"犬吠埼に消えた三人" 第3話
携帯話も消えた。
斎藤は会議で腕を組んだまま、事件の性質を考え直した。
「単純な方事故ではない。何らかの犯罪に巻き込まれた能性を排除するな」
3が同に、偶然、痕跡もなく消える。
そんなことはあり得ない。
そう考えるほど、事件はさらに気な形を見せ始めていた。
捜査チームは、3の族を改めて警察署へ呼んだ。
渡辺順子の夫、正弘は55歳だった。さな建設会社を営み、普段は寡黙な男だったが、そのは顔が悪く、元のハンカチを何度も握りしめていた。
「妻がこんなにく連絡を絶つことは、1度もありません。銚子へくも、いつもと変わらず楽しそうでした」
森妙子の夫も、岡田代の夫も同じように証言した。
3は庭を切にする普通の主婦だった。借もなく、みを買うような関係もない。族の話だけを聞けば、事件に巻き込まれる理由はどこにも見当たらなかった。
だが、証言を1つずつ照らしわせるうちに、奇妙な共通点が浮かんだ。
今回の旅の、3はそれぞれ族に似たような言葉を残していた。
「今度の旅では、友同士で特別な話をする」
「事な決断をしなければならない」
「今度こそ決着をつける」
斎藤はその言葉に引っかかった。
初のを見にくだけの旅にしては、あまりにもい。
広告
「特別な話とは何ですか」
刑事が尋ねると、岡田代の夫は首を振った。
「詳しい内容は聞いていません。ただ、真剣に決めなければならないことがある、とだけ言っていました」
この“決着”という言葉が、事件の鍵になる。
そう判断した捜査チームは、3の座やクレジットカード、借入記録を徹底に調べた。
数、異なるを利用していた3の座から、気なほど同じきが見つかった。
199311旬。
3はそれぞれ200万円ずつ、計600万円を現で引きしていた。
族は誰も、そのの使いをらなかった。
斎藤はすぐに代の同級関係を洗うよう命じた。卒業アルバムをたどり、連絡のつく同級11に聞き込みがわれた。
そして数、51歳の同級、佐藤久から話が入った。
「刑事さんのおっしゃる通りです。私たちのには、しずつおをしうさな頼母子講のようなものがあったんです」
その頼母子講のメンバーは5だった。
渡辺順子。
森妙子。
岡田代。
佐藤久。
そして、京にむ川信子。
5のうち3が消え、1は報提供者として名乗りた。
残る1、川信子こそが、事件の鍵を握っている能性がかった。
捜査員たちはすぐに信子へ話をかけた。だが、呼びし音だけが鳴り続け、彼女はなかった。
京のマンションを訪ねても、内にの気配はなかった。
広告
管理は言った。
「奥さんなら、お正を過ぎた1初め頃に、慌ただしく荷物をまとめてていきましたよ」
それは、3が銚子で方になった直だった。
信子の夫に確認すると、彼女は静岡県伊豆の実で母の病をしているという。
刑事たちはで5かけて伊豆へ向かった。
古い平の玄関を叩くと、青い顔の女性がそっと現れた。
川信子だった。
友3の名を聞いた瞬、彼女の顔はのように変わった。
だが、信子は言った。
「何もりません。母の病で、それどころではありませんでした」
頼母子講のについて尋ねると、彼女の肩はさく震えた。
それでも、決定な物証はなかった。
捜査員たちは名刺を残し、悔しさを抱えて引きげるしかなかった。
19942。
3が姿を消してから、すでに1ヶが過ぎていた。
警察は全国の病院、保護施設、元者の記録を調べた。事故で記憶を失い、どこかで保護されている能性まで考えた。しかし、どこからも該当する報は入らなかった。
公捜査のチラシも数万枚作成された。
3の顔写真、装、、齢、最に目撃された所。報は全国の警察署、駅、バスターミナル、商へ送られた。
折、報提供の話はあった。
「似たを見た気がします」
そのたびに刑事が現へ向かった。
だが、確認してみれば別だった。
聞やテレビも、主婦3同失踪事件としてきく報じた。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
「寄付は千円ぽっち」笑われた老夫婦の30年の秘密
町内会の夏祭りで、寄付が千円しかないと笑われた68歳の静子。古い自転車に乗り、夫の勉と慎ましく暮らす彼女は、婦人会長から「ケチな人」と見下され、記念式典の受付役まで外されてしまう。それでも静子は言い返さない。夫婦には、30年間、毎月15日に欠かさず続けてきた秘密の約束があった。やがて婦人会の記念式典に、育英基金の支援で大学を卒業した青年が現れる。青年が大切に持っていた一通の手紙をきっかけに、会場の空気が思いがけない方向へ変わり始める。人生逆転|夫婦|真実|金銭問題1.9万字5 598 -
