"骨壷に眠る花嫁" 第1話
20215旬、群馬県の国18号線沿いでは、排設備の定期交換事がわれていた。
朝からの音が響き、作業員たちは古くなったコンクリート製の桝を順番に解体していた。そこはと業帯のにある、特別目つ所ではなかった。雑が伸び、毎何千台ものが通り過ぎても、誰もを止めることのない所だった。
その桝は、何もそこにっていた。
作業員の1がショベルカーのバケットを慎にかした、先端にくいものが引っかかった。
最初は岩か、古い建設資材だとわれた。
「何か絡んでるぞ」
作業員が械を止め、周囲の者たちが集まった。
とのから現れたのは、コンクリート片でも鉄くずでもなかった。湿った麻袋のようなものが、のテープで何にも巻かれていた。いを経て表面は汚れていたが、巻き方は異様にきつく、ただ捨てられたものではないことがすぐに分かった。
現にいた責任者は、顔を変えた。
「触るな。警察を呼べ」
ほどなくして警察官が到着した。包みは慎に取りされ、周囲には規制線が張られた。作業員たちはかられ、固唾をのんでその様子を見守っていた。
警察官が包みの状態を確認し、記録を取りながら側をいていく。
濡れた麻袋の内側から、さらに布のようなものが現れた。
広告
その布を慎にめくった瞬、そのにいた全員の空気が止まった。
からてきたのは、の部だった。
誰かがく息をのむ音がした。
作業員の1はわずずさりし、別の者は元を押さえた。をるの音だけが、現の緊張とは無関係に流れていく。
発見された部は、すぐに証拠として群馬県の法科学研究所へ運ばれた。
それは単なる遺体の部ではなかった。
6、誰にも見つからないまま、脇の排設備のに隠されていた真実だった。
その真実は、2015に世から「逃げた嫁」と呼ばれた1の女性の名誉と、彼女を取り巻くすべての沈黙を変えることになる。
彼女の名は、田恵。
失踪した当、27歳だった。
20157、崎はいつも通りの落ち着いた常のにあった。
田恵は、元の歯科クリニックで事務として働いていた。真面目で控えめな性格で、患者にも同僚にも丁寧に接する女性だった。職では、机のをいつもきれいにえ、診察券や類を違えないよう確認する姿がよく見られていた。
その頃、恵はで最もきな節目を迎えようとしていた。
結婚式がづいていたのである。
相は33歳の藤弘だった。ヨーロッパ具を輸入するさな会社を経営しており、若くして事業を軌に乗せた実業としてられていた。
広告
周囲から見れば、2は理な組みわせに見えた。
控えめで勤勉な女性と、将来望な若い経営者。
方の保守な空気のでは、誰もが「幸せな結婚になるだろう」と考えていた。
しかし、結婚式の2、恵は突然姿を消した。
その朝、彼女は職に現れなかった。
同僚が最初に違を覚えた。恵は無断欠勤をするようなではなかったからだ。話をかけても、携帯話の源は切られていた。
配した職のが族に連絡し、族が彼女のアパートを確認した。
内に争った形跡はなかった。玄関の鍵も壊されておらず、部はっていた。類や用品もそのまま残されていた。
ただ、ハンドバッグと財布だけが見当たらなかった。
最初の混乱は、やがて1つの説へと流れていった。
恵は結婚をに怖くなり、自分ので姿を消したのではないか。
婚約者である弘は警察にこう話した。
「、恵と論になりました。結婚に仕事を辞めるかどうかで揉めていました。彼女は最、神経質になっていて、本当に結婚していいのか迷っているようでした」
その証言は、事件の方向をきく決めた。
恵の両親も、最初はく否定したかった。けれど、娘が完璧主義で、変化に敏な性格だったことをいすと、完全には否定できなかった。
「結婚のみに耐えられなくなったのかもしれない」
そう考えることは、あまりにも苦しかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
継母が私に遺した「価値ゼロ」の古民家
継母・良子の死後、養女の明日香に遺されたのは、山奥に建つ資産価値ゼロの古びた一軒家だけだった。一方、実子である高志と絵美子は、都内の高級住宅6軒を相続し、介護を続けてきた明日香を「他人」と嘲笑う。 母に愛されていなかったのか――。傷つきながらも家を片づけに向かった明日香は、不自然に敷き直された畳と、その床下に封印された巨大な金庫を発見する。母が最期に託した銀色のペンダントは、その扉を開くための鍵だった。 金庫の中に残されていたのは、莫大な財産と「愛する娘へ」と記された一通の手紙。そこには、明日香を強欲な実子たちから守るため、良子が密かに進めていた計画が明かされていた。 高級住宅を手に入れ、裕福な暮らしに浮かれる兄姉。しかし、彼らが「財産」だと信じた6軒には、決して逃れられない秘密が隠されていた――。 血のつながりを盾にする家族と、行動によって愛を遺した母。傷ついた養女が母の本心を知り、自分の人生を取り戻していく、遺産と家族をめぐる逆転の物語。人生逆転|真相|親子関係|金銭問題1.8万字5 102 -
完結第13話
母の保険金3,000万円、夫は「もう諦めろ」と言った
