあたる。
すぐに宮原に話した。
「報酬がすぎます。事の取り決めと違います」
「いえ、お受け取りください」。
宮原の声は穏やかだった。
「先には変な寒さの、夜に駐まで確認していただきました。それにあのような幸な来事もありましたし、お気持ちとして。
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しかしお願いですから。先がいてくださったおかげで箱根滞はして仕事ができました。それだけで分な価値があります」
樋は話を切った、しばらくデスクのに座っていた。
封筒のを数え直した。
違いなく倍の額だった。
「謝の気持ちだ」と言われればそういうものかともう。
資に余裕のある依頼なら付けをめに渡すこともあるだろう。
だが樋の経験では、報酬を過剰に支払う依頼には2つのタイプがある。
本当に謝していると、を封じたいだ。
宮原がどちらなのか、この点では分からなかった。
樋は、箱根での記録、尾者の特徴、駐の確認、結果の全てを系列でまとめて、宮原にメールで送信した。
尾者の元については特定に至らず、引き続き注をする旨を記した。
宮原からは翌、丁寧な礼状がメールで届いた。
「変い3でした。何かあればまたご相談させてください」という文面だった。
それきり宮原からの連絡はなかった。
末がづくと、樋は別の案件に追われた。
浮気調査、方者の捜索、企業の内部調査.
どれもで、どれもの暗部に触れる仕事だった。
箱根のことは記憶の片隅に沈んでいった。
宮原亮介という名も、荘という旅館も、戸田克彦という男も。
ただ帳にきつけた記録だけが残っていた。
『2118分、駐へ。2130分、異常なし。
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