"68歳、レジで再会した友" 第4話
「そうね。変わらない」
でも、その言葉には、どこか違うが含まれているようにじました。
しばらく沈黙が続きました。
スプーンの音だけが、さく響きます。
私はカップをに取りました。
コーヒーはしぬるくなっていました。
「幸子」
代が先にをきました。
私は顔をげました。
「さっきはごめんね」
私はし驚きました。
「え?」
代は線を落としたまま続けました。
「急に、あんなを挟んで」
その声は、とても静かでした。
私は聞きました。
「迷ったの?」
代はうなずきました。
「くかどうか、ずっと迷ってた」
私は何も言わずに聞きました。
代はカップにを添えたままきませんでした。
「でも、ほかに頼れるがいなくて」
その言葉を聞いた瞬、胸の奥がしだけきました。
5、私を見て笑っていたが、今、頼れるがいないと言っている。
私は静かに聞きました。
「何があったの?」
代はすぐには答えませんでした。
カップの縁を指でなぞりながら、しばらく黙っていました。
言葉を探しているようでした。
やがて、さく息を吐いてから言いました。
「お、なくなったの」
私はその言葉を、すぐには理解できませんでした。
「え?」
わず聞き返しました。
代は目をげません。
「全部じゃないけど、ほとんど」
その声は、とても静かでした。
私はカップを持ったままけませんでした。
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5の代の姿がに浮かびます。
旅の話。
積みての話。
100万円プラスになったという言葉。
余裕のある笑い方。
それが今、目ので静かに崩れていました。
「どうして」
私はわず聞いていました。
代はしだけ笑いました。
でも、それはあのの笑い方ではありませんでした。
「うまくいくとったのよ」
い言葉でした。
「最初は、ね」
私は何も言いませんでした。
代はゆっくり続けました。
「周りもみんなやっていたし、これからは貯だけじゃだめだって、よく聞いたから」
聞いたことのある言葉でした。
テレビでも、雑誌でも、周りの会話でも、よくにする言葉です。
「最初はほんのしだけだったの」
代は自分に言い聞かせるように言いました。
「毎しずつ増えて、通帳を見るのが楽しみで」
その声に、かすかな過のるさが混じりました。
「こんなに簡単に増えるなら、もっとくやればよかったってった」
私は静かに聞いていました。
それはきっと、誰でも度はうことだからです。
代はカップを見つめたまま続けました。
「でも、増えると欲がるのよ」
さな声でした。
「もうしだけ。もうし増やせば楽になるってったの」
私はカップを握るに力を入れました。
代の声はしずつくなっていきました。
「あるから、しずつ減り始めたの」
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私は息を止めました。
「最初は、すぐ戻るとった。今までだってがってもまたがっていたから」
代はゆっくり首を振りました。
「でも、戻らなかった」
その言は、とてもく聞こえました。
私は静かに聞きました。
「それでも、やめられなかったの?」
代は苦しそうに笑いました。
「ここでやめたら、本当に損になるってったの」
よくある話です。
けれど、目のののから聞くと、まったく違いました。
「もうしだけ入れたら取り返せるってった。もうしだけ、もうしだけって」
代は同じ言葉を繰り返しました。
「気づいたら、活のおまで使ってた」
私は何も言えませんでした。
「も、貯も」
い言葉でした。
けれど、それだけで分でした。
しばらく沈黙が続きました。
内の音が、しずつ戻ってきます。
誰かの話し声。
スプーンの音。
をるの音。
私はようやくをきました。
「どれくらい?」
聞いていいのか分かりませんでした。
それでも、聞いていました。
代はしだけ目を閉じました。
そして、さく言いました。
「300万円」
私は息をみました。
300万円。
軽くにできる額ではありません。
代はゆっくり続けました。
「最初は、本当にしだけだったの。でも増えていくのが楽しくて、気づいたら活のおまで使ってた」
私は黙っていました。
慰めの言葉も、責める言葉も、どちらも今は違う気がしました。
代はぽつりと言いました。
「幸子」
私は顔をげました。
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