「1か月だけ、3,000万円を貸して」 亡き母の保険金が振り込まれた直後、夫の姉が突然頼みに来た。 夫も「家族を助けると思って」と私を説得した。 私は返済期限を定め、夫を連帯保証人にして公正証書を作った。 姉は笑顔で実印を押し、翌日、3,000万円を受け取った。 しかし1か月後、入金はなかった。 やがて電話は着信拒否され、3か月が過ぎた。 夫へ相談すると、苛立った声が返ってきた。 「もう諦めろ!」 そして次の瞬間、夫は口を滑らせた。 「あいつに、そんな金あるわけないだろ!」 私は何も言わず、弁護士宛てのメールを開いた。夫婦|相続|金銭問題1.9万字5 93 -
完結第12話
昭和51年、帰宅目前で消えた25歳女性社員
「一人で静かに帰りたいので、大丈夫です」 昭和51年、25歳のみち子は飲み会のあと、一人でタクシーへ乗った。 運転手は、彼女を自宅からわずか50メートルの場所で降ろした。 「夜遅くにありがとうございました」 それが、みち子を見た最後の証言だった。 布団は朝まで誰にも使われず、通帳も着替えも部屋に残っていた。 上司と同僚には不自然な空白時間があったが、何も見つからなかった。 そして9年後。 亡くなった上司の娘が、遺品のアルバムを開いた。 失踪当夜の宴会写真の次に、見知らぬ和室を写した一枚が貼られていた。 机の上には、黒い女性用のハンドバッグ。 写真の裏には、みち子が消えた数日後の日付が押されていた。昭和|ミステリー|真相1.7万字5 207 -
完結第10話
昭和63年、消えたいちご農園主――3年後の古い倉庫
「分かった。じゃあ、2時頃に行く」 昭和63年4月5日、いちご農園主の夫は、一本の電話を受けて家を出た。 「夕飯までには戻る」 それが、家族が聞いた最後の言葉になった。 通帳も印鑑も着替えも、すべて家に残されていた。 夫の手帳には、乱れた字で二行だけ書かれていた。 《佐藤さんの件、今日で決める》 《2時 古い倉庫》 しかし名前の挙がった男は、電話も面会も否定した。 倉庫の持ち主も、最初は「会っていない」と証言した。 夫の行方が分からないまま、3年が過ぎた。 そして倉庫の取り壊し当日、周囲と色の違う床へ重機の刃が入った。昭和|ミステリー|真相1.5万字5 29 -
完結第11話
金メダル会見で、私は母の嘘を暴いた
「ほら、都。ここからジャンプしてみなさい」 小学3年生だった私の記憶は、母のその声を最後に途切れている。 次に目を覚ました時、私はもう自分の脚を動かせなかった。 母は「娘が自分でベランダへ登った」と説明し、私の退院前に姿を消した。 それから9年。 車椅子陸上で世界を目指し始めた私の前へ、母が突然戻ってきた。 「ずっと会いたかった。今度こそ支えたいの」 私はその言葉を信じず、母を追い返した。 だが忘れ物を取りに戻った時、駐車場で誰かと電話する母の声が聞こえた。 「大丈夫。あの子、ベランダのこと覚えてないみたいだから」 私は震える手でスマートフォンを取り出し、録音ボタンを押した。真実|裡の顔|親子関係1.6万字5 228 -
完結第12話
嫁の「逃げて」で暴かれた妻の計画
「お義父さん、今すぐ車を降りてください。絶対に奥さんのところへ戻らないで」 妻との旅行中、ほとんど電話をしてこない嫁から突然そう告げられた。 「食べ物も薬も、絶対に口へ入れないでください」 私は妻が差し出した、水なしで飲める白い錠剤を思い出した。 トイレへ行くふりをして車を降り、観光バスの陰まで必死に走った。 やがて駐車場へ出てきた妻は、笑顔を消し、鋭い目で私を捜し始めた。 嫁の車へ逃げ込むと、一通の誤送信メールを見せられた。 《サービスエリアを過ぎたら薬を飲ませる。お兄ちゃんからそっちに連絡を入れておいて》 その夜、妻が持ってきた私の旅行鞄を開けると、底から見覚えのない書類が出てきた。 山間部にある介護施設のパンフレット。 入所予定者の欄には、私の名前と病歴が記されていた。 《認知機能の低下》《本人に病識なし》《今週末に入所予定》 そして保護者欄には、息子でも妻でもない、私の知らない男の名前が書かれていた。人生逆転|夫婦|真実|裡の顔1.7万字5 644 -
完結第11話
義母「家を売って弟の借金を返せ」夫に奪われかけた私の家
「家を売って、弟の1000万円の借金を返しなさい」 義母が要求したのは、私が結婚前に自分のお金で買ったマンションだった。 断ると夫は私の腕をつかみ、口の中が切れるほど強く頬を打った。 「最初から言うことを聞けば、こんなことにはならなかったんだ」 私は空手三段で、避けることも反撃することもできた。 それでも殴り返さず、天井の防犯カメラを見上げた。 そこには夫の暴力だけでなく、義母の言葉まで残っていた。 「正也、言うことを聞かせなさい」 さらに録画を遡ると、2人の小声が聞こえてきた。 「権利書と実印さえ出させれば、あとは進められる」 翌日、義母は合鍵を使って留守宅へ入り、私の金庫を探し始めた。 そして夫が用意した不動産査定依頼書には、義母が家を売れと言い出す4日前の日付が記されていた。嫁姑|夫婦|絶縁|金銭問題1.6万字5 625