"桜を連れて消えた妻" 第5話
その3分で、私はすべてを終わらせると決めていた。
私は桜のを取った。
「こうか」
さくそう言うと、桜はきょとんとした顔で私を見げた。
「どこくの?」
私はしだけ考えてから答えた。
「ちょっとみたいなものよ」
桜はすぐに笑って、「うん」と頷いた。
その無邪気さが、胸に刺さるようだった。
私はあらかじめ用していた鞄を静かに持ちげた。には桜の着替えと、必な類だけが入っていた。
くは持たなかった。
持てば、ためらいがまれると分かっていたからだ。
健はまだテーブルのに座ったままかなかった。何か言うべきか、それとも言わない方がいいのか、分からなくなっているようだった。
私はその顔を1度だけ見た。
もうそこに期待はなかった。
「じゃあ」
それだけ言って、私は玄関へ向かった。
桜は私のを握って、とことことついてきた。
靴を履かせながら、私はふとった。
この子は今、何もらない。
でも、この選択はきっと違っていない。
ドアをけると、夜の空気がひんやりと顔に当たった。
は静かで、まるで何も起きていないようだった。
私は歩にて、ドアを閉めた。
その音は、っていたよりもさく響いた。
それが私の結婚活の終わりだった。
それからのことは、とてもくんだ。
事に配していたタクシーがすぐに来て、私たちはそのまま空港へ向かった。
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夜のは空いていて、町のが滑るように流れていった。
桜は部座席で眠ってしまい、さなを私の腕に乗せていた。
私はそのみをじながら、ただを見ていた。
はあった。
でも、悔はなかった。
空港に着いた、空はしみ始めていた。
朝の気配が、ゆっくりと広がっていた。
私は桜を起こし、さなをしっかり握った。
「これからどこへくの?」
寝ぼけた声で桜が聞いた。
「しいところよ」
私はそう答えた。
桜はそれ以聞かず、ただ私のをく握り返した。
そのぬくもりだけで、私はにめた。
数、私たちはのにいた。
窓のには、がどこまでも続いていた。
桜は窓に顔をづけて、さくつぶやいた。
「すごいね」
私はその横顔を見ながら、ので1つだけつぶやいた。
もう戻らない。
その頃、健のでは、全く別の空気が流れていた。
翌朝、健は義母と緒に病院へ向かっていた。
相の女性の検診のだったからだ。
ので、義母は何度も言った。
「やっとね。やっと男の子が来るのね」
健はさく頷くだけだった。
その顔にはびと同に、どこか落ち着かないがあった。
病院に着くと、女性はすでに待っていた。
「おはようございます」
るい声で挨拶し、しほっとしたように笑った。
その笑顔を見て、義母もにこやかに頷いた。
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3は診察へ呼ばれた。
エコーの画面に、さな命の形が映った。
先が説を始め、義母は何度も頷いた。
「順調ですね。きな問題はありません」
その言葉に、部の空気がし柔らいだ。
けれど先は、カルテを見ながら表を変えた。
「ただ、1つ確認したいことがあります」
その言で、空気が静かになった。
先は健の方を見て、ゆっくりと言った。
「以の検査結果ですが、ご主は自然に子供を授かるのがかなり難しい体質です」
その言葉は、とても静かに発せられた。
けれど、そのにいた全員のには、はっきり届いた。
義母の笑顔が固まった。
女性のがさく震えた。
健は瞬、何も理解できないような顔をした。
それからい声で言った。
「そんなはずないです」
先は落ち着いた声で続けた。
「記録に残っています。かなりに検査を受けていますね。そのの数値から見ても、自然妊娠の能性は極めていです」
健の顔から血の気が引いていった。
部の空気が、気にたくなった。
義母は何か言おうとして、声がなかった。
女性はお腹をかばうようにを当て、目をそらした。
沈黙ので、1つの事実だけがゆっくりと形を取っていった。
この子は、健の子ではない。
誰もその言葉をにしなかった。
けれど、誰もが同じことを考えていた。
その瞬、すべてが音もなく崩れ始めた。
誰もかなかった。
エコーの画面だけが、さく点滅していた。
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