完結第10話
腎臓をあげた私に離婚届――夫の隣には若い女
三歳の娘を育てる裕子は、重い腎臓病になった夫・英司を救うため、自分の腎臓を一つ提供した。ところが手術後、体調を崩した裕子を待っていたのは、夫からの暴言と冷たい仕打ちだった。やがて英司は、若い女との新生活を理由に離婚届を突きつけ、娘まで奪おうとする。そんな裕子の味方になったのは、意外にも義母だった。命を救ってくれた妻を平然と捨てようとする夫。すべてを失いかけた裕子は、娘と自分の人生を守るため、反撃を決意する。夫婦|真実|裏の顔|真相|第二の人生1.4万字5 993 -
完結第12話
150万円を払わせたママ友、次は寿司300万円
夫の昇進祝いで家族とレストランを訪れたひまり。楽しい食事の最後に告げられた会計は、なんと150万円。原因は、顔見知り程度のママ友・ぽて子一家が大量の料理を注文し、勝手にひまりへ支払いを押しつけたことだった。仕方なく立て替えたものの、返金を求めると渡されたのは、まさかのポテトチップスの空袋。しかも数日後、ぽて子は高級寿司店で新たな計画を立て始める。「ママ友なんだから払って当然」と言い張る一家に、ひまりが取った行動とは?因果応報|夫婦|真相|親子関係|金銭問題|修羅場1.2万字5 657 -
完結第12話
毎朝「出ていけ」と怒鳴る隣人、測量の日に顔色が変わった
「引っ越しなさい!」毎朝七時、向かいの家の奥さんに怒鳴られる六十八歳のしず子。生まれ育った家を手放す気はないが、理由のない嫌がらせは日に日にひどくなり、相手の夫まで引っ越しを勧めてくる。しず子は言い返す代わりに、毎日の出来事をノートに書き留めていた。そんなある日、隣人の土地売却をきっかけに境界の測量が行われる。測量士が示した一本の線と、亡き祖父が残した古い封筒。そこには、長年の隣人関係を覆す意外な約束が隠されていた。怒り|真実|修羅場1.3万字5 365 -
完結第12話
新幹線で母娘の席を奪った女、現れた女性を見て絶句
五歳の娘パニミと夏休みの帰省を楽しみにしていた、弁当店を営むシングルマザーのパニコ。新幹線の自由席でようやく親子並んで座れたものの、見知らぬ女性に突然コーヒーをこぼされてしまう。服を拭くため席を外したわずかな間に、その女性は荷物を床へ放り出し、二人の席を奪っていた。娘を守るため、悔しさをこらえてデッキへ向かったパニコ。そこで偶然、日頃から世話になっている立花会長と再会する。事情を聞いた会長が一緒に席へ戻ると、先ほどまで威張っていた女性の顔色が一変して……。怒り|真相|親子関係|修羅場1.2万字5 961 -
完結第12話
フクと小さなおにぎり
ペットショップの隅で「特価品」の札をつけられていた猫、フク。以前の飼い主に一度迎えられながら、すぐに店へ戻された過去があった。幼い娘ゆいに心を動かされ、フクを家族に迎えた俺と妻の由佳。少しずつ新しい家に慣れていくフクだったが、なぜか人前では決してご飯を食べようとしない。その理由を知った俺たちは、無理をさせずに見守り続ける。迎えてから約一年が過ぎたある夜、二歳になったゆいが小さな椅子を運んできた。娘の何気ない行動が、フクの心を少しずつ変えていく、家族の温かな物語。感動|真実1.1万字5 884 -
完結第10話
消えた卵の秘密
茜の家では、父の再婚相手・美津江が届けてくれる卵が、なぜか毎回なくなっていた。夜中につまみ食いをする夫の陽斗を疑っていた茜だったが、ある日、卵をこっそり持ち出す小学一年生の娘・凛を目撃する。「急に卵が嫌いになった」と泣く娘。しかし、いつもは素直な凛の様子はどこかおかしかった。そんな中、美津江から再び大量の卵が届く。茜は娘のために手作りプリンを用意するが、それを食べた美津江は、材料を聞いた途端に顔色を変えてしまう。娘が必死に隠していた秘密とは、いったい何だったのか。祖父母と孫|真実|真相|第二の人生1.4万字5 735 -
完結第12話
竹林の向こうの白衣
八歳のティアラは、重い喘息を理由に山奥の療養施設へ預けられた。だが本当の理由は、両親が天才と呼ばれる兄の教育に専念するためだった。家族に忘れられた少女を支えたのは、施設の人々と小児科医の竹之内先生。やがて彼女は自分の名前を変え、医師になる道を選ぶ。努力の末に脳神経外科医となった洋子は、ある冬の深夜、救急搬送された患者と向き合うことに。かつて自分を置き去りにした家族との思いがけない再会が、彼女の人生を大きく揺さぶり始める。兄弟姉妹|真相|絶縁|親子関係1.7万字5 557